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2022年4月 1日 (金)

ほぼ完全雇用に達した3月の米国雇用統計に基づいて金融政策はどう動くか?

日本時間の今夜、米国労働省から3月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、本日公表の3月統計では+431千人増を記録し、失業率は前月の3.8%から3月には3.6%に低下しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を6パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 431,000 jobs in March as COVID fades but inflation soars; Unemployment rate fell to 3.6%
U.S. employers added a booming 431,000 jobs in March as tumbling COVID-19 cases more than offset growing concerns about soaring inflation and the war in Ukraine.
The unemployment rate fell from 3.8% to 3.6%, the Labor Department said Friday. That puts it just above the 50-year low of 3.5% that prevailed just before the pandemic upended the economy in March 2020.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 440,000 jobs were added last month.
The economy has now added more than 400,000 jobs a month for 11 months, the longest such streak on record, Morgan Stanley noted in a report.
So far, the nation has recovered 20.4 million, or 93%, of the 22 million jobs lost early in the health crisis, leaving it 1.6 million jobs short of its pre-crisis level, a gap that could be closed by summer.
Another positive: Payroll additions for January and February were revised up by a total of 92,000. The upgrades pushed January's advance to 504,000 despite widespread omicron-related worker absences.

よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+440千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+431千人増はほぼジャストミートした形です。広く報じられている通り、米国連邦準備制度理事会(FED)はすでに利上げ局面に入っていますが、雇用が拡大し失業率が低下する局面で、賃金上昇がインフレの加速を招くようであれば、FEDが利上げペースを速める可能性も市場では予測されているようです。特に、失業率は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック前の2020年1~2月には3.5%まで低下していましたが、この50年ぶりの水準に3月の3.6%は肉薄しています。失業率だけからすれば、米国労働市場はほぼほぼ完全雇用状態に近いと考えるべきです。
こういった雇用逼迫に基づくホームメード・インフレに加えて、COVID-19からの回復局面における新興国や途上国での資源需要増やロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー供給制約によって資源価格が高騰し、先進各国のインフレに拍車をかけています。米国ではエネルギーと食料を除くコアPCE(個人消費支出デフレータ)上昇率が+5%を越え、ヘッドラインPCEでは+6%に達しています。ですから、これも広く報じられているように、5月に予定されている次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で50ベーシスポイントの利上げの可能性も取り沙汰されています。日本でも、4月の消費者物価指数(CPI)統計では、昨年からの携帯電話料金引下げの効果が剥落し、一気に、+2%の日銀インフレ目標を達成してしまうとの見方も出ています。そうなると、日銀はどのように対応するのでしょうか。いずれにせよ、日米だけでなく、物価上昇と景気や雇用との兼ね合いで金融政策の舵取りが難しい段階に達しています。

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