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2022年9月21日 (水)

帝国データバンク「企業の価格転嫁の動向アンケート」の結果やいかに?

先週木曜日の9月15日に帝国データバンクから「企業の価格転嫁の動向アンケート」の結果が明らかにされています。100円のコストアップに対して36.6円しか価格転嫁できていない、との結果が示されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の要旨3点を引用すると以下の通りです。
調査結果
  1. 自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金に『多少なりとも転嫁できている』企業は70.6%となった。一方で、『全く価格転嫁できていない』企業は18.1%だった
  2. 「価格転嫁率 」は36.6%と4割未満にとどまった。これはコストが100円上昇した場合に36.6円しか販売価格に反映できていないことを示している。なかでも、「ソフト受託開発」などを含む「情報サービス」や「一般貨物自動車運送」などを含む「運輸・倉庫」の価格転嫁率が低水準にとどまっている
  3. これまでの政府の物価高騰対策について、「大いに効果を実感している」が0.7%、「ある程度効果を実感している」が11.1%となった。一方で、「あまり効果を実感していない」は38.9%、「ほとんど効果を実感していない」は34.3%だった
ということで、リポートからいくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
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まず、リポートから 価格転嫁の状況 のグラフを引用すると上の通りです。見れば判るように、「多少なりとも価格転嫁できている」企業は70%であった一方で、「全く価格転嫁できていない」企業は18%となっています。ただし、価格転嫁率が36.6%であることに現れているように、「多少なりとも価格転嫁できている」企業70%のうち、5割未満がほぼ40%に達しています。また、価格転嫁率が高い業種として、建材・家具、窯業・土石製品卸売、機械・器具卸売が50%を超えている一方で、運輸・倉庫(一般貨物自動車運送など)や情報サービス(ソフト受託開発などと情報サービス(ソフト受託開発など)では20%を下回っていたりします。
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続いて、リポートから 政府の物価高騰対策の効果 を引用すると上の通りです。これも見れば判る通り、「大いに効果を実感している」が0.7%、「ある程度効果を実感している」が11.1%にとどまっている一方で、「あまり効果を実感していない」が38.9%、「ほとんど効果を実感していない」も34.3%に上っています。企業の73.2%で「(あまり/ほとんど)効果を実感していない」という結果が示されています。 価格転嫁については、単純に独占とかマークアップとか、と考えるのは適当ではないと私は考えていますが、逆から見れば、日本経済は独占度が高くない、という見方もできなくはない、という気もします。そして、市場の価格メカニズムに応じた資源配分が、もしも効率的であるのであれば、現在のインフレに対応して、政府が企業に対していかなる経済政策を取るべきかは、補助金による価格操作ではなく、コストアップや価格転嫁できない部分に対する支援であろうと私は考えています。
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最後に、それほど注目はしていないのですが、アジア開発銀行(ADB)は「アジア開発見通し改定」Asian Development Outlook (ADO) 2022 Updateを本日9月21日に公表しています。プレスリリースのプレゼン資料から成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。今年2022年のアジア新興国・途上国の4月時点の+5.2%から+4.3%に下方修正されています。主因は中国であり、4月時点の+5.0%から+3.3%と大きく下方修正しています。他方、東南アジアではインドネシアやフィリピンについては今年の成長率を上方改定していたりします。国際機関の経済見通しについては、10月10日に予定されているIMF世銀総会に合わせてIMFから「世界経済見通し」が明らかにされると思いますので、改めて注目したいと思います。

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