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2022年8月31日 (水)

2か月連続の増産となった鉱工業生産指数(IIP)と名目で増加の続く商業販売統計と小幅に改善した消費者態度指数を考える!!!

本日は月末ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.0%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.4%増の13兆380億円でした。季節調整済み指数では前月から+0.8%増を記録しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、7月1.0%上昇 基調判断は据え置き
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は97.1となり、前月比1.0%上がった。上昇は2カ月連続。自動車工業や汎用・業務用機械工業、生産用機械工業などが上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国・上海市での都市封鎖が6月に解除され、生産の回復が続いた。
QUICKが事前にまとめた民間エコノミスト予測の中心値は前月比0.5%低下だった。6月は中国のロックダウン解除を受け、9.2%増と大幅に上昇していた。「生産は一進一退」との基調判断を据え置いた。
小売販売額、7月2.4%増 増加は5カ月連続
経済産業省が31日発表した7月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.4%増の13兆380億円だった。増加は5カ月連続。季節調整済みの前月比は0.8%増だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計が3.3%増の1兆7703億円だった。既存店ベースでは2.8%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.4%増の1兆844億円だった。

いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は前月と比べて▲0.5%の減産という予想でしたが、実績の+1.0%増は予想レンジの上限である+2.0%増を超えないとはいえ、増産と減産の符号が違いますので、それなりの結果だと私は受け止めています。ただし、引用した記事にもある通り、増産の主因は海外要因に起因します。経済産業省の解説サイトでは「部材供給不足の影響が緩和」による上昇と明記しています。特に、6月からの上海のロックダウン解除に起因するペントアップであると考えるべきであり、どこまでサステイナブルな回復かは不透明です。ですので、統計作成官庁である経済産業省でも基調判断を「一進一退」で据え置いています。また、先行きに関しては、製造工業生産予測指数によれば8月の増産も+5.5%増産が見込まれているのですが、上方バイアスを除去すると補正値では▲0.6%の減産との試算を経済産業省で出しています。足元の8月は減産の可能性があるとはいえ、6~7月統計では2か月連続で増産に転じたわけですし、7月統計から産業別に生産の増加への寄与度を見ると見ると、自動車工業+1.69%、汎用・業務用機械工業+0.64%、生産用機械工業+0.55%などと我が国のリーディング・インダストリーが並んでいます。他方で、電子部品・デバイス工業が大きく減産していますし、加えて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の新規感染拡大はやや落ち着きつつあるとはいえ、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、ウクライナ危機も相まって外需の動向が懸念されます。COVID-19感染拡大の国内要因とこれら海外要因を考えると、生産の先行きは不透明といわざるを得ません。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。ということで、上海のロックダウン解除などを受けて生産が回復を示している一方で、小売販売額は新型コロナウィルス感染症(COVI D-19)の新規感染が大きく増加している中で、前年同月比増加率のプラス幅は4~5月の+3%台からやや減速し、季節調整済みの系列では+1%を下回る伸びにとどまっています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、7月までのトレンドで、この3か月後方移動平均が0.0%の横ばいで、基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。特に、後者のインフレの影響については、7月の消費者物価指数(CPI)のヘッドライン前年同月比上昇率は+2.6%に達しており、名目の小売業販売額の+2.4%増を上回っています。繰り返しになりますが、商業販売統計の小売業販売額はサービスを含まないので、単純にCPIでデフレートするのは適当ではありませんが、それでも、実質の小売業販売額はマイナスである可能性は十分あると考えるべきです。

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それから、本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。前月から+2.3ポイント上昇し32.5を記録しています。指数を構成する4指標すべてが上昇を示していますが、「雇用環境」が+2.8ポイント上昇し37.1と、特に大きく前月から上昇しています。続いて、「暮らし向き」が+2.7ポイント上昇の31.1となり、ほかの2指標も前月から上昇しています。ただし、統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。私は、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と受け止めています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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