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2022年7月26日 (火)

+2%に達した企業向けサービス価格指数(SPPI)について考える!!!

本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+2.0%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.2%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業向けサービス価格、2%上昇 20年2月以来
日銀が26日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は106.9と、前年同月比で2.0%上昇した。伸び率が2%台となるのは20年2月以来2年4カ月ぶり。16カ月連続のプラスとなり上昇幅は5月(1.9%)から拡大した。燃料費の高騰や円安が影響し運輸・郵便が全体を押し上げた。
運輸・郵便のほか、宿泊サービスや情報通信なども上昇した。宿泊サービスは新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き人出が回復したことが影響した。情報通信では、IT(情報技術)人材の需給逼迫を背景に人件費の上昇がみられた。日銀は資源高や国内の需要増加がサービス価格を押し上げているとした上で、「技術者などを中心に人件費の上昇がサービス価格に転嫁される動きもみられている」と述べた。
調査の対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目、下落は19品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年4月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+1.0%の上昇となった後、本日公表された今年2022年6月統計まで15か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、直近で利用可能な6月統計ではとうとう+2%に乗せました。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大もあります。もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく6月統計のヘッドライン上昇率+2.0%への寄与度で見ると、石油価格の影響が強い運輸・郵便が+0.84%、土木建築サービスや宿泊サービスなどの諸サービスが+0.53%、リース・レンタルが+0.20%、景気に敏感なインターネット広告やテレビ広告をはじめとする広告が+0.15%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便は+5.3%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、人材系や金融系の需要が拡大したインターネット広告をはじめとする広告の+3.1%、金融・保険の+2.5%の上昇などは、需要の盛り上がりによるデマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。

こういった物価の動きを背景に、現在、中央最低賃金審議会では最低賃金に関する議論が進められています。同時に、「骨太の方針」とも略称される「経済財政運営と改革の基本方針2022」はすでに6月7日に閣議決定されていますが、「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引上げに取り組む。」(p.6)とされています。果たして、現在の岸田内閣の進める「新しい資本主義」はどちらに進むのでしょうか?

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