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2022年8月 5日 (金)

米国雇用統計に見る雇用拡大はどこまで続くのか?

日本時間の今夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の7月統計では+528千人増となり、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下の3.5%を記録しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を7パラ引用すると以下の通りです。

Economy adds 528,000 jobs in July as hiring surges despite high inflation. US recovers all jobs lost in COVID.
U.S. employers added a booming 528,000 jobs in July as the labor market now has recovered all 22 million jobs lost in the pandemic and continued to defy soaring inflation, rising interest rates and a slowing economy.
The unemployment rate fell from 3.6% to 3.5%, matching a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 250,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Inflation hit a 40-year high of 9.1% in June, keeping the Federal Reserve on course to aggressively raise interest rates. The higher prices and borrowing costs have led consumers and businesses to slow spending and stoked recession fears.
Friday's blockbuster report all but assures the Fed will hike its key rate by three-quarters of a percentage for a third straight meeting and could even consider a full percentage point move. Besides the blockbuster payroll gains, average hourly earnings rose 15 cents to $32.27, pushing the annual gain from 5.1% to 5.2%.
But the labor market has shrugged off the turmoil, adding an average of about 380,000 jobs a month from March through June. Amid persistent pandemic-related worker shortages, companies have been hesitant to let workers go and continued to add staffers to meet the demands of a reopening economy.
Last week, however, initial jobless claims, a gauge of layoffs, rose to the highest level since November based on a four-week moving average. Tech giants such as Oracle, Amazon, Netflix and Robinhood have all announced significant job cuts recently.

コンパクトによく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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米国の雇用は、非農業部門雇用者数から見ても、失業率から見ても、引き続き堅調と考えるべきです。しかし、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が極めて急速な利上げを実行していますので、ひとまず、景気には急ブレーキがかかりつつあり、このままリセッションまで突き進むことを危惧する見方も少なくないようです。特に、引用した記事の3番めのパラにあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+250千人程度の雇用増との見通しだったのですが、実績はその2倍を超えて528千人増ですから、現時点では、雇用統計には金融引締めの効果はまだ現れていません。ただし、個別には雇用動向に変化が見られることも確かで、引用した記事の7番目の最後のパラにあるように、新規失業保険申請件数が増加に転じており、加えて、個別企業のトピックとしては、大手IT企業など、すなわち、、オラクル、アマゾン、ネットフリックス、ロビンフッド・マーケッツなどが雇用削減に踏み切ることを明らかにしています。

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労働需要がタイトですから、引用した記事の5番目のパラにあるように、時間当たり賃金上昇率も+5%を超えて高まっています。上のグラフは、米国における時間当たり賃金と消費者物価のそれぞれの前年同期比上昇率をプロットしています。米国では消費者物価指数(CPI)は労働省が作成していて、直近で利用可能な最新月は時間当たり賃金が7月、消費者物価指数は6月で1か月のズレがあります。見れば明らかな通り、賃金上昇率と消費者物価上昇率の間でそれほど強い相関が見られるわけではないのですが、消費者物価上昇率は米国では2ケタ近くに迫っていて、日本とは大きく状況が異なっています。ただ、石油価格がかなり低下してきていますので、現在の物価上昇が今後も長く続くと考えるエコノミストは少数派と考えるべきです。例えば、私は石油価格は指標となるWTI先物については、Bloombergのサイトでチェックしているのですが、本日の段階ではすでにバレル当たり90ドルを下回っており、一時は120ドルを超えていた水準から下がって来ていて、ロシアのウクライナ進行が始まる前の2月末時点で90ドルであったことを考え合わせると、特に高価格と考えるかどうかは見方が分かれると思います。

私自身は米国経済はこのまま景気後退=リセッションに進む可能性が高い、と考えていますが、日本経済は中国の動向の影響の方が強くなっていることから、米国のリセッションからデカップリングされる可能性はまだ残されていると期待しています。ただ、中国はゼロ・コロナ政策ですので、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大次第、という面はあります。

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