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2022年6月10日 (金)

世界銀行「世界経済見通し」Grobal Economic Prospects はスタグフレーションを予想しているのか?

今週火曜日の6月7日に、世界銀行から「世界経済見通し」Grobal Economic Prospects が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関の経済見通しとしては、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)、あるいは、アジア開発銀行(ADB)などの見通しほど注目されているわけではありませんが、私のこのブログはこういった国際機関のリポートに着目するのもひとつの特徴ですので、簡単に取り上げておきたいと思います。

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リポート p.4 からGDP成長率の総括表を引用すると上の通りです。右の2行が今年2022年1月時点での見通しからの乖離幅となっています。当然、1月時点ではロシアによるウクライナ侵攻が始まっていませんでしたので、すべてではないものの大雑把に、その影響が現れていると考えるべきです。世界経済の成長率も、先進国の成長率も、新興国・途上国の成長率も、今年2022年については同じように、1月時点での見通しから▲1.2%ポイントの下方修正となっていて、来年2023年についてもわずかながら下方修正が見込まれています。我が日本については、2022年▲0.7%ポイントの下方修正ですから、まだ影響は小さいのかもしれません。成長率以外では、下2行が石油価格とエネルギーを除く商品価格となっていて、ともに、2022年は大幅な価格上昇が見込まれています。
世銀のプレスリリースでは冒頭で、ロシアのウクライナ侵攻は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるダメージをさらに悪化させ、世界経済の減速を拡大させ、低成長とインフレ高騰が長引く可能性がある "Compounding the damage from the COVID-19 pandemic, the Russian invasion of Ukraine has magnified the slowdown in the global economy, which is entering what could become a protracted period of feeble growth and elevated inflation" と指摘しています。もちろん、インフレ高騰に呼応した金融引締めも、日本以外では米国をはじめとして、幅広く開始されており、経済成長が急減速する中でスタグフレーションのリスクが高まっています "Stagflation Risk Rises Amid Sharp Slowdown in Growth" ということになります。私が興味を引かれたのは、第1章の見通しの中で、Special Focus 1 として、Stagnation と題して分析が加えられた中に、1970年代の石油危機の際のインフレとの対比が行われています。石油危機の1970年代から40年を経て、現在では、先進国だけでなく途上国や新興国でも、中央銀行の金融政策をはじめとする安定化政策や構造改革が進んでおり、何とかインフレを管理できる体制が整っている、として、少なくとも決して悲観すべきではない、という論調でした。途上国に強い影響力を持つ世銀からのメッセージです。私も大いに同意します。

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目を国内のインフレに転じると、本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は先月4月統計の+9.8%からやや上昇幅が縮小して、今月の5月統計では+9.1%となっています。いつものグラフは上の通りであり、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をそれぞれプロットしています。色分けは判例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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