法人企業統計に見る企業収益は過去最高に迫り利益剰余金への課税の必要を考える!!!
本日、財務省から昨年1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+7.9%増の360兆7941億円、経常利益も+13.7%増の22兆8323億円、製造業・非製造業とも2ケタ増となっています。そして、設備投資は+3.0%増の14兆9040億円を記録しています。季節調整済みの系列で見ても、売上高、経常利益、設備投資とも軒並み前期比プラスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+3.4%増となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。
1-3月期の設備投資、前年同期比3.0%増 法人企業統計
財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資額は前年同期比3.0%増の14兆9040億円だった。プラスは4四半期連続。このうち製造業は5.9%増、非製造業は1.6%増だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額(金融業、保険業を含む)は、前年同期比で4.5%増だった。
全産業の売上高は前年同期比7.9%増の360兆7941億円で、うち製造業が9.0%増、非製造業は7.5%増。経常利益は13.7%増の22兆8323億円で、うち製造業が18.4%増、非製造業は10.9%増だった。
今回の結果は、8日公表の1~3月期のGDP改定値に反映される。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

ということで、法人企業統計の結果について、今年2022年1月以降の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)オミクロン型変異株の感染拡大があったにもかかわらず、かなり堅調であったと考えるべきです。季節調整済みの系列で見て、売上は製造業・非製造業ともに増収であり、経常利益も製造業では増益でした。さすがに、非製造業はCOVID-19オミクロン型変異株の感染拡大により減益でしたが、製造業と合わせての経常利益はほぼ横ばいでした。上のグラフから明らかなように、売上高や設備投資は、いわゆるリーマン・ショック直前に記録した過去最高水準にまったく届いていませんが、経常利益だけはリーマン・ショック前の水準を十分に超えており、過去最高のレベルに匹敵するくらいの勢いであったことは確かです。ただし、ロシアによるウクライナ侵攻、さらに、資源高や円安振興も含めての物価高騰、半導体をはじめとする製造業の部品供給の制約、今日から解除されたとはいえ、中国におけるロックダウンの影響などなど、4~6月期以降の企業活動は引き続き下振れリスクの方が大きいと考えられます。なお、設備投資については、これも季節調整済みの系列で前期比+0.3%増を記録しています。

続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、人件費が長らく停滞する中で、経常利益はほぼほぼ過去最高水準に迫っています。ですから、この利益剰余金にも本格的に課税する必要性が高まっていると考えるべきです。
なお、本日の法人企業統計を受けて、来週6月8日に内閣府から1~3月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に下方修正されるであろうと考えていますが、大きな修正ではなかろうと予想しています。この2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。
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