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2022年5月 9日 (月)

IMF Blog に見る1970年代の石油ショック時との違いは何か?

5月5日付けの IMF Blog は Chart of The Week の特集で、"Lower Oil Reliance Insulates World From 1970s-Style Crude Shock" と題して、現在の石油価格の高騰は1970年代の石油ショックの時とはかなり様相を異にする、との分析結果を明らかにしています。

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IMF Blog の書き出しは、"The war in Ukraine and sanctions on Russia are causing substantial economic spillovers, notably for energy." と上のグラフの右のパネルの現状を説明しつつ、それでも、タイトル通りに、今週のグラフの説明として、"As the Chart of the Week shows, the world relies less on oil, easing any potential shocks. Economists track oil intensity by comparing how many barrels are needed to produce $1 million in gross domestic product, and this measure was about 3.5 times higher than current levels when crude prices almost tripled between August 1973 and January 1974." と主張しています。世界経済の石油依存度は1070年代前半の第1次石油ショックのころから大きく低下し、GDP100万ドルに必要な石油を計算すると当時は現在の3.5倍必要だった、と分析しています。加えて、"wage-setting mechanisms" を取り上げて、いわゆる賃金と物価のインデクセーションは減少し、"the credibility of monetary policy has broadly strengthened over the intervening decades." として、中央銀行による金融政策の信頼性が強化されている事実を指摘し、インフレに対する警戒感は共有しつつも、決してかつての大幅なインフレになる可能性は高くない、との主張であると私は受け止めています。

今の学生諸君には何の記憶もないのは当然ながら、1970年代前半の第1次石油ショックのころのいわゆる「狂乱物価」で、スーパーマーケットでトイレットペーパーの争奪戦があったことなどは私はまだ覚えています。たしかに、メディアはインフレ目標手前の+1.9%の東京都区部のコアCPI上昇率を大きく報じましたが、先行きについては少なくとも狂乱物価当時の混乱を予想するエコノミストは少ないのではないでしょうか。加えて、石油価格ではなくて円安を題材にしているのですが、5月2日付けの Financial Times では "Yen weakness is an opportunity, not a threat, for Japan" と題して、円安擁護の姿勢を明らかにしています。すなわち、"Yen intervention falls into the category of policies that would do little good and little harm." として、円安回避のために市場介入することは効果も害悪も小さい、とか、"Pushing for a hawkish turn at the BoJ, by contrast, would do a great deal of harm and almost no good." として、タカ派的な金融引締めは害悪ばかりで効果なし、と指摘しています。そして、結論として、"the weak yen is a chance to stimulate exports - even if Japan is no longer the currency-sensitive export machine it once was - and get inflation closer to the BoJ's 2 per cent target. "A weak yen is positive for Japan's economy as a whole," Kuroda argued. In this, he is correct." ということで、円安のコストプッシュという供給面ではなく、輸出増加による需要面からの物価上昇により、日銀の2%物価目標の達成の好機である、との主張です。

ただし、1点だけ忘れるべきではないのは、1970年代とは違って、今の日本ではお給料が上がっていないことです。ですから、お給料が上がらないことを前提に物価を抑え込もうとするのではなく、逆に、物価上昇に応じた所得の増加を目指すことが重要です。この点は何度でも繰り返したいと思います。

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