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2022年10月15日 (土)

今週の読書は金融危機に関する経済書のほか計4冊!!!

今週の読書感想文は以下の通り、日銀前副総裁による金融危機対応の経済書のほか、ミステリが2冊と新書の計4冊です。
なお、今年の新刊書読書は、1~3月期に50冊、4~6月期に56冊、従って、今年前半の1~6月に106冊、そして、7~9月の夏休みに66冊、10月に入って先週までで10冊、今週が4冊ですので、今年に入ってから186冊となりました。まもなく200冊に達することと思います。

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まず、中曽宏『最後の防衛線』(日本経済新聞出版)です。著者は、日銀前副総裁であり、現在は大和総研理事長です。エコノミストというよりは、金融危機対応の中央銀行実務家という印象で、本書もそういった視点から書かれています。ということで、本書でも指摘されている通り、金融政策の大きな特徴として、私も大学で教えているように、金融政策とは市中の民間金融機関、主として銀行に働きかけるわけですから、市場が正常に機能していて、金融機関が経済合理的に反応してくれることが前提条件となります。財政政策はそうではありません。すなわち、政府支出や徴税やで直接に家計や企業といった経済主体の購買力を操作することが出来ます。でも、金融政策は市場における通常の経済合理的な反応が必要ですので、金融危機に陥っては正常な効果を期待できなくなるおそれがあるわけです。その意味で、本書で具体的に取り上げられているのは1997-98年の日本国内の金融危機、すなわち、三洋証券、山一證券、拓銀、長銀、日債銀などの破綻、さらに、2008年のリーマン証券の破綻です。特に前者については、著者が最前線で活躍してたようですので、とてもリアルに描写されています。リーマン・ショックに際しても、その直前に担当者にドルオペのフィージビリティ調査を命じたりしていたのはやや驚きましたが、まあ、自慢話の類かもしれません。加えて、1997-98年の金融危機の際には、「日本発の世界金融危機」とならないように腐心した一方で、リーマン・ショックに関しては、そういった観点があったのかどうか疑問を呈しています。そして、直後のAIGの救済に関してはリーマン証券破綻の影響に驚いて方針変更した可能性すら示唆しています。まあ、ややアサッテの批判かもしれません。さらに、本書でも自ら指摘しているように、日銀は金融危機に際しても、もちろん、通常の「平時」でも、金融緩和に消極的な中央銀行とみなされていて、特に、1990年代初頭のバブル崩壊、さらに、1997-98年の金融危機の際の日銀の危機対応は世界から中央銀行の失敗例とされているのも事実です。ですから、著者が、失敗の典型と世界から指摘されつつも、「現場でがんばっていたのだ」といくら主張したところで、少なくとも私は共感は覚えませんでした。不首尾に終わって、なお「よくがんばった」と誉められるのは高校生までであり、いい年齢に達した公務員や中央銀行員が結果を無視して、「ボクたち、がんばったもんね」と、自らに評価を下すのは、やや見苦しい気がします。

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次に、東川篤哉『スクイッド荘の殺人』(光文社)です。著者は、『謎解きはディナーのあとで』などのヒット作のあるユーモア・ミステリ作家です。そして、この作品も烏賊川市シリーズ最新作であり、出版社の宣伝文句によれば、シリーズの中では13年ぶりの長編作品だそうです。烏賊川市シリーズですから、探偵事務所署長の鵜飼杜夫と調査員の戸村流平が主人公となります。ただ、探偵事務所の入居しているビルオーナーの二宮朱美はほとんど、あるいは、まったく登場しません。スミマセン。私は読み飛ばしていますので、詳細不明です。なお、烏賊川警察署の砂川警部と志木刑事も登場しますが、ほぼほぼ謎解きの終わった最終盤での登場となります。ということで、本作品では、閑古鳥が鳴きまくってヒマヒマしている鵜飼探偵事務所に久しぶりに依頼人が訪れます。しかも、烏賊川市のパチ・スロやボウリング場などの遊戯施設を運営する有力企業の社長が依頼人だったりします。依頼内容は、脅迫状が来たのでクリスマスの旅行にボディガードとして同行するよう、ということです。そのクリスマスを過ごす宿泊施設がタイトルのスクイッド荘なわけです。ロケーションとしては、烏賊川市のゲソ岬の断崖絶壁にあり、しかも、クリスマスのシーズンですので大雪が降って孤立します。ミステリによくあるクローズド・サークルなわけです。謎解きはかなり複雑で本格的なのですが、動機がかなり薄弱だったりします。この作者らしく、ユーモアたっぷりのミステリなのですが、謎解きは本格的でかなり複雑です。この作者の、あるいは、特に烏賊川市シリーズのファンであれば、是非とも押さえておくべき1冊です。

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次に、シヴォーン・ダウド『ロンドン・アイの謎』(東京創元社)です。著者は、ロンドン生まれの英国の作家です。2007年に乳癌のため47歳で亡くなっています。英語の原題は The London Eye Mistery であり、2007年の出版ですが、その出版年に作者は亡くなっているわけです。本書はジュブナイル向けのミステリなのですが、かなり本格的です。ということで、ロンドンに住む12歳のテッドが主人公です。ご本人は「症候群」と称しているのですが、現在でいえば自閉スペクトラム症、当時の表現ではアスペルガー症候群ではなかろうかと推測されます。サヴァンに近いのかもしれません。両親と姉のカット(カトリーナ)と4人家族でロンドンで暮らしています。タイトルの「ロンドン・アイ」とは、大きな観覧車であり、30分で1周します。テッドの母親の妹、テッドからすれば叔母に当たるグロリアがその息子のサリムとともに、テッドの家を訪れます。マンチェスターに住んでいたグロリアとサリムはニューヨークに引越す途中にロンドンに立ち寄るわけです。そして、子供3人、すなわち、テッドとカットとサリムがその観覧車のロンドン・アイに乗りに行きます。チケット売り場に並んでいると、無精髭の男からチケットが余っているからと11時30分のチケットを1枚だけ無料でわけてもらいます。そして、サリムが1人でロンドン・アイに乗ることになるわけですが、観覧車が30分かけて回っている間にサリムが消えます。下りて来ないわけです。その謎をテッドが解き明かします。とっても本格的な謎解きです。決して、ジュブナイル小説と軽く考えて読むのはオススメできません。

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最後に、都留康『お酒はこれからどうなるか』(平凡社新書)です。著者は、一橋大学の名誉教授であり、したがって、というか、何というか、経済学者です。ですから、本書は酒作りの醸造技術なども、もちろん、取り上げていますが、主として経済学的な観点から「酒」に取り組んでいます。なお、同じ著者の前著に『お酒の経済学』(中公新書)というのがあるのですが、不勉強にして未読です。ということで、前半の第1章から4章までがお酒の種類別に、日本酒、ワイン、梅酒、ジンという順で国内における製造の歴史や消費・普及を跡づけ、後半の第5章から9章ではもっとお酒に関する飲み方や場所などのソフトな情報について取り上げています。すなわち、家飲み、居酒屋、醸造所・蒸溜所が併設された飲食店、ノンアルコール市場の拡大、となっています。一見して、ビールが無視されているように感じてしまい、ジンよりもビールじゃないの、という気がしますが、後半の第6章とか第7章で触れられています。私はビールか、ワインか、といった感じで、特に50代も後半に入ってからお酒をよく飲むようになった気がします。年齢とともに、ヒゲが濃くなり、サケを飲む量が増えた、といったところです。日本酒については吟醸酒などの最近の高級酒の解説が多く、別の機会に明らかにされているのかもしれませんが、私は清酒の開発についても取り上げてほしかった気がします。どぶろくなどのにごり酒から透明の清酒になったのは、その昔の造り酒屋でお給料の引上げがかなわなかった杜氏さんが、お酒の醸造樽に火鉢の灰を投げ込んだところ、翌朝には透明の酒になっていた、という伝説を聞いたことがあります。ホントか、どうか、は知りません。いずれにせよ、日本のワインや梅酒、あるいは酒にまつわる文化などについてよく取りまとめられている教養書だと思います。オススメです。

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