7月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除いて+2.4%に達する!!!
本日、総務省統計局から7月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.4%を記録しています。7年ぶりの+2%超の物価上昇が4月から4か月連続で続いています。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+1.2%にとどまっています。まず、ものすごく長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。
電気代や食パン上昇続く 7月消費者物価2.4%プラス
総務省が19日発表した7月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が102.2となり、前年同月比2.4%上昇した。消費増税の影響があった2014年12月(2.5%)以来、7年7カ月ぶりの上昇率で、4カ月連続で2%台となった。資源高や円安でエネルギーと食料品の上昇が続いている。
QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(2.4%)と同水準だった。上昇は11カ月連続となった。生鮮食品を含む総合指数は2.6%、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.2%それぞれ上昇した。
生鮮を除く総合の522品目のうち、上昇した品目は376、変化なしが45、低下が101だった。上昇品目は前月の365から増えた。
物価を押し上げたのは電気代などのエネルギーだ。上昇率は16.2%と、6月(16.5%)に引き続き2桁の伸びだった。エネルギーだけで総合指数を1.22ポイント押し上げた。
電気代は19.6%、都市ガス代は24.3%上昇し、ともに6月より伸び率が大きくなった。ガソリンの上昇率は8.3%で、原油価格の下落をうけて6月(12.2%)から伸びが鈍った。
食料は4.4%伸びた。6月の3.7%からインフレが加速した。生鮮食品は8.3%(6月は6.5%)上昇し、生鮮食品を除く食料でも3.7%(同3.2%)と、前月より伸びが拡大した。
食パンは12.6%、チョコレートは8.0%上昇した。メーカーが相次ぎ値上げする食用油は40.3%伸びた。たまねぎは71.2%、ウクライナ危機で輸送ルートの変更を余儀なくされたさけは21.9%、輸入品の牛肉は12.5%と、生活に身近な食品で物価上昇が続いている。
中国の都市封鎖(ロックダウン)による供給網(サプライチェーン)の混乱の影響もあって6月に7.5%上昇した家庭用耐久財は、7月は4.9%の上昇率だった。ただ、ルームエアコンは10.1%、一部メーカーが7月に値上げした携帯電話機は14.7%上昇するなど、原料高や輸送費の増大、円安が響く。
日本経済研究センターが10日にまとめた民間エコノミスト34人の予測平均では、消費者物価上昇率は、四半期ベースで22年7~9月期が2.28%、10~12月期が2.39%だ。年明けまで2%台で推移し、1%台に戻るのは23年4~6月期と予測する。
他の主要国では米国が7月に8.5%と、9.1%だった6月から低下したが、日本に比べればなお高水準にある。ユーロ圏は7月に8.9%と、6月(8.6%)からインフレが加速した。英国は7月に10.1%と2桁にのせ、1982年以来、約40年ぶりの水準に達した。
やたらと長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.4%の予想でしたので、ジャストミートしました。基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきですが、もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀金融政策による需要面からの物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、7月統計におけるエネルギーの前年同月比上昇率は16.2%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.22%あります。このエネルギーの寄与度+1.22%のうち、電気代が半分超の+0.68%ともっとも大きく、次いで、都市ガス代の+0.23%、ガソリン代の+0.18%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、4月統計では+19.1%、5月統計では+17.1%、6月統計では+16.5%、そして、直近で利用可能な7月統計では+16.2%と、高止まりしつつも、ビミョーに上昇率は縮小しているように見えます。加えて、生鮮食品を除く食料の上昇率も4月統計+2.6%、5月統計+2.7%、6月統計+3.2%に続いて、7月も+3.7%の上昇を示しており、+0.83%の寄与となっています。

物価目標について考えると、私は現在の+2%台くらいの物価上昇であれば、日銀のインフレ目標から大きな乖離がないわけですし、メディアでの物価上昇に関する批判的な論調はやや行き過ぎと考えています。引用した記事の最後のパラにも、英国ではインフレがとうとう2ケタ+10%に達した旨が報じられいるのも事実です。つい半年ほど前まで、黒田総裁以下の日銀は「インフレ目標が達成できない」という理由でメディアから批判されていましたが、コアCPI上昇率が+2%に達した現在では「物価上昇が大きすぎる」という理由で批判されているように見えます。こういったメディアの批判を強く考慮し過ぎると、日銀は金融政策運営の方向性を失いかねません。その意味で、私はメディアの報道リテラシーを強く疑っています。ですから、メディアの日銀批判の片棒をかつぐ気はまったくないのですが、ただ、国民一般から物価上昇がCPIの数字以上に大きく感じられている点について考えます。ひとつは、あまりに強いデフレ・マインドです。「物価は上がらない」という強い認識がまだまだ残っているわけで、実際にエネルギーや食料が値上げされると、ものすごく強いインパクトを感じてしまう可能性があります。もうひとつは、物価上昇は当然ながら一様ではないわけで、上のグラフは基礎的・選択的支出別と購入頻度別の消費者物価上昇率の推移をプロットしていますが、実に、最近時点では、基礎的支出品目のほうが選択的支出よりも上昇率が高くなっており、同時に、頻度で見ても月1回未満しか購入しない品目よりも月1回以上の品目で大きな値上がりを見せています。必要性高く、購入頻度も高い品目の価格上昇率が大きい訳で、いわゆる総合CPIよりも、生活実感としての物価上昇が大きく感じられる結果となっています。必ずしも同一ではありませんが、生活必需品に近い基礎的支出品目の7月の上昇率が+4.5%に達しているのに対して、選択的支出品目では+0.7%にしか過ぎません。また、月1回以上の頻度高く購入する品目の値上がりが+4.9%であるのに対して、月1回未満しか購入しない品目は+2.5%となっています。国民生活において必要性高く、しょっちゅう買い求める品目で値上がりが大きいわけですので、生活実感としては日銀の物価目標となっているコアCPIの+2.4%上昇よりも過大評価してしまうのは、仕方のないところかもしれません。
最後に、今後の物価見通しについて、今週月曜日の4-6月期GDP統計速報1次QEを受けたシンクタンクの経済通しを、そう系統的でなくパラパラと見ている限り、例えば、日本総研のリポートやニッセイ基礎研のリポートなどでは、あくまで四半期ベースながら、今年後半にかけてでコアCPI上昇率が高まる可能性があり、ひょっとしたら、月次統計では+3%に達する可能性も否定できないながら、来年2023年半ばからコアCPI上昇率は再び+2%を下回る可能性が強く示唆されています。私も同じ方向性で日本経済を見ています。ただし、ウクライナ危機とか、コロナとか、経済外要因、さらに、海外経済の動向も含めて、不透明感はまだまだ大きいといわざるを得ません。
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