« 下の倅と大阪に出かける!!! | トップページ | 2021年10-12月期GDP統計速報2次QEはなぜ1次QEから下方修正されたのか? »

2022年3月 8日 (火)

オミクロン株の感染拡大の影響を受けた景気動向指数と景気ウォッチャー!!!

本日、内閣府から1月の景気動向指数と2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気動向指数ではCI先行指数が前月から▲1.0ポイント下降して103.7を示し、CI一致指数も▲0.5ポイント下降して94.3を記録しています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.2ポイント低下して37.7と2か月連続で悪化した一方で、先行き判断DIは+1.9ポイント上昇して44.4となっています。また、経常収支は季節調整していない原系列で▲1兆1,887億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の景気一致指数、0.5ポイント低下 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した1月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.5ポイント低下の94.3となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.2ポイント低下だった。数カ月後の景気を示す先行指数は1.0ポイント低下の103.7だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「足踏み」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
街角景気、2カ月連続悪化 2月の現状判断指数
内閣府が8日発表した2月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は37.7で、前の月に比べて0.2ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月連続。家計動向、企業動向が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は44.4で、1.9ポイント上昇した。上昇は4カ月ぶり。家計動向、雇用関連が改善した。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」を据え置いた。
1月の経常収支、1兆1887億円の赤字 民間予測は8802億円の赤字
財務省が8日発表した1月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1887億円の赤字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は8802億円の赤字だった。
貿易収支は1兆6043億円の赤字、第1次所得収支は1兆2890億円の黒字だった。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

ということで、統計作成官庁である内閣府では、昨年2021年3月統計から基調判断を上方改定して、8月統計まで6か月連続で「改善」に据え置いた後、引用した記事にもあるように、9月統計から「足踏み」に下方修正して、先月1月統計まで据え置かれていて、「足踏み」は5か月連続です。基準がどうなっているかというと、CI一致指数の「3か月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上」となっています。本日公表の1月統計では、7か月後方移動平均は昨年2021年12月のプラスからマイナスに転じて▲0.06を記録しています。また、基準指標となっている3か月後方移動平均は昨年2021年11月統計から3か月連続でプラスに転じていますが、移動平均ではない当月の前月差がマイナスではどうしようもありません。ということで、1月統計についてCI一致指数を詳しく見ると、マイナスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)などとなっています。逆に、プラス寄与が群を抜いて大きい系列は 投資財出荷指数(除輸送機械)となっています。1月は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染が拡大した時期ですし、2月末から現在まで新規感染者数が高止まりを続けていますので、足元の3月まで明るい見通しは得られていない、と考えるべきです。

photo

次に、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。景気ウォッチャーは現状判断DIが昨年2021年8月を直近の底として、小幅ながらも4か月連続で12月まで上昇を示した後、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大などを背景に、今年2022年1月統計では大きく低下し、本日公表の2月統計でも引き続き小幅に低下しています。ただし、先行き判断DIは逆に2月統計で上昇しています。先行き判断DIのうち、企業動向関連は製造業・非製造業とも2月も低下したのですが、家計動向関連は飲食関連を除いて上昇を示しており、雇用関連もそれなりの大きさで上昇しています。いずれも、繰り返しになりますが、すべての要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響に基づくマインドの変化と考えるべきです。上昇した先行き判断DIには新規感染者数のピークアウトが影響していると考えられます。しかし、まだ高止まりしていることは確かで、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」に据え置いています。

photo

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも1兆円近い経常赤字となっており、実績の▲1兆円を超える大きな赤字には、私もややびっくりしました。でもまあ、予想レンジの下限が▲1兆2000億円でしたので、ギリギリレンジの範囲内といえるのかもしれません。確かに、季節調整をしていない原系列の統計で見て、2か月連続の経常赤字を記録していて、特に、1月統計の▲1兆1887億円の経常赤字のうち、貿易収支が▲1兆6043億円と、経常収支全体を超える赤字となっています。しかしながら、季節調整済みの系列ではまだギリギリ経常収支は黒字です。ロシアのウクライナ侵攻などを受けて、国際商品市況で資源価格が値上がりしていますので、石油をはじめとする資源に乏しい日本では輸入額が増加するのは当然であり、消費や生産のために必要な輸入をためらう必要はまったくなく、経常赤字は容認されるべきである、と私は考えています。

最後のポイントについて、何度でも同じことを繰り返したいと思いますが、資源価格が上昇しているのであれば、企業に補助金を出して値上げを抑えるデフレ思考ではなく、家計の所得をサポートするリフレ思考の政策を志向すべきです。その意味で、政策対応では難しいとしても賃上げは有効ですし、何よりも、化石燃料の価格上昇を容認すれば、タバコ値上げとよく似た効果で消費を抑制して、地球温暖化や気候変動への対策にもつながります。現在の政府対応は真逆の方向です。

|

« 下の倅と大阪に出かける!!! | トップページ | 2021年10-12月期GDP統計速報2次QEはなぜ1次QEから下方修正されたのか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 下の倅と大阪に出かける!!! | トップページ | 2021年10-12月期GDP統計速報2次QEはなぜ1次QEから下方修正されたのか? »