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2022年10月 7日 (金)

3か月連続の上昇となった8月の景気動向指数と過熱感残る米国雇用統計をどう見るか?

本日、内閣府から8月の景気動向指数公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数が前月から+2.0ポイント上昇の100.9を示し、CI一致指数も+1.6ポイント上昇の101.7を記録しています。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月の景気動向指数 3年3カ月ぶり高水準
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)の速報値は、足元の経済動向を示す一致指数が前月比1.6ポイント高い101.7だった。改善は3カ月連続。19年5月(101.9)以来、3年3カ月ぶりの高い水準となった。中国・上海市の都市封鎖(ロックダウン)が6月に解除されて以降、半導体製造装置の生産などで回復が続く。
内閣府は指数をもとに機械的に作成する景気の基調判断を「改善を示している」のまま据え置いた。7カ月連続同じ判断とした。
一致指数を構成する10項目のうち集計済みの8項目をみると、7項目が上昇、1項目が下落要因となった。半導体製造装置などの生産がプラスに寄与し、卸売業の販売額も伸びた。
2~3カ月後の景気を示す先行指数は前月比2.0ポイント上がって100.9となった。4カ月ぶりに上昇した。新型コロナウイルス禍で行動制限がない夏となり、消費者態度指数が3カ月ぶりにプラスに寄与した。今後は足元で進む円安や、原材料高などが下振れリスクになる可能性がある。

いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、8月統計のCI一致指数については、3か月連続の上昇ながら、景気の山だった2018年10月統計は105.3に比べて、まだまだこの水準には達しません。景気動向指数CI一致指数は景気のボリューム感も表現しているハズですので、こういった比較は十分意味があります。ということで、CI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、プラスの寄与が大きい順に、有効求人倍率(除学卒)+0.46ポイント、生産指数(鉱工業)+0.42ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.41ポイント、商業販売額(卸売業)(前年同月比)+0.33ポイントなどとなっています。他方、マイナス寄与は、トレンド成分の労働投入量指数(調査産業計)を別にすれば、輸出数量指数▲0.29ポイントだけとなっています。CI一致指数の3か月後方移動平均、7か月後方移動平均はともにプラスであり、引用した記事にもある通り、基調判断は「改善」で据え置かれています。
景気の先行きについては、国内のインフレや円安の景気への影響については楽観的に私は見ています。例えば、CI先行指数は3か月ぶりに前月から上昇しました。もっとも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大は何とも見通せませんし、円安も1ドル140円を突破してどこまで進むのかは不透明です。加えて、海外要因についても、欧米をはじめとする各国ではインフレ対応のために金融政策が引締めに転じていて、米国をはじめとして先進国では景気後退に向かっている可能性が十分あります。ですから、全体としては、リスクは下方に厚い可能性を否定するのは難しい気がします。

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目を米国に転じると、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の7月統計では+263千人増となり、失業率は前月から▲0.2%ポイント低下の3.5%を記録しています。いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。
ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加がまだ+200千人をかなり超えているわけですし、失業率も3%台半ばですので、人手不足は落ち着きつつあるものの、労働市場の過熱感はまだ残っていると考えるべきです。もちろん、インフレ高進に対応して連邦準備制度理事会(FED)が極めて急速な利上げを実行していますので、ひとまず、景気には急ブレーキがかかりつつあり、このままリセッションまで突き進むことを危惧する見方も少なくないようです。なお、USA Todayのサイトで報じられているように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+250千人程度の雇用増との見通しだったので、実績はほぼほぼジャストミートしたといえます。それだけに、FEDは金融引締を継続するでしょうから、米国経済はこのまま景気後退=リセッションに進む可能性が高い、と私自身は考えています。ただし、他方で、日本経済は米国よりも中国経済の影響の方が強くなっていることから、米国のリセッションからデカップリングされる可能性はまだ残されていると期待しています。ただ、中国はゼロ・コロナ政策ですので、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大次第、という面はあります。

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