金曜日公表予定の6月調査の日銀短観の予想やいかに?
今週金曜日7月1日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は来年度2022年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナ危機といった経済外要因の動向次第という面がある一方で、それなりに時間を経過してシンクタンクの見方も一定方向に収斂しつつあるような気がします。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
3月調査 (最近) | +14 +9 <+0.8> | n.a. |
日本総研 | +12 +15 <+5.0%> | 先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査対比+2%ポイントの上昇を予想。活動制限の解除によるサービス消費を中心とした個人消費の持ち直しが進むほか、供給制約の緩和期待で景況感は下支えされる見通し。もっとも、一段の資源高や中国景気の停滞など、先行き不透明感が根強い点には注意が必要。 |
大和総研 | +11 +12 <+5.8%> | 大企業製造業では、供給制約の緩和による生産の拡大を見込む「自動車」の業況判断DI(先行き)が上昇するとみている。さらに、北京での感染拡大という懸念はあるものの、上海におけるロックダウンが解除されたことで、中国向け輸出の持ち直しが見込まれることが、「電気機械」の業況判断DI(先行き)を押し上げると見込む。ただし「食料品」では、原材料価格の高騰による収益の悪化が業況判断DI(先行き)を低下させると予想する。大企業非製造業については、新たなGo To トラベル事業の実施やインバウンドの受け入れ再開など、経済活動の正常化の進展と政策的な後押しへの期待感から、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」といった業種で業況判断DI(先行き)が上昇すると予想する。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +13 +12 <+6.5%> | 製造業・業況判断DIの先行きは1ポイントの改善を予測する。上海のロックダウンなどによる減産の影響がはく落し、自動車を中心に業況は改善するだろう。ただし、ウクライナ情勢を巡る先行き不透明感や、資源高による採算悪化への懸念などから、大幅な改善には至らないと予想している。 非製造業・業況判断DIの先行きは4ポイントの改善を見込む。対人接触型サービス消費持ち直しへの期待から、宿泊・飲食サービスや対個人サービス中心に改善するだろう。感染者数・重症者数の減少を受けて感染への不安が後退する中、政府が旅行振興策を再開することへの期待が高まっている。日系大手航空会社は、今年7,8月の国内線便数をコロナ禍前比9割超まで増やす計画を発表した。また、政府が観光客受け入れ再開を決めたことで、インバウンドに復調の兆しが見られる点も業況の押し上げ要因になるだろう。 ただし、財消費については伸び悩みが予想される。昨年から続く資源高と足元の円安が相まって、様々な商品の価格が上昇する一方、相対的に賃金の伸びは鈍い。今後も企業による値上げが進み、消費者の節約志向が一層強まることで、卸・小売業などの業況は押し下げられるとみている。 |
ニッセイ基礎研 | +12 +14 <+6.3%> | 先行きの景況感は総じて小幅な改善を予想。製造業では供給制約の緩和と中国の経済活動再開への期待、非製造業では旅行喚起策や水際対策緩和などに伴う人流のさらなる回復への期待がそれぞれ景況感の追い風になる。ただし、ウクライナ情勢や世界的なインフレ、中国の都市封鎖再導入の可能性など海外経済を巡る不透明感は強いほか、原材料価格の上昇・高止まりに対する懸念も根強いとみられることから、大幅な改善は見込みづらい。 |
第一生命経済研 | +14 +13 <大企業製造業+15.2%> | 次回6月の短観は、世界経済の減速に対して、円安がマインド押し上げに効くかどうかが注目される。業況DIは、製造業が横ばい、非製造業は改善とみる。物価上昇圧力が、販売価格・仕入価格DIにどう表れるかも注目される。 |
三菱総研 | +13 +13 <+7.6%> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が6月時点から横ばいの+13%ポイント、非製造業は+2%ポイント上昇の+15%ポイントと予測する。製造業は、資源価格の高止まりや夏場の電力不足が懸念されるが、供給制約が徐々に解消に向かうとみることから、横ばいを予想する。非製造業は、経済活動の再開が本格化すること、インバウンドの受け入れ再開などから改善を見込む。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +10 +13 <大企業全産業+9.4%> | (大企業製造業)先行きは、コスト高が続くことへの懸念は残る一方、半導体など部品不足による供給制約の緩和が期待され、自動車など加工業種を中心に14と、4ポイントの改善が見込まれる。 (大企業非製造業)先行きは、新型コロナ・オミクロン株の新規感染者数の減少を背景に、経済社会活動の活発化が期待され、6ポイント改善の19と改善が見込まれる。 |
農林中金総研 | +12 +13 <+2.0%> | 先行きに関しては、引き続き、一次産品価格の高騰による収益圧迫への警戒が強いほか、欧米諸国での利上げ加速による景気鈍化懸念や夏場の電力不足も不安材料ともみられるが、5%台半ばの成長を目標とする中国の景気テコ入れ策、サービス消費やインバウンド需要の回復への期待も強いと思われる。以上から大企業・製造業は11、中小企業・製造業は▲7と、今回予測からともに▲1ポイントの悪化予想と見込む。一方、大企業・非製造業は16と今回予測から+3ポイント、中小企業・非製造業は▲2で今回予測から+1ポイントと、いずれも改善方向と予想する。 |
見れば明らかなのですが、ほぼ、日銀短観の業況判断DIのヘッドラインとなる大企業製造業ではやや悪化、逆に、大企業非製造業ではやや改善、というのが大雑把なコンセンサスかという気がします。その改善と悪化の程度により、大企業製造業の業況判断DIの方が大企業非製造業より水準が高かったり、あるいは、逆だったり、はたまた、同水準だったりするわけなのでしょう。でも、DIですので変化の方向とその大きさが重要であり、DIの水準は2の次になります。まあ、メディアではこれを理解しないニュースが出るかもしれませんが、そのあたりはしっかりと理解しておきたいものです。そして、ヘッドラインで私が着目した先行きについては、どのシンクタンクでも緩やかな改善を見込んでいます。すなわち、製造業については6月調査では、ウクライナ危機などによるコストアップや中国上海のロックダウンの影響を受けての半導体部品の不足などから、一時的に業況判断DIは悪化に振れましたが、先行きは緩やかながら改善、との見立てです。他方、非製造業も同じように緩やかな改善なのですが、これは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大次第、というように私は受け止めています。現在の足元の6gタウ下旬の時点で、すでにCOVID-19の新規感染者数は新規変異株のために増加に転じたとの見方も出ているようですし、もちろん、感染拡大だけではなく変異株の重篤度にもよりますので、専門家ならざる私にはなんとも見通せませんが、場合によっては、夏休みの行楽シーズンに向けて何らかの行動制限を伴う措置が取られる可能性のゼロではありません。また、設備投資計画は3月調査が例年になくプラスで始まりましたが、6月調査では例年通りに順調に上積みされる計画が示されています。さらに、先行きの注目点として、いくつか上げておきたいと思います。まず、今回の6月調査の日銀短観については、私は「事業計画の前提となっている想定為替レート」にも注目しています。3月調査の時点では対米ドルで111.93円となっていましたが、現在の足元の実績データではすでに2割くらいの円安方向で動いています。これを企業としていかに見込んでいるかは注目に値します。そして、日銀短観を離れてさらに2点指摘すると、今夏の猛暑の可能性です。ラ。ニーニャだか、エル・ニーニョだかの影響があるらしく、今冬は厳寒でしたし、今夏は猛暑ともいわれています。通常、夏が暑くて冬が寒いのは経済にとって好条件と考えられるのですが、今夏の東電管内においては電力需要の逼迫から生産への影響が出るかどうか、気にかかっています。そして、米国のリセッションの可能性です。米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FED)はインフレ封じ込めのために猛烈な金融引締めを進める可能性が高く、米国がリセッションに陥る可能性も小さくありません。貿易面では日本はすでに米国よりも中国の影響のほうが大きいのでしょうが、さはさりながら、米国景気の動向はとっても気にかかるところです。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。
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