2か月連続で+2%を超えた7月の企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率をどう見るか?
本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.4%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、7月2.1%上昇 2カ月連続で2%台
日銀が25日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.3と、前年同月比2.1%上昇した。指数は2001年3月以来、21年4カ月ぶりの高水準。上昇幅は6月から横ばいで、17カ月連続のプラスとなった。業種別では広告が上昇に寄与した。昨年は東京五輪中継の裏番組でテレビ広告収入の落ち込みがみられたため、その反動で押し上げられた。
リース・レンタルや不動産も上昇した。リースは対象となる物件価格の上昇が影響。不動産では賃料が売り上げに連動する店舗賃貸が、感染症の影響緩和を背景とした店舗の堅調な売り上げによって上昇した。日銀は足元の感染症再拡大に関しては「7月については大きな影響は聞かれなかった」という。
運輸・郵便は4.8%上昇した。これまでプラス幅を拡大してきたが、7月は燃料価格の下落などからプラス幅が縮小した。
調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目、下落したのは19品目だった。
コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年3月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+0.7%の上昇となった後、2021年4月には+1.1%に上昇率が高まり、本日公表された今年2022年7月統計まで、17か月連続の前年同期比プラス、16か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、6月統計からはとうとう+2%に乗せました。最新の7月統計でも6月と同じ+2.1%の上昇率となっています。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大もあります。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく7月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、石油価格の影響が強い運輸・郵便が+0.77%、土木建築サービスや宿泊サービスなどの諸サービスが+0.57%、リース・レンタルが+0.26%、景気に敏感なやテレビ広告インターネット広告をはじめとする広告が+0.26%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+4.8%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、景気に敏感な広告の+5.4%、リース・レンタルの+3.5%の上昇などは、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。
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