4-6月期GDP統計速報1次QEの予想は年率+3%くらいの高成長か?
先月末の鉱工業生産指数(IIP)や商業販売統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明週月曜日の8月15日に4~6月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。今年2022年の1~3月期には、まん延防止等重点措置が3月下旬に解除されるまで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大のために行動制限が残っていましたので、1~3月期の成長率はマイナス成長でした。従って、4~6月期にはリバウンドによるプラス成長が予想されています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の7~9月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。以下のテーブルの下の方の三菱系2機関を除いて、さすがに、多くのシンクタンクが7~9月期以降の見通しに言及しています。その中でも特に、大和総研とみずほリサーチ&テクノロジーズが詳細であり、私の方でも意識的に長々と引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.9% (+3.6%) | 7~9月期を展望すると、プラス成長が続く見通し。足元で感染者数が再び増加に転じているものの、人出の落ち込みは限定的であり、個人消費は緩やかに回復する見込み。企業収益が高水準で推移するほか、供給制約の緩和により生産が回復する製造業を中心に設備投資も増勢を維持する見込み。 |
大和総研 | +0.6% (+2.4%) | 2022年7-9月期の日本経済は、感染が再拡大する中でも行動制限が回避されるとの想定の下、サービス消費を中心に個人消費の回復が継続するだろう。輸出や設備投資に加え、政府消費も増加することで、メインシナリオでは実質GDPは高めのプラス成長(前期比年率+6.8%)になると見込んでいる。ただし、厳しい外部環境の中で新規感染者数が急増しており、下振れリスクは大きい。 個人消費は、経済活動の正常化が進む中で2四半期連続の増加が見込まれる。サービス消費や、家電を中心に耐久財消費が増加しよう。小売店・娯楽施設の人出は夏休みの国内旅行需要の回復もあって8、9月にかけて増加するとみている。 なお、自動車生産は7-9月期に増加すると見込んでいるものの、小幅な増加に留まるだろう。トヨタ自動車は半導体不足や仕入先での感染者の発生を受けて、7月と8月の国内生産台数を年初の計画から引き下げた。少なくとも夏場はこうした供給制約が継続するとみられ、7-9月期にペントアップ(繰越)需要に対応した大幅な挽回生産は期待しにくい。 住宅投資は緩やかな増加傾向が続こう。引き続き、住宅価格の上昇は住宅投資の重しとなるものの、住宅ローン減税の制度変更に伴う反動減が一巡することで持ち直すとみられる。 設備投資は増加傾向が続くだろう。機械設備への投資は緩やかに増加するとみている。機械設備投資に先行する機械受注は均して見ると増加傾向にある。ただし、米欧中央銀行の利上げや中国での「ゼロコロナ政策」による世界経済の減速懸念などに加え、感染再拡大の影響で、足元では先行き不透明感が強まっており、企業の投資意欲に影響を及ぼす可能性がある。他方、グリーン化、デジタル化に関連したソフトウェア投資や研究・開発投資は底堅く推移するとみられ、設備投資全体を下支えしよう。 公共投資は、緩やかな回復が続くだろう。前述した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えするものの、人手不足や資材価格の高騰が影響することで、回復ペースは緩やかなものとなろう。政府消費は、医療費の増加により回復傾向が続こう。 輸出は緩やかながら増加基調に転じるとみている。中国では経済活動の正常化が進むことで部品調達難の緩和が進み、自動車輸出などが持ち直すだろう。他方、米国では財消費が鈍化し、欧州ではウクライナ危機に関連してエネルギーの供給難に直面している。米欧の景気後退懸念が強まる中、当該地域向けの輸出に与える影響を注視する必要がある。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.5% (+2.1%) | 7~9月期については、感染第7波を受けて消費行動が慎重化し、対人サービスを中心に個人消費の回復が再び足踏みするとみられる。 7月に入り全国的に感染者数が急増し、1日当たりの新規感染者数は第6波ピークを大幅に超過している。政府は現時点で行動制限には否定的な立場であるが、日本全国でみた小売・娯楽モビリティは7月に回復が一服しており、ワクチン未接種者や子育て世帯(ワクチンを接種していない子どもと同居する親)、重症化した場合の死亡リスクが相対的に高い高齢者を中心に自主的に外出を自粛する動きが広がっているとみられる。 欧州主要国は感染急増から概ね1カ月程度でピークアウトしていることを踏まえると、日本の感染ピークは8月初旬頃になる可能性が高い。また、ワクチン普及や治療薬の活用等を受けて、日本の新型コロナ死亡率は第6波で0.1%台まで低下し、季節性インフルエンザの死亡率に接近している。入院者数・重症者数の増勢も緩やかであり、行動制限を伴う強い感染対策を実施するハードルは政治的にも高い状況となっていることを踏まえれば、まん延防止等重点措置のような行動制限が広い範囲で再度実施される可能性は小さい。感染増に伴う行動慎重化で7~8月にかけて人出は減少するとみられるが、1~2月の第6波ほどの落ち込みには至らないだろう(ただし、政府による行動制限がない中で、感染ピークアウト後も感染者数が高止まる可能性がある。新規感染者数の3割強が10代以下である点を踏まえると、若年者の3回目ワクチン接種率の引き上げが、医療ひっ迫回避に向けた課題となるだろう)。 物価高は引き続き個人消費の回復の阻害要因になる見込みだが、コロナ禍で積み上がった超過貯蓄(コロナ禍前(2019年)対比でみた家計貯蓄の増分は50兆円超)が消費の原資となり物価高の影響をある程度和らげることが期待できることから、個人消費が大きく腰折れするまでには至らないだろう。ただし、超過貯蓄の大半は高所得者層が蓄積しており、貯蓄が増えておらずバッファーが薄い低所得者層は物価高が消費抑制につながりやすい。生活必需品以外の支出削減を余儀なくされる状況が続き、個人消費を下押しするであろう。 個人消費が足踏みする一方、上海のロックダウンの影響が和らいだことで生産・輸出がプラスで推移するほか、設備投資や公共投資も引き続き増加が見込まれる。4~6月期の押し下げ要因となった自動車生産(半導体不足や中国ロックダウンの影響がなかった場合と比べて▲2割弱の減産となり、4~6月期のGDPを▲0.9%押し下げたと試算)については、中国のロックダウンによる影響が緩和される一方、ゼロコロナ政策の継続による中国経済の回復ペースの鈍さや半導体等の供給制約などを受けて、回復ペースは緩やかになる(ばん回生産は限定的)とみている。 以上を踏まえ、現時点で7~9月期は年率+2%台半ば程度のプラス成長を予測している。 |
ニッセイ基礎研 | +0.8% (+3.2%) | 7月に入ってから新型コロナウイルスの新規陽性者数は急増しているが、政府は今のところ特別な行動制限を課していない。物価高による家計の実質購買力低下が下押し要因となるものの、行動制限がなければ消費性向の引き上げによって個人消費の回復基調は維持されるだろう。米国をはじめとして海外経済が減速しているため、輸出が景気の牽引役となることは当面期待できないが、民間消費を中心とした国内需要の増加を主因として7-9月期もプラス成長となることが予想される。 |
第一生命経済研 | +0.7% (+3.0%) | 先行きについては、新型コロナウイルスの感染急拡大、物価上昇による実質購買力の抑制、海外景気の減速等、懸念材料が山積みであり、とても楽観できる状況にはない。特に海外景気については要警戒であり、急ピッチで進められている金融引き締めの悪影響が今後本格化することで、世界経済の減速感が今後一段と強まることは避けられないだろう。世界経済がリセッションの瀬戸際に立たされるなか、日本が無傷でいられるはずもない。次第に日本の輸出にも相応の悪影響が及ぶとみられ、景気は下押しされる可能性が高い。世界経済の下振れ幅如何では、日本が景気後退に陥る可能性も否定できないだろう。 |
伊藤忠総研 | +0.4% (+1.8%) | 続く7~9月期も、個人消費の持ち直しや設備投資の拡大が続くことで前期比プラス成長を維持し、経済活動の水準はようやくコロナ前を回復すると予想する。しかしながら、コロナ感染再拡大へ政府の対応のほか、ウクライナ情勢、欧米中銀の金融政策に対する市場の混乱、利上げが続く欧米景気の先行き、中国の再ロックダウンリスク、米中対立激化など、不透明要因は多数。夏場の個人消費や企業の投資マインド、輸出の動きが想定通りとなるか予断を許さない状況。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.8% (+3.4%) | 2022年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.8%(年率換算+3.4%)とプラス成長に転じたと予想される。オミクロン株の感染が収束したことで対面型サービスを中心に個人消費が順調に増加したことが全体を押し上げた。また、公共投資が前期比プラスに転じたことや、輸入の落ち込みによって外需寄与度がプラスとなったことも影響した。 |
三菱総研 | +0.7% (+2.8%) | 2022年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.7%(年率+2.8%)と2四半期ぶりのプラス成長を予測する。 |
ということで、4~6月期の成長率はプラスに転じて、しかも、1~3月期の前期比▲0.1%、前期比年率▲0.5%を上回る高成長と、ほぼほぼすべてのシンクタンクで見方が一致しています。大雑把に、前期比で+1%近く、前期比年率であれば+3%程度の成長率を見込んでいるシンクタンクが多いようです。他方で、私が興味ある足元の7~9月期については、引き続き2四半期連続でプラス成長が見込まれている一方で、楽観的な見通しと悲観的な見通しに分かれているように見受けられます。まず、消費については、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴って、政府や地方公共団体による行動制限が実施されるかどうか、あるいは、公的な行動制限なしでも消費者が自主的な外出手控えなどを実施するかどうか、さらに、消費に影響を及ぼす大きな要因として現在の物価上昇の動向がどうなるか、というあたりで見方が分かれます。もうひとつは輸出、というか、外需の動向です。中国のゼロ・コロナ政策や米国や欧州でのインフレ封じ込めのための金融引締めによる景気への影響についての見方も少し違いがあるようです。当然、消費と輸出=外需の動向の組合せもありますし、先行きは不透明なところです。ただし、どちらかというと、内需の消費よりも外需の方が影響力が大きそうで、従って、外需次第で日本経済もリセッションに陥る可能性が高まるのはいうまでもありません。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。
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