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2022年9月13日 (火)

1980年以来の高インフレの続く企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から8月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+8.6%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業物価8月9.0%上昇、18カ月連続前年超え 円安が拍車
日銀が13日発表した8月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は115.1と、前年同月比9.0%上昇した。前年の水準を上回るのは18カ月連続。上昇率は7月から横ばいで、1980年12月以来の高い伸びが続く。外国為替市場で円安が続き、物価高に拍車をかけている。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う供給制約への懸念から原材料価格も高止まりしている。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。8月の指数は調査を開始した60年以降で最も高かった。上昇率は民間予測の中央値である8.9%を0.1ポイント上回った。7月の上昇率は8月発表時点の8.6%から9.0%に上方修正された。
品目別にみると、鉄鋼(26.1%)や石油・石炭製品(15.6%)、金属製品(12.3%)などの上昇が目立つ。飲食料品(5.6%)など消費者に近い商品も値上げが続く。公表している515品目のうち、上昇したのは8割にあたる431品目だった。ウクライナ危機の長期化に伴って資源価格の高騰を製品価格に転嫁する動きが広がっている。
円安の影響も続いている。8月の外為市場では円相場が一時1ドル=139円台まで下落した。円ベースの輸入物価の上昇率は42.5%と、ドルなど契約通貨ベースの21.7%を大幅に上回った。円ベースの輸出物価の上昇率は17.0%、契約通貨ベースでは3.5%だった。
円ベースの輸入品目では、石油・石炭・天然ガスが前年の2.1倍となり、木材・木製品・林産物が38.1%、飲食料品・食料用農水産物が27.9%上昇した。日本は輸入契約通貨の75%程度がドルなどの外貨建てとなっており、円安は円ベースの輸入物価上昇を通じて企業物価を押し上げる要因になる。
円相場は9月に一時1ドル=144円台まで下落し、8月からさらに円安が加速している。利上げを進める米国と大規模緩和を続ける日本の金融政策の違いを背景に金利が高いドルにマネーが流れ込んでいる。米連邦準備理事会(FRB)はインフレ対応でさらなる利上げを見込み、円安が企業物価を押し上げる構図が続きそうだ。
政府・日銀は急速な円安に警戒感を強めている。8日には財務省と金融庁、日銀が3者会合を開き、9日には日銀の黒田東彦総裁が岸田文雄首相と会談した。円安や資源高を受け、7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は2.4%上昇した。賃金の伸びが物価上昇に追いつかず、家計の実質所得への下押し圧力が強まっている。

とてつもなく長くなりましたが、いつもの通り、包括的に取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+8.9%と見込まれていましたので、実績の+9.0%はやや上振れしたとはいえ、ほぼコンセンサスの範囲かという気がします。PPI上昇の要因は主として2点あり、とりあえずの現象面では、コストプッシュが大きな要因となっています。すなわち、第1に、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格の上昇、さらに、第2に、ディマンドプルの要因も含みつつ、為替レートが減価している円安要因です。また、少し前までの我が国製造業のサプライチェーンにおける半導体などの供給制約については、私も詳しくないのですが、報道では見かけなくなりましたので、後景に退いている気がします。品目別には、引用した記事の3パラめにあるように、鉄鋼+26.1%、木材・木製品+20.2%、石油・石炭製品+15.6%、金属製品+12.3%、化学製品+10.5%、非鉄金属+10.4%などとなっています。ただし、これらは国内物価における品目の動きであり、焦点のひとつとなっている原油について円建ての輸入物価で見ると、4月+88.5%、5月+93.3%、6月+104.5%、7月+99.0%、8月+85.9%と、ほぼ昨年から2倍の価格となっています。私はこの方面に詳しくないので、シンクタンクなどのリポートを見る限り、今年2022年3月上旬には、一時、バレル当たり120ドルを超えていたWTI原油先物価格が、9月上旬には80ドル台後半まで低下しており、日本総研の「原油市場展望」では「高値圏でボラタイルな展開」と分析し、また、みずほ証券「マーケット・フォーカス(商品:原油)」では「当面の原油価格の下値めどは1バレル=80ドル前後」と指摘しています。ご参考まで。石油などの商品市況の先行きは私には判りませんし、為替相場の予想はもっと理解不能です。悪しからず。

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また、本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業の景況判断BSIのグラフは上の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。
そのヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元7~9月期が+0.4と3四半期ぶりにプラスを記録し、続く10~12月期は+6.4、来年2023年1~3月期も+4.7と回復が続く見通しとなっています。見れば判る通り、2020年以降の企業マインドの動きは、ほぼほぼ新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大と並行して動いているような気がします。ですから、足元7~9月期の大企業BSIの+0.4にしても、大企業製造業が+1.7であるのに対して、大企業非製造業はまだ▲0.2とマイナスから脱してはいません。また、私が気にしている今年2022年度の設備投資計画は、何と、+16.2%増となっています。2004年の調査開始以来の最高だそうです。製造業で+26.3%増、非製造業でも+11.2%増となっています。ちょっとびっくり?

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