消費者物価指数(CPI)と企業向けサービス価格指数(SPPI)の動向を考える!!!
本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (PPI)が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。まず、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.1%を記録しています。物価上昇は9か月連続です。7年ぶりの+2%超の物価上昇が先月から続いています。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.8%にとどまっています。また、企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+9.0%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
5月の全国消費者物価、2.1%上昇 食料や家電の値上がりで
総務省が24日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比2.1%上昇した。上昇は9カ月連続で、2%台を付けたのは前月に続いて2カ月連続となる。エネルギー価格が引き続き上昇しているほか、原材料価格の高騰を受けた生鮮食品を除く食料の上昇、部品供給不足を受けた家電製品の値上がりなどがCPIを押し上げた。
QUICKがまとめた市場予想の中央値(2.1%上昇)と一致した。伸び率は4月(2.1%上昇)と同水準だった。
エネルギーは前年同月比17.1%上昇と高騰が続いているが、前月(19.1%上昇)からは伸び率が縮小した。このうち、原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」は18.6%上昇、「都市ガス代」は22.3%上昇と大幅な伸びとなった。「ガソリン」も前年同月比では13.1%上昇となったが、政府の補助金による抑制効果などで前月に比べて伸び率は鈍化した。
生鮮食品を除く食料は前年同月比2.7%上昇と、15年3月(3.8%上昇)以来7年2カ月ぶりの伸び率となった。値上げによって調理カレーや唐揚げなどの上昇が目立ったほか、同様に値上げが相次ぐハンバーガーや寿司など外食も押し上げに寄与した。「家庭用耐久財」は7.4%上昇した。中国のロックダウン(都市封鎖)や半導体不足を背景にしたルームエアコンの上昇がけん引した。
一方、携帯電話の通信料は前年同月比22.5%下落した。
生鮮食品を除く総合指数は前月比で0.1%上昇した。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.8%上昇した。生鮮食品を含む総合は前年同月比2.5%上昇し、9カ月連続でプラスとなった。
5月の企業向けサービス価格、1.8%上昇 上昇幅が拡大
日銀が24日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は106.7と、前年同月比で1.8%上昇した。15カ月連続のプラスで、上昇幅は4月(1.7%)から拡大。エネルギー価格の高騰などから運輸・郵便が上昇した。指数そのものは前月から横ばいだった。
運輸・郵便のうち、国際運輸関連が大きく上昇した。外航貨物輸送では燃料価格の上昇に加え、中国のロックダウン(都市封鎖)解除を見越した運賃価格の上昇も押し上げ要因になった。
不動産は店舗の賃料が主因となって上昇した。新型コロナウイルス感染対策のまん延防止等重点措置(まん防)の解除で外出する人が増え、店舗の売り上げと連動して賃料が上昇した影響とみられる。
調査の対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは95品目、下落は21品目だった。
長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.1%の予想でしたので、ジャストミートしました。基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきです。もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀金融政策による需要面からの物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、5月統計における上昇率は+17.1%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.26%あります。この寄与度のうち、電気代がちょうど半分の+0.63%ともっとも大きく、次いで、ガソリン代の+0.27%、都市ガス代の+0.21%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%、5月統計では+17.1%と、ホンのちょっぴりながら上昇率は下げ止まりつつあるようにも見えます。ただ、かなり高い上昇率で高止まっていることは確かです。加えて、生鮮食品を除く食料も4月統計の+2.6%上昇に続いて、5月統計でも+2.7%の上昇を示しており、+0.60%の寄与となっています。

続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは上の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇の要因も、基本的に、消費者物価指数(CPI)と同じで、供給面からのインフレといえます。大類別でヘッドライン上昇率に対してもっとも寄与度が大きかったのは運輸・郵便であり、+4.8%の上昇、0.77%の寄与となっています。寄与度で見てその次に大きい大類別は土木建築サービスをはじめとする諸サービスであり、上昇率こそ+1.5%と大きくないのですが、寄与度は+0.53%あります。また、景気に敏感な広告も上昇率+4.4%、寄与度+0.21%を示しています。運輸・郵便は石油価格上昇などによるコストプッシュの要因が強いと考えるべきですが、諸サービスや広告についてはコストプッシュばかりとはいえません。まあ、SPPIには直接にエネルギーや資源価格を反映する大類別がありませんので、円安とともに資源価格上昇が波及しているという見方は成り立つとはいえ、人手不足の影響はそれなりにあるのだろうと私は受け止めています。
最後に、参議院議員選挙が本格的に開始され、現在の物価についての議論も盛んです。ただ、私が考えるに、現在のインフレ目標+2%に近い実績物価上昇率をもって日銀を批判するのは疑問です。というのも、個々人の受け止めはさまざまとしても、メディアの論調ではつい半年ほど前までは物価目標+2%が達成されない、という事実をもって日銀を批判していたように私は見ていたのですが、それが今では+2%の物価上昇を批判しているように見受けられます。+2%の物価目標が達成されないといっては批判され、物価上昇が+2%だといっては批判されるのでは、日銀も立場がありません。他方で、物価に対する批判が大きいのは、バックグラウンドで生活が苦しくなっているからではないかと私は想像しています。しかし、物価上昇だけを「悪者」にしていたのでは、そのほかに生活を苦しくさせている要因を見逃すことにもなりかねません。物価上昇も含めて生活が苦しくなっているのであれば、ケインズ的には収入が増える必要があります。反ケインズ的には生活を切り詰める必要があるかもしれません。私はエコノミストとして、生活を切り詰めるよりは収入を増加させる方法を探りたいと思います。
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