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2022年5月18日 (水)

1-3月期GDP統計速報1次QEは外需の寄与によりマイナス成長を記録!!!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.2%、年率では▲1.0%と新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響などによりマイナス成長を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1-3月GDP1.0%減、2期ぶりマイナス コロナ制限響く
内閣府が18日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.2%減、年率換算で1.0%減だった。マイナス成長は2四半期ぶり。感染力の強いオミクロン型の新型コロナウイルスの拡大で、飲食店の営業などを制限するまん延防止等重点措置が適用され、個人消費が伸び悩んだ。
マイナス幅はQUICKがまとめた市場予測の中央値(年率1.8%減)より小さかった。前期比で0.2%減の要因をみると、内需が0.2ポイントのプラス寄与、外需が0.4ポイントのマイナス寄与だった。
1~3月は東京都などに重点措置を発令した時期にあたる。GDPの半分以上を占める個人消費は前期比0.03%減少し、2四半期ぶりのマイナスとなった。重点措置で飲食店は時短営業や酒類提供の制限を求められた。外食や宿泊などのサービス消費は0.2%減った。自動車などの耐久財は1.6%減、衣服などの半耐久財は1.8%減だった。
内需のもう一つの柱である設備投資は0.5%増で2四半期連続で伸びた。ガスタービンや研究開発向けの投資が好調だった。
住宅投資は1.1%減と3四半期連続でマイナスになった。名目では0.2%のプラスだった。建築資材の価格上昇の影響を除いた実質では落ち込んだ。公共投資は3.6%減で5四半期連続のマイナス。東日本大震災関連の復興需要が一巡した可能性がある。
政府消費(政府支出)は0.6%増と2四半期ぶりのプラスだった。コロナワクチンの購入や接種にかかる費用が増えた。
外需は3四半期ぶりにマイナスだった。自動車などを中心に輸出は1.1%増えた。海外から購入するワクチンなどで輸入は3.4%増えた。GDPの計算上、外需は輸出から輸入を差し引くため、全体への寄与度は0.4ポイントのマイナスとなった。
名目GDPは前期比0.1%増、年率0.4%増だった。収入の動きを示す雇用者報酬は名目で前年同期比0.7%増となった。
4月以降は重点措置の解除で人出が戻っている。ゴールデンウイークは3年ぶりに緊急事態宣言のない大型連休となり、飲食店や外食、旅行需要などは回復しつつある。4~6月期は個人消費の持ち直しなどで、プラス成長に転じるとの見方が多い。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2021/1-32021/4-62021-7-92021/10-122022/1-3
国内総生産GDP▲0.3+0.5▲0.7+0.9▲0.2
民間消費▲0.8+0.7▲1.0+2.5▲0.0
民間住宅+1.0+1.0▲1.7▲1.2▲1.1
民間設備+0.0+2.2▲2.4+0.4+0.5
民間在庫 *(+0.0)(+0.1)(+0.1)(▲0.2)(+0.2)
公的需要▲0.5▲0.2+0.0▲1.1▲0.2
内需寄与度 *(▲0.5)(+0.8)(▲0.8)(+0.8)(+0.2)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.1)(▲0.2)(+0.1)(+0.1)(▲0.4)
輸出+2.6+2.8▲0.3+0.9+1.1
輸入+1.8+4.3▲0.8+0.3+3.4
国内総所得 (GDI)▲1.1+0.1▲1.5+0.3▲0.7
国民総所得 (GNI)▲1.0+0.2▲1.5+0.5▲0.3
名目GDP▲0.6+0.3▲1.0+0.3+0.1
雇用者報酬 (実質)+1.1+0.2▲0.2+0.3▲0.4
GDPデフレータ▲0.1▲1.1▲1.2▲1.3▲0.4
国内需要デフレータ▲0.5+0.3+0.6+1.1+1.8

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち黒の純輸出=外需の寄与が大きくなっています。

photo

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率成長率が▲1.8%でしたが、実績は▲1.0%でしたので、やや上振れた印象です。しかも、テーブルに収録したように、インフレの影響とはいえ名目GDP成長率がプラスとなっています。実質所得の面から物価上昇により購買力が目減りしたことは確かですが、売上などについては大きなマイナスではないのではないか、と私は考えています。消費はほぼほぼ前期2021年10~12月期から横ばいですし、設備投資は前期からわずかながら増加しています。在庫が積み上がった影響を除いても内需寄与度はほぼほぼゼロですし、むしろ、外需によってマイナス成長となった印象です。輸入が大きく増加しているわけです。別の表現をすれば、資源高と円安による交易条件の悪化に起因するマイナス成長と考えるべきです。交易利得は昨年2021年10~12月期に前期差で▲3.3兆円の所得流出増を記録しましたが、本日公表された今年2022年1~3月期にも前期からさらに▲2.3兆円の流出増となっています。もう一度、物価について見ておくと、上のテーブルにある通り、GDPデフレータは低下している一方で、国内需要デフレータは上昇しています。すなわち、GDPの控除項目である輸入の価格上昇に起因するインフレですから、GDPデフレータは低下、輸入価格が国内に波及して国内需要デフレータは上昇、となっているわけです。国内需要デフレータの上昇がインフレの生活実感に近いと私は受け止めています。

最後に、足元の景気から考えて、4~6月期はある程度のプラス成長の可能性が高いながら、リスクは下方に厚い、と私は見込んでいます。すなわち、COVID-19とロシア/ウクライナ情勢が経済外要因として大きな影響がありますし、ほかに、米国をはじめとする日本以外の先進国での金融引締め政策の影響、中国のゼロ・コロナ政策による上海などのロックダウンの影響、自動車向け半導体をはじめとする途上国や新興国におけるサプライチェーンの動向、などなど、下振れリスク要因がいっぱいです。

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