1-3月期のGDP統計速報1次QEは軒並みマイナス成長の予想が並ぶ!!!
4月末の商業販売統計や鉱工業生産指数などをはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日5月18日に1~3月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。まん延防止等重点措置が3月21日に解除されるまで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大のために行動制限が広がっていましたので、マイナス成長を見込む機関が多くなっています。でも、すでに「過去の数字」なのかもしれません。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向、さらに、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う経済制裁の影響も極めて不透明です。こういった中で、テーブルの下の方の三菱系2機関を例外としつつ、ほとんどのシンクタンクでは、先行きの4~6月期までの予想について言及しています。特に、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズでは極めて詳細な需要項目別などの見通しを明らかにしていますが、いろいろな事情があって、以下のテーブルではこの2機関だけは一部省略して最初のパートだけをピックアップしてあります。これら2機関の残りの部分も含めて、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | ▲0.1% (▲0.2%) | 4~6月期を展望すると、活動制限の緩和で人出が回復し、個人消費が本格的に回復する見込み。また、自動車の挽回生産などを背景に、輸出や設備投資も一段と増加することから、高めのプラス成長となる見通し。 |
大和総研 | ▲0.2% (▲0.7%) | 2022年4-6月期の日本経済は経済活動の正常化が進み、自動車の供給制約が小幅に緩和されるとの想定のもと、サービス消費や自動車関連需要が持ち直すだろう。自動車以外の輸出や設備投資に加え、政府消費も増加することで、実質GDPは高めのプラス成長(前期比年率+6.4%)になると見込んでいる。 個人消費は、経済の正常化に向かう中で2四半期ぶりの増加が見込まれる。サービス消費や自動車などの耐久財消費が増加しよう。新たなGo Toトラベル事業は6月にも実施される可能性があり、個人消費の押し上げ要因となるとみられる。 自動車生産については感染状況の改善に伴い、緩やかに増加すると想定している。もっとも、トヨタ自動車は4月18日に、半導体を含む部品不足により、5月の世界生産計画を年初に取引先に通達していた台数から10万台程度下方修正すると発表した。さらに3月時点では、6月の世界生産を年初の計画から5%程度減らす見通しを立てていた。他の自動車メーカーでもこうした動きが広がる可能性がある。当面は供給制約が継続し、ペントアップ(繰り越し)需要に対応した大幅な挽回生産は期待しにくいだろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲0.7% (▲2.6%) | 4~6月期は、ブースター接種の進展や経口治療薬の普及に伴い、対人サービス消費を中心に経済活動の回復が見込まれる。現時点では、年率+5%以上のプラス成長を予測している。 4月中旬までは新規感染者数が地方を中心に増加傾向で推移したことを受けて消費行動に慎重姿勢が残ったとみられ、人出(全国の小売・娯楽モビリティ)は4月に入り回復傾向が一服した。一方、足元では関東・近畿・中部の大都市圏で新規感染者数が減少しているほか、4月中旬まで感染増加が鮮明だった九州・沖縄や北海道・東北でも増勢が鈍化しており、オミクロン亜種による感染再拡大(第7波)は回避される可能性が高まっている。新規感染者数の増勢鈍化に伴い、GWにかけて人出は再び回復に転じる見込みであり、対人サービス消費も回復に向かうだろう。 しかし、今後の人出増加で感染者数は再び増勢を強める可能性もある。亜種についてもワクチンは有効であることから、医療体制の負荷は大幅には高まらず緊急事態宣言等の行動規制が再発令されるような事態には至らないとみているものの、ワクチン未接種者や子育て世帯(ワクチンを接種していない子どもと同居する親)、重症化した場合の死亡リスクが相対的に高い高齢者等を中心に引き続き消費行動に慎重姿勢が一定程度残るとみられ、個人消費の回復ペースは緩やかなものになるだろう。 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.5% (▲2.1%) | まん延防止等重点措置は3/21で終了しているため、3月下旬以降は外食、宿泊などの対面型サービスを中心に個人消費が持ち直しているとみられる。物価高による家計の実質購買力低下が下押し要因となるものの、行動制限がなければ消費性向の引き上げによって個人消費は急回復することが期待できる。現時点では、4-6月期の実質GDPは民間消費の高い伸びを主因に前期比年率4%台のプラス成長を予想している。ただし、新型コロナウイルス感染症を完全に終息させることは困難であり、感染拡大時にこれまでと同様に行動制限の強化を繰り返すようであれば、消費の持続的な回復は実現しないだろう。 |
第一生命経済研 | ▲0.4% (▲1.5%) | 4-6月期については、感染状況の落ち着きを背景にサービス消費を中心として再び景気が持ち直すと予想する。その先もコロナ禍からの正常化に向けた動きは続くとみられ、22年度の景気は緩やかな回復基調で推移する可能性が高い。 もっとも、資源価格の高騰による企業収益の圧迫や家計の実質購買力毀損、ゼロコロナ政策継続による中国経済下振れ懸念やサプライチェーンの混乱、速いペースでの金融引き締めによる米国経済失速懸念、新型コロナウイルスの感染再拡大リスク等、懸念材料には事欠かない。ウクライナ情勢の落ち着きどころが見えないなか、今後も先行き不透明感が非常に強い状況が続くとみられる。 |
伊藤忠総研 | ▲0.5% (▲2.2%) | 続く4~6月期は、個人消費が物価上昇の逆風を受けつつもコロナ感染縮小を受けて持ち直し、設備投資も徐々に動き出すと見込まれ、前期比プラス成長に転じると予想。経済活動(実質GDP)の水準は、ようやくコロナ前(2019年10~12月期)を取り戻そう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.4% (▲1.7%) | 2022年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比-0.4%(年率換算-1.7%)と再びマイナス成長に陥ったと予想される。 |
三菱総研 | ▲0.2% (▲0.9%) | 2022年1-3月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲0.2%(年率▲0.9%)と2四半期ぶりのマイナス成長を予測する。 |
見れば明らかな通り、ほぼ横ばいに近い小さなマイナス幅から、年率で▲2%を下回るような大きなマイナス成長まで、いろんなバリエーションが見られるのですが、私自身の感触としては、それほど大きなマイナス成長にはならないのではないか、と直感的に感じています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比年率で見て、中央値が▲1.8%のマイナス成長で、レンジだと▲0.2%~▲6.4%という結果になります。プラス成長を予測するシンクタンクはないわけです。もっともマイナス幅の大きな▲6.4%というのは野村証券金融経済研であり、ほぼほぼ外れ値に近いと私は考えていますが、直感ながら、私は前期比年率で▲1%くらいの予想で見ています。というか、1次QEの時点ではもう少しマイナス幅が大きい可能性はありますが、2次QEでおそらく上方改定され、仕上がりとして年率▲1%くらいのイメージです。たぶん、最新データを入れ込めばマイナス幅は小さくなる可能性が高い、と私は考えています。その理由としては、円安の進行です。資源価格の高騰による物価高は実質所得の低下によるマイナス効果が決して無視できませんが、円安については物価高への影響を差し引いても輸出からの影響へのインパクトにより景気拡大効果が見られる可能性が十分ある、と私は考えています。
最後に、下のグラフは、仕上がりの数字として、私の直感にもっとも近い大和総研のリポートから 実質GDP成長率と需要項目別寄与度の推移 を引用しています。
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