大きな雇用増を記録した米国雇用統計から米国金融政策を考える!!!
日本時間の今夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、本日公表の1月統計では+678千人増と大幅増を記録し、失業率は前月の4.0%から2月には3.8%に低下しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を6パラだけ引用すると以下の通りです。
Economy added 678,000 jobs in February as omicron faded, dining, travel picked up, unemployment fell to 3.8%
Employers added a roaring 678,000 jobs in February as COVID-19’s omicron variant faded, spurring idled employees to return to work and reviving dining, travel and other activities.
The unemployment rate fell from 4% to 3.8%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 400,000 jobs were added last month.
The 678,000 gains marks the strongest showing since July.
The drop in unemployment came even as the number of people working or looking for jobs grew by 304,000, pushing the labor force participation rate to 62.3% from 62.2%. That means more people caring for children and others on the sidelines are returning to a favorable labor market with rising wages.
Also encouraging: Job additions for December and January were revised up by a total 92,000.
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+400千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+678千人増は大きく上振れた印象です。先日3月2~3日の議会証言で米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長は雇用の現状について "The labor market is extremely tight." と表現しています。失業率も3.8%ですし、これはFEDが長期的な均衡水準と見ている失業率の4.0%を下回っています。ですから、総合的に考えると、米国雇用は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大もあって、人手不足が続いていると考えるべきです。そして、この人手不足による賃金上昇が国際商品市況における石油などの資源価格の上昇と相まって、米国の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は、昨年2021年12月に+7%に達していて、今年202年1月には+7.5%を記録しています。ですから、3月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が引き上げられる運びとなっており、量的緩和政策によって膨らんだバランスシートの縮小も進むのではないかと見られています。いずれにせよ、米国金融政策は明らかに景気回復よりもインフレ抑制を重視する引締めモードに入っており、日銀との金融政策スタンスの差が大きくなる可能性があります。
私のような高圧経済支持者からすれば、COVID-19パンデミック前には失業率は3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえまず、多少のインフレを許容してでも今少し需要拡大を図るのも一案だと考えていますが、インフレ動向からすれば金融政策が引き締め方向に進むのは当然と考えるエコノミストも多いのかもしれません。オミクロン型変異株の感染拡大が終息したとはとても思えない段階ながら、金融政策はポストコロナの新たな段階に入りつつあるようです。
| 固定リンク
コメント