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2022年4月14日 (木)

夏季ボーナスの伸びは物価上昇に追いつかないのか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2022年夏季ボーナスの予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほリサーチ&テクノロジーズのみ国家公務員+地方公務員であり、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員ベースの予想、と明記してあります。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.1万円
(+0.3%)
59.4万円
(▲10.2%)
今夏の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.3%と、夏季賞与としては、3年ぶりのプラスとなる見込み。
みずほリサーチ&テクノロジーズ38.5万円
(+1.4%)
65.5万円
(▲10.6%)
まん延防止等重点措置が解除され、夏場にかけての個人消費は持ち直しが期待される。既に、足元では国内線や旅行ツアーの予約が好調との報道もあり、対人接触型サービス消費には持ち直しの兆しがみられる。しかし、賃金(含むボーナス)を上回る物価の上昇が懸念される中、実質所得の減少は夏場の個人消費の回復を阻害する要因になる。感染拡大で落ち込んでいた対人接触型サービス消費の反発を除くと、夏場の個人消費は力強さを欠く展開になりそうだ。
第一生命経済研n.a.
(+1.2%)
n.a.小幅とはいえベースアップが実現し、ボーナスも伸びが高まることで名目賃金については増加が見込まれるものの、それでも賃金の伸びは物価上昇に追い付かない可能性が高く、実質賃金でみればマイナスが予想される。コロナ禍からの持ち直しが期待されている個人消費だが、その期待が裏切られる可能性があることに注意したい。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング38.4万円
(+1.0%)
58.5万円
(▲11.5%)
順調に回復する企業業績、堅調な雇用情勢が追い風となるも、新型コロナ感染症の断続的な感染拡大、ウクライナ危機前から続く資源価格高による企業の負担コスト増が押し下げ要因となり、増加幅は限定的にとどまろう。

上の表に見える通りで、日本総研を別にすれば、2022年夏季ボーナスは+1%以上の伸びが見込まれています。ここ3年の夏季ボーナスの前年比は、毎月勤労統計調査によれば、2019年▲1.5%減、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック以降の2年間では、2020年+0.5%増、2021年▲0.8減でしたから、+1%増、あるいは、それを超える伸びであればまずまず、という気もしますが、ヘッドラインに取り上げた見方の通りで、実は、物価上昇に追いつきません。例えば、日本経済研究センター(JCER)の最新のESPフォーキャスト調査によれば、2022年度の消費者物価(CPI)上昇率は+1.64%が見込まれていますから、もっとも高い伸びを予想しているみずほリサーチ&テクノロジーズの+1.4%としても、物価上昇を差し引いた実質値/購買力で見て夏季ボーナスは昨年に比べて減少する可能性が高いと考えるべきです。ボーナスは恒常所得ではないので、消費への影響はそれほど大きくないとの見方もありますが、悲観的な見方を示すシンクタンクもあります。私も同じで、夏季であれ、年末であれ、特に大型の耐久消費財の購入にはボーナスはそれなりのインパクトあると考えています。従って、夏物商戦が渋いボーナスのために盛上がりを欠く可能性は高いと考えるべきです。そして、何度もこのブログで主張しましたが、わたしの主張を繰り返しますと、インフレが高まるのであれば、例えば、ガソリンなどの価格抑制のために企業に補助金を出すのではなく、物価上昇に見合った家計所得の増加で帳消しにする、従って、実質的な家計消費が減少しないように所得で補償する方向が重要、と私は考えています。しかし、消費税率引上げの際にも軽減税率が適用され、今回のインフレ率上昇局面でも企業への補助金で価格抑制が図られる方策が取られています。労働組合や労働運動の弱体化、特に、ナショナルセンターである連合のあからさまな劣化が一因ながら、賃上げという形で家計所得が増加する方向に進んでいないのは労働運動のあり方として、あるいは、それを支える政策の方向として、ともに、大きな疑問を感じます。価格抑制の短期的な政策とはいえ、まあ、米国の石油備蓄放出も似たようなものなのですが、化石燃料に補助金を出すようでは、地球温暖化や気候変動の防止に逆行しているとしか見えません。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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