明後日公表予定の1-3月期GDP統計速報2次QEの予想はやや下方修正か?
先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明後日の6月8日に1~3月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。今年2022年の1~3月期には、海外への所得移転による交易条件の悪化を主因に、1次QEの成長率はマイナス成長でした。まあ、メディアでは、まん延防止等重点措置が3月21日に解除されるまで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大のために行動制限が広がっていたことに原因を求める論調がいっぱいでしたが、私はこういった議論には疑問を持っています。ということで、多くのシンクタンクでは、2次QEに向けて小幅な改定が予想されています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、2次QEですので、法人企業統計のオマケで取り上げているシンクタンクも少なくありません。明示的に4~6月期以降の見通しに言及しているのは、みずほリサーチ&テクノロジーズだけであり、極めて詳細な需要項目別などの見通しを明らかにしていますが、いろいろな事情があって、以下のテーブルでは一部省略して最初のパートだけをピックアップしてあります。詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | ▲0.2% (▲1.0%) | n.a. |
日本総研 | ▲0.3% (▲1.4%) | 1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が減少に転じるほか、公共投資も下方改定される見込み。その結果、成長率は前期比年率▲1.4%(前期比▲0.3%)と、1次QE(前期比年率▲1.0%、前期比▲0.2%)から小幅に下方改定される見込み。 |
大和総研 | ▲0.2% (▲0.8%) | 1-3月期GDP2次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP 成長率が前期比年率▲0.8%と、1次速報(同▲1.0%)から僅かに上方修正されると予想する。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲0.2% (▲1.0%) | 4~6月期は、経済活動制限の解除、ブースター接種の進展や経口治療薬の普及に伴い、対人サービス消費を中心に経済活動の回復が見込まれる。コロナ禍で高所得者を中心に積みあがった貯蓄も消費原資となるだろう。現時点では、4~6月期は年率+3%台半ば程度のプラス成長を予測している。 4月中旬まで新規感染者数が地方を中心に増加傾向で推移したことを受けて消費行動が慎重化し、人出(全国の小売・娯楽モビリティ)は4月に入りいったん回復傾向が一服した。しかし、その後新規感染者数の増勢鈍化に伴い、人出は再び回復に向かった。GWの人出は、東北や北陸など地方で昨年末を上回る水準まで急回復した一方、東京など都市圏の回復は緩慢であったように地域差がみられたが、全国でみれば昨年末の水準まで回復した。足元で新規感染者数は緩やかに減少しており、GW後の感染拡大は一時的なものにとどまったようだ。政府による観光支援策についても、都道府県独自の「県民割」の広域ブロック化に続き、早ければ6月にもGoToトラベル事業の再開が見込まれ、対人サービス消費は回復に向かうとみてよいだろう。 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.3% (▲1.1%) | 6/8公表予定の22年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.3%(前期比年率▲1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲1.0%)とほぼ変わらないだろう。 |
第一生命経済研 | ▲0.3% (▲1.3%) | 2022年1-3月期実質GDP(2次速報)を前期比年率▲1.3%(前期比▲0.3%)と、1次速報の前期比年率▲1.0%(前期比▲0.2%)から若干下方修正されると予想する。 |
伊藤忠総研 | ▲0.2% (▲0.9%) | 1~3月期の実質GDP成長率は2次速報で前期比▲0.2%(年率▲0.9%)とほぼ1次速報から変化ない見通し。設備投資が下方修正される一方で民間在庫投資は上方修正される見込み。景気の基調判断も変わらず、2021年度中は一進一退が続き停滞との評価。労働分配率が史上最低水準で推移しており今後の賃金上昇に期待。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.3% (▲1.4%) | 2022年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.3%(前期比年率換算-1.4%)と1次速報値の同-0.2%(同-1.0%)から下方に修正される見込みである。修正幅は小幅であり、景気に対しての判断が修正されることはない。 |
三菱総研 | ▲0.1% (▲0.5%) | 2022年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.1%(年率▲0.5%)と、1次速報値(同▲0.2%(年率▲1.0%))から上方修正を予測する。 |
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比▲0.3%、前期比年率▲1.1%のマイナス成長が見込まれています。私は法人企業統計を見た際、1次QEの前期比▲0.2%、前期比年率▲1.0%ヨリ、ホンの少しだけ下方修正、という直感を持ちましたので、大雑把にそういったラインに乗っていると思います。基本的に、1~3月期の日本経済は海外への所得移転、すなわち、交易条件の悪化によりマイナス成長となった、と考えるべきです。しかしながら、おそらく、メディアでは、新型コロナウイルス(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大に伴うまん延防止等重点措置が「主因」とする論調ばかりだろうと、私は予想しています。たぶん、ひょっとしたら、あるいは、まさかと思いますが、どこかに、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に対する国民の怨嗟を煽りたい勢力の かもしれません。いずれにせよ、誤解したり、騙されたりしないように気をつけましょう!
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。
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