3か月ぶりに増産に転じた鉱工業生産指数(IIP)の先行きリスクやいかに?
本日、経済産業省から2月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。ヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.1%の増産でした。増産は3か月ぶりです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。
2月鉱工業生産、前月比0.1%上昇 3月予測は3.6%上昇
経済産業省が31日発表した2月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比0.1%上昇の95.8だった。上昇は3カ月ぶり。生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.5%上昇だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では3月が3.6%上昇、4月は9.6%上昇を見込んでいる。
とてもコンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前月と比べて+0.5%の増産という予想でしたので、まずまず「こんなもん」という受止めかという気がします。加えて、足元の3~4月については、製造工業生産予測指数で見て、それぞれ、+3.6%、+9.6%の増産を予測していることから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。もっとも、製造工業生産予測指数の上方バイアスを取り除いた補正値では、3月増産は+1.1%にやや圧縮されますが、それでも増産は増産です。基本的には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染拡大が抑制されていて、同時に、東南アジアなどからの輸入部品供給制約の緩和による増産です。経済産業省による解説記事「2月生産は3か月ぶりの前月比上昇」では、中でも、自動車工業が前月比+10.9%の2ケタ増産となって、ヘッドラインの+0.1%の増産を超えて、+1.42%の寄与度を示しています。他方、減産した主な産業は、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)が前月から▲9.6%の減産で▲0.41%の寄与、また、無機・有機化学工業も▲2.5%の減産で▲0.11%の寄与などとなっています。
今後の生産の行方はCOVID-19の感染拡大、そして、これに伴うグローバルなサプライチェーンにおける部品供給や物流の停滞などに加えて、ロシアのウクライナ侵攻による資源価格の高騰に伴うコストプッシュなどの経済的影響次第という面があり、いずれも、私のような不勉強なエコノミストには予測し難い経済外要因なのですが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復の方向にあるのは間違いないと私は考えています。しかしながら、先行きリスクは下振れの方が大きいように受け止めています。例えば、COVID-19とウクライナ危機に加えて、3月の増産計画は3月10日時点での回答だそうですから、3月16日の福島県沖地震の影響、特に、自動車のサプライチェーンへのネガティブな影響は織り込まれていません。他方で、上振れリスクもないわけではありません。すなわち、現在策定中の経済対策に期待する部分はありますが、詳細に関する情報を私は得ていません。ですから、生産の回復過程はそれほど単純な道のりではない、と考えるべきです。
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