3か月連続で+2%超の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.2%を記録しています。物価上昇は10か月連続です。7年ぶりの+2%超の物価上昇が4月から続いています。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+1.0%にとどまっています。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。
6月の消費者物価2.2%上昇 3カ月連続2%超え
総務省が22日発表した6月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が101.7となり、前年同月比2.2%上昇した。上昇は10カ月連続で、3カ月連続で2%を超えた。資源高によりエネルギー関連の上昇が続いた。小麦などの原材料価格が高止まりし、食料品も引き続き上昇した。エアコンなど家庭用耐久財も上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.4%、エネルギーと生鮮食品を除いた総合指数は1.0%、それぞれ上昇した。
長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.2%の予想でしたので、ジャストミートしました。基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきですが、もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀金融政策による需要面からの物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、6月統計におけるエネルギーの前年同月比上昇率は16.5%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.23%あります。この寄与度のうち、電気代がほぼほぼ半分の+0.62%ともっとも大きく、次いで、ガソリン代の+0.25%、都市ガス代の+0.20%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%、5月統計では+17.1%、そして、直近で利用可能な6月統計では+16.5%と、高止まりしつつも、ホンのちょっぴりながら上昇率は縮小しているように見えます。加えて、生鮮食品を除く食料の上昇率も4月統計+2.6%、5月統計+2.7%に続いて、6月も+3.2%の上昇を示しており、+0.72%の寄与となっています。
最後に、昨日のこのブログでも取り上げましたが、日銀は金融政策決定会合を開催し、「展望リポート」で2022年度のコアCPI上昇率が物価目標である+2%を超えると見込みながらも、金融政策の現状維持を決めています。票決を見る限り、さらに金融緩和をするべきという片岡委員の反対票があっただけで、金融引締めに転じるべきという反対票はなかったように報じられています。私は現時点ではこの政策判断は正しいと考えています。理由は主として2点あり、第1に+2%インフレはもともとの目標であり、第2にしかしこの目標達成はそれほど長続きしない、ということです。まず、従来から主張している通り、昨年暮れくらいまでのメディアでの日銀批判は主として「インフレ目標が達成されない」という点でした。しかし、実際にインフレ目標が達成されて、計測誤差の範囲で+0.1%ポイントとか、+0.2%ポイントくらい上振れたからといって批判されていたのでは、日銀当局も立つ瀬がありません。現時点で日銀を批判するのであれば、2013年に政府とアコードを結んだ当時の白川総裁に対してなされるべきであって、現在の黒田総裁は目標達成に邁進してきただけ、という見方も成り立ちます。まあ、コトはそれほど単純ではないのですが、そういう見方もできる、ということです。そして、何よりも、昨日のブログでも強調しておきましたが、日銀はもちろんのこと、多くのエコノミストは現在の物価高はそれほど長続きしない、と考えています。どうしてかというと、資源高はいかにもロシアのウクライナ侵攻によってもたらされたように見えますが、その背景としては、大幅な金融緩和により通貨供給が増加している一方で、通常のフローの財の価格はそれほど上昇せず、ストックの資産価格が上昇するという形の経済に変化してきているため、石油や穀物などの商品価格上昇は地政学的要因も否定しないものの、根本的には、通貨供給の増加という金融政策によってもたらされている、と考えるべきです。ですから、もはや小国に近くなった日本が金融引締めに転じなくても、ドル通貨の米国やユーロ通貨の欧州の金融引締めが資産価格としての石油や穀物などの商品価格の引下げに影響するのを待つ、という手もあろうかと思います。ウクライナ危機が続いていたとしても、欧米での金融引締めによって商品価格の上昇がストップする可能性が十分ある、と私は考えています。もちろん、それも程度問題であり、現状のインフレが+2%を少々上回るくらい、円安がまだまだ140円を挟んだ動き、という段階でのお話であることは事実です。インフレが欧米のように+10%のフタ桁に近づいたり、円安が150円を大きく突破して200円に近づいたりすれば、何らかの政策対応が必要、という意見が大きく強まるであろう点には同意します。
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