ウクライナ侵攻の経済的影響に関するシンクタンクのリポートやいかに?
ロシアによるウクライナ侵攻に端を発して石油価格が上昇を続けています。先週の段階で、指標となるWTI先物価格が1バレル130ドルに達し、来月以降140ドル台で推移する可能性も取り沙汰されているところ、日本総研から「原油価格が高止まりすればわが国の景気回復は頓挫」と題するリポートが3月11日に明らかにされています。
日本総研のリポートによれば、原油価格(WTI先物価格)が本年4月から9月にかけて1バレル=140ドルで推移した場合、資源輸入先への支払いがかさみ、所得の海外流出(マイナスの交易利得、あるいは、交易損失)が大規模に発生し、2022年度上期における交易損失の増加額は▲21兆円に上り、資源高により2022年度上期の実質GDPもベースラインから年率1%ポイントの下振れ、と試算しています。基本的に、企業収益の圧迫で設備投資が下押しされることに加えて、ガソリン代・電力料金の値上がりなどで個人消費が下振れするためです。さらに、消費者物価上昇率は7~9月期に前年比+2%超となって、日銀の物価目標が達成されてしまう可能性も示唆しています。日本総研のリポート以外に、私が見た範囲でも、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の構造と乗数分析」でも、+20%の原油価格上昇の実質成長率への乗数効果は▲0.07~0.08%との試算が示されていますので、まあ、それくらいかという気はします。
次に、上のグラフはロシアの国内通貨ルーブルの対米ドル為替レートの最近の推移を三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポート「本格的な外貨預金の引き出し制限に着手したロシア」から引用しています。外為市場での実勢レートが大きくルーブル安で推移していることが見て取れます。今週は、米国連邦準備制度理事会(FED)が公開市場委員会(FOMC)を開催し、米国では利上げが始まると予想されているのですが、実は、ほぼほぼ同じ日付でロシアのドル建て国債の利払いが始まります。ロシア政府は非友好国に対してはルーブルで支払うとしているので、ホントに、米ドルではなくルーブルで支払われると債務不履行=デフォルトと判断される可能性があります。通常、こういった債務の利払いには30日間の猶予期間が設定されていると思いますが、S&Pやムーディーズといった格付機関がどう判定するか、私には判らない部分もあります。加えて、3月半ばの利払いをクリアしたとしても、4月早々には次の利払いが待ち構えているようですし、ロシア国債がデフォルトとなれば、何らかの経済的な影響が生じることは当然です。
私は軍事作戦的には、現在のウクライナ侵攻がどのように進んでいるのか、報道以上の情報もなければ、ましてや、判断する能力も持ち合わせません。そもそも、現代の戦争や大規模な武力衝突は経済力に裏打ちされる部分が決して小さくありません。加えて、戦争や武力衝突当事国だけではなく、経済的な影響はその他の国にも及びます。100年前の第1次世界大戦では、日本が戦場にならずに経済的にある程度の利益を得たことは中学や高校くらいの社会科で習いますが、今回のウクライナ侵攻ではどうなるのでしょうか。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向とともに、私にはさっぱり判りませんから、シンクタンクなどの分析を参照しています。
| 固定リンク
コメント