コロナの感染拡大で前年比マイナスとなった2月の商業販売統計の小売業販売の先行きをどう見るか?
本日、経済産業省から1月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.8%減の11兆5370億円、と5か月ぶりの減少を示した一方で、季節調整済み指数でも前月から▲0.8%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。
経済産業省が30日発表した2月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.8%減の11兆5370億円だった。減少は5カ月ぶり。季節調整済みの前月比は0.8%減だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が0.5%増の1兆5038億円だった。既存店ベースでは0.1%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は0.6%増の8721億円だった。
続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

通常、多くのエコノミストや報道では、この統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で見ているような気がします。しかしながら、経済産業省のリポートでは、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で基調判断を示しているようで、2月の移動平均指数は前月から▲0.7%の低下と試算しています。2月統計における季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比も5か月ぶりにマイナスを付けているのですが、基調判断は先月1月と同じで変更なく、トレンドで「横ばい傾向」と据え置かれています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、本日公表の商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていないことから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響は過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、特に、この2月のようにまん延防止等重点措置の期間中は、飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、物価上昇があれば販売額の上昇という結果になります。現在、日本では先進各国におけるような大きなインフレは認識されていませんが、世界では石油などの資源価格の上昇をはじめとする供給要因と世界的な景気の持ち直しによる需要要因とで、物価の上昇が始まっており、米国では中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FED)が3月の利上げを示唆したりしている段階です。我が国でも、小売業販売額の前年同月比伸び率を業種別に詳しく見ると、燃料小売業が昨年2021年10月から+20%を超え、2月統計では+21.6%増を記録していますが、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これら2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりも悲観的に見る必要が十分ある、と私は考えています。
消費の先行きについて考えると、3月はまん延防止等重点措置が21日限りで解除されてマインドは少し上向きになり、サービスほどではないにしても物販も回復を見せる方向に動くと考えられる一方で、物価高が家計を直撃し実質所得が低下しているのも事実です。岸田総理は一昨日の3月29日に物価高騰への対策策定を関係閣僚に指示した、と報じられています。もちろん、現時点では具体策の決定がなされたわけではありませんし、詳細は不明ながら、いくぶんなりとも家計の実質所得低下の影響を緩和する内容であって欲しいと私は考えています。企業に補助金を付与して価格上昇を抑制するよりは、家計の所得に対するサポートであって欲しいと思います。「xxであって欲しい」がついつい多くなるのですが、市場価格を歪める程度を小さく、同じ意味で、企業への補助も少なめに、しかし、家計所得へのサポートを大きく、と私は期待しています。
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