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2022年6月 8日 (水)

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEから上方修正されるもマイナス成長にとどまる!!!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.1%、年率では▲0.5%と円安や資源高による交易条件の悪化などによりマイナス成長を記録していますが、先月公表された1次QEからはわずかながら上方改定されています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率0.5%減、1-3月改定値 消費回復で上方修正
内閣府が8日発表した2022年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.1%減、年率0.5%減だった。5月に公表した速報値(前期比0.2%減、年率1.0%減)から上方修正した。企業の設備投資や公共投資などが下振れしたものの、個人消費が回復した。
QUICKが事前にまとめた民間エコノミスト予測の中心値(年率1.1%減)を上回った。
GDPの半分以上を占める個人消費が前期比0.1%増と、微減としていた速報値からプラスに転じた。自動車販売など耐久財のマイナス幅は0.8%と、速報値(1.6%減)から縮小した。サービス向けの消費も携帯電話などの通信料が上振れし、マイナス幅が縮んだ。
財務省が1日に発表した法人企業統計などを在庫や設備投資に反映した。民間在庫変動のGDP押し上げ効果はプラス0.5ポイントと、速報値(プラス0.2ポイント)から上方修正した。自動車など輸送機械で仕掛かり品の在庫が増えたことが要因とみられる。
設備投資は前期比0.7%減で、速報値(0.5%増)から下振れした。自動車メーカーでの減少が響いた。速報段階より後に公表された統計でソフトウエア投資が想定より少なかったのも加味した。公共投資も3.9%減と、速報値(3.6%減)から下方修正した。
1~3月期の実質GDPは年換算の実額で538兆円となり、速報値(537兆円)から微増した。新型コロナウイルス禍前の19年10~12月期(541兆円)に近い。
21年度のGDPは2.2%増で、速報段階の2.1%増から上方修正した。設備投資は0.8%増と速報値(1.3%増)から下方修正したものの、個人消費や民間在庫変動が押し上げにつながった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2021/1-32021/4-62021/7-92021/10-122022/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.4+0.6▲0.8+1.0▲0.2▲0.1
民間消費▲0.8+0.7▲1.0+2.4▲0.0+0.1
民間住宅+1.0+1.0▲1.7▲1.1▲1.1▲1.2
民間設備+0.5+2.0▲2.4+0.1+0.5▲0.7
民間在庫 *(▲0.1)(+0.2)(+0.1)(▲0.1)(+0.2)(+0.5)
公的需要▲0.5▲0.1+0.0▲1.1▲0.2▲0.4
内需寄与度 *(▲0.5)(+0.9)(▲0.9)(+0.9)(+0.2)(+0.3)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.2)(+0.1)(+0.1)(▲0.4)(▲0.4)
輸出+2.6+2.8▲0.3+0.9+1.1+1.1
輸入+1.8+4.3▲0.8+0.3+3.4+3.3
国内総所得 (GDI)▲1.2+0.2▲1.6+0.4▲0.7▲0.6
国民総所得 (GNI)▲1.1+0.3▲1.6+0.5▲0.3▲0.2
名目GDP▲0.7+0.4▲1.1+0.3+0.1+0.2
雇用者報酬+1.1+0.2▲0.2+0.3▲0.4▲0.3
GDPデフレータ▲0.1▲1.1▲1.2▲1.3▲0.4▲0.5
内需デフレータ▲0.5+0.3+0.6+1.1+1.8+1.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち灰色の在庫のプラス寄与と黒の純輸出=外需のマイナス寄与が大きくなっています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは1次QEから下方修正されて前期比年率成長率が▲1.1%でしたが、実績は上方修正されての▲0.5%でしたので、やや上振れた印象です。しかも、テーブルに収録したように、インフレの影響とはいえ名目GDP成長率がプラスとなっています。実質所得の面から物価上昇により購買力が目減りしたことは確かですが、名目値で計測される売上などについては大きなマイナスではないのではないか、と私は考えています。消費はほぼほぼ前期2021年10~12月期から横ばいです。ただし、その他の内需項目である設備投資や住宅投資などは軒並み前期比マイナスですので、在庫が積み上がった影響を除いた内需寄与度はマイナスです。むしろ、外需によってマイナス成長となった印象です。輸入が大きく増加しているわけです。別の表現をすれば、資源高と円安による交易条件の悪化に起因するマイナス成長と考えるべきです。もっとも、メディアではストーリーとして一般受けしやすい「コロナによるまん延防止等重点措置のために消費が停滞」というミスリードな報道を続けているものも散見されます。さすがに、引用した日経新聞は「個人消費が回復」と明記していますが、読売新聞の記事では「コロナによるまん延防止等重点措置がケシカラン」といわんばかりのご意見を堅持しているようです。何らかの隠された意図があるのかもしれません。ただし、 内需についても在庫変動の寄与度がGDP成長率に対して+0.5%もあり、それでも内需寄与度が+0.3%にとどまっているわけですから、経済成長の姿としては決して望ましいものではないと私は受け止めています。他方で、足元の経済状況から考えて、4~6月期はある程度のプラス成長の可能性が高い、と考えるべきです。物価についてもう少し詳しく見ておくと、上のテーブルにある通り、GDPデフレータは低下している一方で、国内需要デフレータは上昇しています。すなわち、GDPの控除項目である輸入の価格上昇に起因するインフレですから、GDPデフレータは低下、輸入価格が国内に波及してホームメード・インフレとなって国内需要デフレータは上昇、となっているわけです。国内需要デフレータの上昇がインフレの生活実感に近いと私は受け止めています。

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最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャー公表されています。ヘッドラインを見ると、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+3.6ポイント上昇の54.0と改善し、先行き判断DIも+2.2ポイント上昇の52.5となっています。いつものグラフは上の通りです。

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