« 雇用統計は失業率も有効求人倍率も緩やかながら改善を示す!!! | トップページ | 緩やかながら増産続く鉱工業生産指数(IIP)と横ばい傾向の商業販売統計!!! »

2022年4月27日 (水)

みずほリサーチ&テクノロジーズによる「総合緊急対策」の評価やいかに?

広く報じられている通り、昨日4月26日、政府はコロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を決定し、岸田総理大臣が記者会見をしていました。これを受けて、本日、みずほリサーチ&テクノロジーズが「政府の『総合緊急対策』の評価」と題するリポートを明らかにしています。「総合緊急対策」の主な柱は、(1) 原油価格の高騰対策(国費1.5兆円、事業規模同じ)、(2) エネルギー・原材料・食料等の安定供給対策(国費0.5兆円、事業規模2.4兆円)、(3) 中小企業対策(国費1.3兆円、事業規模6.5兆円)、(4) 生活困窮者支援(国費1.3兆円、事業規模同じ)などとなっています。取り急ぎ、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo

まず、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから ガソリン価格の見通し のグラフを引用すると上の通りです。このグラフを引用した趣旨は、激変緩和のあり・なしについて理解を深めておくためです。すなわち、燃料油元売り事業者に支給する補助金は1リットル当たり35円に拡充され、35円を超過した分は超過額の半額をさらに上乗せして、価格維持目標についてもリットル168円へ引き下げられることになりますので、これを激変緩和ありとしています。もっとも、7月以降は2週間に1円ずつ目標を引き上げることとされており、まさに、固定価格を目指す措置ではなく、値上がりがあるなら一定許容しつつ激変を緩和する、というものです。これがなければ、ガソリン価格は一時的にせよ、リットル200円を超えるケースも考えられます。ただし、これにより、みずほリサーチ&テクノロジーズでは「5~6月にかけてコアCPIを最大▲0.7%押し下げる見通し」との試算も同時に明らかにしています。

photo

続いて、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから 食料・エネルギー価格上昇に伴う年収階級別の負担増 のグラフを引用すると上の通りです。これがキモとなります。年収300万円未満と1,000万円以上と平均の3ケースです。今回の激変あり・なしで300万円未満では、負担増額が約10,000円圧縮されます。率では▲0.4%ポイントです。もちろん、1,000以上では約13,000円の圧縮といいことですから、額では高所得者の方が大きいのですが、他方で、生活困窮者支援として、住民税が非課税の子育て世帯や児童扶養手当が支給されているひとり親世帯に対し、子ども1人当たり5万円の給付金が6月以降に支給される予定となっていますので、年1万円の負担増には十分な額の支援といえます。もちろん、支給から漏れる家計もあるのかもしれませんし、先にもお示ししたように、生活困窮者支が事業規模1.3兆円であるのに対して、エネルギー・原材料・食料等の安定供給対策の事業規模が2.4兆円と大きいのは、やや疑問に感じないでもありませんが、一時的な措置として企業に対する補助金も活用しつつ、生活困窮者に対する所得支援を実施するのは、分配を無視しきったアベノミクスから一定の前進を認めるべきであろうという気もします。ですから、第一生命経済研のリポートでは、「物価上昇そのものを止めるという発想ではなく、物価上昇を我慢するために政府が支援するという内容になっている。」と指摘しています。そうです。それが正しい方向なのですが、悲しくも、第一生命経済研では理解が進んでいないようです。

最後に、第一生命経済研のようなアサッテの評価とは別に、今回の「総合緊急対策」は我が国経済の成長を促進する内容とはなっていない、との批判がありえます。もちろん、私は財政拡大による成長促進は重要だと考えるのですが、少なくとも、現代貨幣理論(MMT)ですら、インフレが進む段階での財政拡大には否定的です。現時点では、低所得者や中小企業などのインフレ高進への対応策を中心にした財政政策でいいのではないか、と私は考えています。もっとも、日銀と政府が合意したインフレ目標は+2%なわけで、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートでは激変緩和なしの場合ですら、今年2022年後半にコア消費者物価指数(CPI)上昇率が+3%に達するかどうかという予想で、2023年に入れば再びコアCPI上昇率は+1%すら割り込む可能性が示唆されています。この程度の物価上昇であれば、物価を強力に抑え込むというよりは、負担の大きい低所得者や中小企業を支援しつつ、市場価格に基づいてカーボン・ニュートラルの方向を目指す、という方が望ましいと私は考えるのですが、こういった理解が進まないエコノミストが決して少なくない印象です。

|

« 雇用統計は失業率も有効求人倍率も緩やかながら改善を示す!!! | トップページ | 緩やかながら増産続く鉱工業生産指数(IIP)と横ばい傾向の商業販売統計!!! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 雇用統計は失業率も有効求人倍率も緩やかながら改善を示す!!! | トップページ | 緩やかながら増産続く鉱工業生産指数(IIP)と横ばい傾向の商業販売統計!!! »