引き続き堅調な米国雇用統計の先行きを考える!!!
日本時間の今夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の6月統計では+372千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.6%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を5パラだけ引用すると以下の通りです。
June jobs report shows strong gain of 372,000. Unemployment unchanged at 3.6% as the economy slows.
Employers added 372,000 jobs in June as the sizzling labor market shrugged off a slowing economy, high inflation and rising interest rates.
The unemployment rate held at 3.6% for the fourth straight month, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that about 270,000 jobs were added last month.
Payroll gains for April and May were revised down by a total of 74,000, revealing a modestly softer job market than believed.
As a result, employment growth moderated to a still-robust average of 383,000 jobs a month in the spring from about 600,000 the prior three months as the nation drew closer to recovering all 22 million jobs lost in the pandemic. It has now recouped 21.5 million, or 97.6%, and could reclaim the rest in the next couple of months.
コンパクトによく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。
米国の雇用は、非農業部門雇用者数から見ても、失業率から見ても、引き続き堅調と考えるべきです。しかし、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が極めて急速な利上げを実行していますので、ひとまず、景気には急ブレーキがかかっています。このままリセッションまで突き進むことを危惧する見方も少なくないようです。特に、いくつかの報道を見る限り、一部の新興テクノロジー企業ではレイオフが始まっており、半導体などの供給制約に直面している自動車産業も同様の模様です。一方で、人手不足に起因する労働需要は旺盛であり、レイオフされたところで直ぐに職が見つかる、とも報じられています。人手不足のひとつの要因は、労働市場への再参入の動きの鈍さです。すなわち、女性や高齢者などの縁辺労働力では、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって職を離れた後、そのまま非労働力化するケースがめずらしくないといわれています。通常、米国に限らず日本などでも、こういった縁辺労働力は景気の悪化とともに労働市場を離れるものの、景気が回復し求人が増加すれば再び労働市場に参入する、と考えられていたのですが、COVID-19後の労働市場のニューノーマルは少し違うようです。したがって、金融政策でインフレを抑制するためには、さらなる強力な引締めが必要とされる可能性があります。ひょっとしたら、このまま米国経済がリセッションに陥るのかもしれません。
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