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2022年8月22日 (月)

心理学や行動経済学に関する疑問やいかに?

最近のnoteで科学としての心理学や行動経済学に関して、「心理学・行動経済学等の著名な研究論文が次々に追試失敗」と題するサイトを見かけました。主として、心理学の再現性なのですが、心理学にシロートの私でも知っているようなマシュマロ・テストとか、スタンフォード監獄実験も再現性がないとの研究成果が明らかにされています。その原因は、あからさまな捏造ではないとしても、疑わしい研究慣習(QRPs: questionable research practices)とされています。カーネマン教授は "A new etiquette for replication" と題した論文で注意を喚起していたりします。まあ、再現性に関しては、例のSTAP細胞に関する記憶がまだ私の頭には残っています。
従来から、私はいわゆる行動経済学や経済心理学については、やや複雑で一部に疑問を持っていたりします。例えば、ツベルスキー-カーネマンのプロスペクト理論などについては、文句なしに経済心理学の研究上の大きな成果であると受け止めている一方で、ナッジによってマイクロな経済行動、あるいは、何らかの選択に影響を及ぼそうとする行動科学については、倫理的な意味で疑問を感じています。商業的に、利潤最大化行動を取る企業がマーケティングによって自社製品の売上を伸ばそうという行動は、まあ、当然である一方で、個人の効用最大化行動に介入して、貯蓄促進くらいならともかく、臓器提供を進めようとする、それも、製薬会社から研究費を得て、そういった行動経済学の研究を進めることが適当かどうかについては、議論あるところではないか、と考えています。私が従来から考えている倫理的な疑問に加えて科学としての再現性に関する疑問も持ち上がっているわけです。

医学はともかく、開発経済学におけるランダム化比較試験(RCT)についても、同じような見方ができると私は考えています。かなり古いんですが、The Guardian紙の記事 "Buzzwords and tortuous impact studies won't fix a broken aid system" も同様に、RCTではマイクロな課題しか判断できない、との多くのエコノミストからの批判を収録しています。心理学や行動経済学は、もともと、いわゆる Hard Science ではない、という意見も無視できないものの、また、私はここまで高度な研究手法には関係薄いとはいえ、研究者の端くれとして心しておきたいとおもいます。

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