物価高による倒産は増えているのか?
やや旧聞に属するトピックなのですが、8月8日付けで帝国データバンクから「『物価高倒産』動向調査」の結果が明らかにされています。広く報道されているように、国際商品市況における石油価格の高騰に加えて、ウッド・ショックとも呼ばれた木材価格の上昇もあって、資源価格が大きな上昇を示しています。この資源高に基づく物価高に起因する倒産が、2022年は7月までに116件、うち、7月だけで31件に上っています。リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから 物価高倒産 月別発生件数推移 を引用しています。調査開始の2018年1月から、今年2022年7月までに判明した「物価高倒産」は累計558件、大雑把に物価高倒産は年間100件ほどであり、年間の最大倒産件数も昨年2021年の138件でしたが、今年2022年は7月までですでに116件、うち、7月だけで31件ですから、足元の8月中にも昨年の138件を上回る可能性があります。なお、帝国データバンクでは「物価高倒産」を法的整理=倒産となった企業のうち、原油や燃料、原材料などの仕入れ価格の上昇、あるいは、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった値上げ難などにより、収益が維持できずに倒産した企業、と定義しています。価格転嫁の難しい中小企業での倒産が多く、2022年の物価高倒産116件の約8割が負債5億円未満の中小企業が占めています。
まず、上のグラフはリポートから 物価高倒産 業種別 を引用しています。上のパネルにあるように、2022年の116件を業種別にみると、燃料高の影響が大きい運輸業の33件がトップで、全体の約3割を占め、以下、木材・資材高の余波を受けた建設業の27件、卸売業の18件の順となっています。また、下のパネルの業種詳細別にみると、運輸業の33件に続いて、総合工事の16件、このほか、小麦や油脂の世界的な価格上昇の影響が大きい飲食料品製造の11件、飲食料品卸売の9件、飲食料品小売の6件などとなっています。
繰り返しになりますが、価格交渉力の弱い中小企業の倒産が占める割合が高くなっています。最低賃金も引き上げられたことですし、政府の適切な中小企業支援が必要です。大企業の石油元売りに補助金を出して過去最高益にアシストするのではなく、こういった中小企業こそきめ細かな支援を届けるべきではないでしょうか?
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