大きく減少した2月統計の機械受注の先行きをどう見るか?
本日、2月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲9.8%減の8114億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を引用すると以下の通りです。
2月の機械受注、前月比9.8%減 市場予想は1.5%減
内閣府が13日発表した2月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比9.8%減の8114億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.5%減だった。
製造業は1.8%減、非製造業は14.4%減だった。内閣府は基調判断を「持ち直している」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲1.5%のマイナス予想でした。従って、実績の▲9.8%減はレンジの下限の▲7.3%減を超えて、ややびっくりの大きな下振れでした。それもあって、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直している」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に半ノッチ下方改定しています。先々月に2021年12月統計が公表された際、今年2022年1~3月期のコア機械受注は前期比▲1.1%減の2兆6,749億円と見込まれていましたが、第一生命経済研のリポートによれば、この数字に到達するためには3月統計で+18.8%の伸びが必要になるそうです。
明らかに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)オミクロン型変異株の感染拡大や国際商品市況における資源価格の高騰に起因する設備投資意欲の減退であると考えるべきです。ですから、製造業は前月比でまだ▲1.8%減で済んでいますが、船舶と電力を除く非製造業は▲14.4%の大きなマイナスを記録しています。船舶と電力を除く非製造業について、少し詳しく産業別の統計を見ると、不動産業が前月比▲40.8%減、情報サービス業が▲36.9%減、運輸業・郵便業が▲23.7%減、金融業・保険業が▲23.3%減、などとなっています。製造業はいくぶんなりとも海外需要もあって受注が堅調に推移している一方で、内需の依存度合いが大きい非製造業の停滞が目立つ形になっています。また、オミクロン株の新規感染者数はほぼ2月にピークとなり、まん延防止等重点措置についても3月21日に全面解除されたことから、経済活動は正常化に向かい、非製造業を中心に設備投資意欲が回復することが見込まれる一方で、ウクライナ危機もあって石油をはじめとする資源価格が一段の高騰を見せており、COVID-19についても新規感染者数が高止まりしていることなどから、それほど設備投資意欲が高まるとも考えられず、引き続き、機械受注、あるいは、設備投資は目先は停滞を示す可能性が高い、と私は受け止めています。ただし、2022年度いっぱいを見通せば、日銀短観に見られる企業の設備投資意欲は根強く、また、資源価格の高騰については、中長期的には、省資源や資源代替を目的とする設備への需要が高まる可能性も十分ある、と考えるべきです。
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