« 内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2022」やいかに? | トップページ | 米国雇用統計に見る雇用拡大はどこまで続くのか? »

2022年8月 5日 (金)

6月の景気動向指数は上昇を示し景気判断は「拡大」で据え置き!!!

本日、内閣府から6月の景気動向指数公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数が前月から▲0.6ポイント下降の100.6を示した一方で、CI一致指数は+4.1ポイント上昇の99.0を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

6月の景気一致指数、4.1ポイント上昇 基調判断は据え置き
内閣府が5日発表した6月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比4.1ポイント上昇の99.0となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は3.5ポイント上昇だった。数カ月後の景気を示す先行指数は0.6ポイント低下の100.6だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

ということで、6月統計についてCI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、プラスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数+1.03ポイント、鉱工業用生産財出荷指数+0.89ポイント、生産指数(鉱工業)+0.88ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.64ポイント、などとなっています。他方、マイナス寄与は労働投入量指数(調査産業計)と商業販売額(小売業)(前年同月比)だけであり、ともに寄与度は▲0.01となっています。引用した記事にもあるように、基調判断は「改善」で据え置かれています。景気動向については、中国のゼロコロナ政策による上海のロックダウンなどにより輸出が停滞してCI一致指数は5月統計ではこの影響で出荷や生産がマイナスに転じました。しかし、輸出は中国でのロックダウンが6月から解除されたことにより回復に転じ、6月段階では、というか、現在でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の国内新規感染者数の拡大による行動制限を伴う措置が取られているわけではありません。ですから、私自身は国内のインフレや円安の景気への影響については楽観的です。もっとも、先行きの景気について考えると、ウクライナ危機は長引きそうだと報じられていますし、欧米をはじめとする各国ではインフレ対応のために金融政策が引締めに転じていて、先週公表された国際通貨基金(IMF)の「経済見通し改定版」World Economic Outlook Update では、"measures of economic uncertainty and concerns regarding an oncoming recession have increased in recent months. Estimates of the probability of recession have also increased." と評価しており、世界経済は景気後退の瀬戸際にある、というのも事実です。こういった下振れリスクが大きい点は、明確に先行指数に現れており、決して忘れるべきではありません。

最後に、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+3.3ポイントの上昇とされていましたが、実績では+4.1ポイントの上昇でした。景気動向指数については、内閣府のサイトで極めて明確に作成方法が公開されており、実は、私も毎年1本の紀要論文をこの夏休みに書こうとしており、この景気動向指数の作成方法についても取り上げる予定なのですが、どうして計算間違いが起こるのか、謎です。

|

« 内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2022」やいかに? | トップページ | 米国雇用統計に見る雇用拡大はどこまで続くのか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書 2022」やいかに? | トップページ | 米国雇用統計に見る雇用拡大はどこまで続くのか? »