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2022年8月17日 (水)

貿易赤字続く7月の貿易統計と持ち直しの動き続く6月の機械受注をどう見るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が、また、内閣府から6月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計では、季節調整していない原系列で見て、輸出額が+19.0%増の8兆7528億円、輸入額は+47.2%増の10兆1895億円、差引き貿易収支は▲1兆4367億円の赤字となり、12か月連続で貿易赤字を計上しています。機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.9%増の9170億円となっています。まず、各統計のヘッドラインについて、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易赤字7月最大の1兆4367億円 資源高で12カ月連続
財務省が17日発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4367億円の赤字だった。赤字額は7月としては最大だった。エネルギー価格の高騰や円安で輸入額は前年同月比47.2%増の10兆1895億円で、5カ月連続で過去最大を更新した。輸出額は19.0%増の8兆7528億円で過去最大だった。貿易赤字は12カ月連続となる。
6月の機械受注、前月比0.9%増 市場予想は1.3%増
内閣府が17日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比0.9%増の9170億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.3%増だった。
製造業は5.4%増、非製造業は0.0%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は6.5%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
同時に発表した4~6月期の四半期ベースでは前期比8.1%増だった。7~9月期は前期比1.8%減の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▱.4兆円を超える貿易赤字が見込まれていましたので、実績の▲1兆3838億円の貿易赤字は、まあ、こんなもんという受止めです。季節調整していない原系列の統計で見て、昨年2021年8月から直近の貿易統計が利用可能な今年2022年7月までの12か月連続の貿易赤字なのですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は昨年2021年4月から始まっていて、従って、1年を超えて16か月連続となります。しかも、貿易赤字額がだんだんと拡大しているのが見て取れます。これも、グラフから明らかな通り、輸出額もそこそこ伸びているのですが、輸入が輸出を上回って拡大しているのが貿易赤字の原因です。もっとも、私の主張は従来から変わりなく、エネルギーや資源価格の上昇に伴う輸入額の増加に起因する貿易赤字であり、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字は悲観する必要はない、と考えています。
6月の貿易統計を品目別に少し詳しく見ると、すべて季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見て、輸出では自動車の輸出が金額ベースで+13.7%増を記録しています。ただし、台数に基づく数量ベースで▲5.5%減となっており、為替の円安で円建ての販売単価が上昇していることがうかがえます。短期には、売上の増加が見込める一方で、より長い期間で考えれば価格上昇は競争力の低下につながる恐れもあります。ほかに我が国の主力輸出品の中で金額ベースと数量ベースが比較できる品目を見ると、半導体等電子部品のうちのICでも自動車と同じ傾向が見られ、金額ベースでは+24.8%増と伸びましたが、数量ベースでは▲7.0%減となっていますし、電算機類(含周辺機器)も金額ベースで+19.8%増ながら、数量ベースでは▲19.6%減を記録しています。ほかにも、一般機械のうちの原動機など、金額ベースでは伸びている一方で、数量ベースでは減少している輸出品がいくつかあります。輸入では、まず、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油の輸入額が大きく増加しています。これも前年同月比で見て数量ベースでは+3.8%増にとどまっている一方で、金額ベースで+107.3%増と倍増以上に大きく価格水準の上昇で水増しされます。ほかの化石燃料については、液化天然ガス(LNG)も数量ベースでは▲0.4%減と減少しているものの、金額ベースでは+124.1%増と、お支払いの方は倍増しています。加えて、ワクチンを含む医薬品も増加しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+36.3%増を記録しています。でも、当然ながら、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は少数派ではないかと私は考えています。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+1.5%増の予想でした。もっとも、上で引用した記事のタイトルが「市場予想は1.3%増」となっていて、私は少し理解が及びませんでした。いずれにせよ、実績の+0.9%増はやや下振れた印象あるものの、増加という符号は変わりありませんので、まあ、想定の範囲内というところです。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。ただし、先行きの機械受注については、やや解釈しがたい統計が出ていたりもします。すなわち、日銀短観や日本政策投資銀行の設備投資計画などを見る限り、本年度2022年度は設備投資が大きく伸びる結果が示されており、従って、機械受注も増加するハズと考えられるのですが、直近の4~6月期のコア機械受注が前期比で+8.1%増の高い伸びの実績を示した一方で、足元の7~9月期の見通しは逆に▲1.8%減となっており、この足元での機械受注の減少が一時的な停滞なのか、どうなのか、現時点での判断が難しいところです。

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