大幅増を記録した4月統計の機械受注に何が起こったのか?
本日、内閣府から4月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+10.8%増の9,630億円の大幅増となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、4月10.8%増 市場予測を大幅に上回る
内閣府が15日発表した2022年4月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く)は前月比10.8%増加した。増加は2カ月連続。伸び率はQUICKがまとめた市場予測の中央値(1.5%減)を大幅に上回った。
3月末に新型コロナウイルス感染対策のまん延防止等重点措置が解除され、需要回復への期待が高まり、企業の投資姿勢が回復した。オミクロン型の流行がピークだった1、2月に2カ月連続マイナスとなった反動も出た。
製造業は10.3%増、非製造業は8.9%増だった。ともに2カ月連続の増加だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲1.5%減の予想でしたし、レンジの上限でも+3.0%増でしたので、実績の+10.8%増は大きく上振れた印象です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に半ノッチ上方改定しています。今年に入って1~3月期のコア機械受注は前期比で▲3.6%減でしたし、4~6月期の見通しも▲8.1%減の2兆3,706億円と、さらに落ち込む予想であったのですが、実は、3月統計では+7.1%増でしたし、本日公表の4月統計ではさらに上昇率を高めて+10.8%増を記録しています。加えて、業種別にも、製造業が+10.3%増、非製造業も+8.9%増と、いずれも2ケタの伸びに近い数字を残しています。さらにさらにで、先行指標である外需も+52.1%増という高い伸びとなっています。
機械受注の4月統計で、いったい、何が起こっているのか、私自身が4月統計の「機械受注統計調査報告」と題する内閣府の詳細なリポートを見ても、詳細は判明しません。東京で働いていたころでエコノミスト仲間も多く、私自身もそれらしい活動をしていた際には、アチコチに連絡して情報を集めたのかもしれませんが、関西の片田舎に引っ込んだ身としては、なかなか情報収集もままならず、4月統計の機械受注の2ケタ増については、特に何か突飛なイベントがあったわけではないようだ、としか判りません。例えば、第一生命経済研のリポートでも、「4月は大型案件も無く、3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことで、企業が設備投資意欲を強めている」と分析していますし、大和総研のリポートでも、特に、製造業については、「基幹産業からの受注が軒並み増加」としています。ただ、1点だけ私が注目したのは、4月統計の前月比で石油製品・石炭製品が+119.8%増ともっとも大きな伸びを示しています。資源高でインフレ高進、とメディアで報じられ、価格抑制のために補助金を受けている業界で設備投資を大きく増やそうとしているわけです。もちろん、地球温暖化・気候変動の防止のための温室効果ガス排出抑制を目指す投資が、どのくらいを占めるのかは私には情報がありませんが、やや気にかかる結果であることは確かです。
最後に、機械受注や設備投資の先行きについては、引き続き、緩やかな増加を示すものと私は考えています。
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