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2022年7月29日 (金)

大きくリバウンドした鉱工業生産指数(IIP)と減速する商業販売統計と底堅い雇用統計と基調判断が下方修正された消費者態度指数!!!

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+8.9%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.5%増の12兆4800億円でしたが、季節調整済み指数では前月から▲1.4%減を記録しています。続いて、失業率は前月から横ばいの2.6%を記録し、有効求人倍率は前月を+0.03ポイント上回って1.27倍に達しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産指数8.9%上げ 3カ月ぶり上昇
経済産業省が29日発表した6月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は95.8となり、前月比8.9%上がった。上昇は3カ月ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国・上海市での都市封鎖(ロックダウン)が解除され、生産が回復した。
自動車工業、電気・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業などが上昇した。生産の基調判断は「弱含み」から「生産は一進一退」に引き上げた。
同日発表した4~6月の指数は前期比2.8%マイナスの93.0だった。
6月の小売販売額、1.5%増
経済産業省が29日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.5%増の12兆4800億円だった。増加は4カ月連続。季節調整済みの前月比は1.4%減だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計が1.9%増の1兆6731億円だった。既存店ベースでは1.3%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は4.2%増の1兆142億円だった。
有効求人倍率6カ月連続上昇 6月1.27倍、失業率は横ばい
厚生労働省が29日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.27倍と前月に比べて0.03ポイント上昇した。6カ月連続で前月を上回った。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の水準には届いていない。総務省が同日発表した完全失業率は2.6%で前月と同率だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。コロナ感染が広がり始めた後の底だった2020年秋の1.04倍からは持ち直しの傾向が続いているが、拡大が本格化する前の20年1月は1.49倍に達しており、まだ開きがある。
景気の先行指標とされる新規求人数は前月比1.7%減り、新規求人倍率は2.24倍と前月から0.03ポイント下がった。コロナの感染拡大が本格化する前の20年2月に並ぶ水準には達している。業種別では観光需要の持ち直しを見込んだ宿泊、飲食サービスの伸びが特に大きい。
完全失業率は20年8月から21年1月にかけて3%台に達することが多かったが、その後は2%台が続いている。就業者数は6759万人と前年同月比で21万人増えた。増加は3カ月連続。正規の職員・従業員が3602万人と5万人減ったが、非正規は2105万人で18万人増えた。

まあ、どうしても、数多くの統計を取り上げていますので長くなってしまいます。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月と比べて+3.7%の増産という予想でしたが、実績の+8.9%増は予想レンジの上限である+7.2%増を超えていて、かなり大きな増産だと私は受け止めています。ただし、引用した記事にもある通り、増産の主因は海外需要の回復、特に、上海のロックダウン解除に起因するペントアップであると考えるべきであり、逆に、現時点の足元で新型コロナウィルス感染症(COVI D-19)の新規感染者数が大きく増加しているわけですので、どこまでサステイナブルな回復かは不透明です。また、先行きに関しては、引用した記事にもある通り、製造工業生産予測指数によれば7月の増産も+3.8%増産が見込まれているのですが、経済産業省では上方バイアスを除去すると補正値では▲0.9%の減産との試算を出しています。足元は原産の可能性があるとはいえ、6月統計では大きく増産に転じたわけですし、何よりも、産業別に生産の増加への寄与度を見ると、自動車工業+1.88%、電気・情報通信機械工業+0.87%、電子部品・デバイス工業+0.81%などと我が国のリーディング・インダストリーが並んでいますので、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「弱含み」から「一進一退」に引き上げています。ただし、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、ウクライナ危機も相まって外需の動向が懸念されます。もっとも、かつての1950-60年代の高度成長期には、「米国がくしゃみをすれば日本が風邪をひく」といわれたくらい米国頼み、外需依存の強い経済でしたが、、今では、外需の依存先は中国になっているのかもしれません。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。ということで、上海のロックダウン解除などを受けて生産が回復を示している一方で、小売販売額は新型コロナウィルス感染症(COVI D-19)の新規感染が大きく増加している中で、前年同月比増加率のプラス幅は4~5月の+3%台から減速し、季節調整済みの系列では4か月ぶりに前月比マイナスを記録しています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、6月までのトレンドで、この3か月後方移動平均が+0.1%と何とかプラスを維持しており、基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、物販よりも飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。加えて、燃料小売業の販売額は前年同月比で+11.5%増なのですが、かなりの部分は物価上昇に基づいていると考えられ、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。この2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計のバイアスを考慮する必要が十分あります。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下の2.5%と見込まれ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、有効求人倍率も前月から0.01ポイント改善の2.5%と見込まれていました。実績では、失業率は前月から横ばいで、有効求人倍率は市場予想より改善しています。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。例えば、1月から3月にかけては、季節調整していない原系列の休業者数の前年同月差が、3か月連続で増加していましたが、4~6月には3か月連続で休業者数は前年から減少しています。引用した記事の最後にあるように、正規雇用が減少する一方で非正規雇用が増加している、というのは事実であり、非正規雇用の増加に関しては、いろいろな見方があるでしょうが、ジワジワと雇用の裾野が広がっているという見方もできると私は受け止めています。

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それから、本日、内閣府から7月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲1.9ポイント低下して30.2を記録しています。指数を構成する4指標のうち、「雇用環境」が▲3.1ポイント上昇し34.3と、特に大きく前月から低下しています。ほかの3指標も前月から低下しています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断を「下げ止まりの動き」から「弱含んでいる」に下方修正しています。消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

最後の最後に、本日、内閣府から本年度の「経済財政白書」が閣議に提出されています。まだ、詳細は不明なのですが、日経新聞のサイトでは、「物価上昇の裾野広く、脱デフレ『賃上げ重要』 経財白書」と題して、物価動向、需要の動き、生産性に比較して賃金の伸びが低い、などが報じられています。何かの機会があれば、このブログでも取り上げたいと思います。

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