3か月連続で改善した9月の景気ウォッチャーと黒字が大きく縮小した8月の経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+2.9ポイント上昇の48.4となった一方で、先行き判断DIは▲0.2ポイント低下の49.2を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+589億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。ただし、経常収支については最初の3ラだけを引用しています。
街角景気「持ち直しの動き」 9月、2カ月連続改善
内閣府が11日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、3カ月前と比べた現状判断指数(DI、季節調整値)は48.4と、前月比2.9ポイント上昇した。上昇は2カ月連続。新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し、飲食など外出関連で景況感が改善した。
調査期間は9月25~30日。好不況の分かれ目となる50は下回った。内閣府は現状の景気の基調判断を前月の「持ち直しに足踏みがみられる」から、「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。
家計動向関連は48.8と5.0ポイント上がった。飲食関連は前月の37.1から、19.6ポイントの大幅上昇で56.7となった。企業動向関連は45.5と2.0ポイント下落した。
調査対象者からは「週末は例年の8割ほどまで回復している」(沖縄の居酒屋)、「1組あたりの人数が増えており、団体予約も増えてきている」(北関東のレストラン)といったコメントがあった。
物価高への懸念の声も多く上がった。「継続的な円安に加えて値上げラッシュで、先行き不安でしかない」(東海の製造業)、「物価上昇により明らかに買い上げ点数が落ちている」(九州のスーパー)などの声が聞かれた。
2~3カ月後の先行き判断指数は49.2で0.2ポイント下がった。「10月からさらに値上げが進むため、状況はかなり厳しい」(近畿のスーパー)といった懸念の声が出た。
経常黒字96%減589億円 8月で最小、円安・資源高響く
財務省が11日発表した8月の国際収支統計(速報)によると、貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は589億円の黒字だった。黒字額は前年同月から96.1%減り、8月としては比較可能な1985年以降で最小となった。単月で黒字になるのは2カ月連続となる。円安や資源高でエネルギー関連の輸入額が膨らんだ。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
貿易収支の赤字が過去最大の2兆4906億円となり、全体を押し下げた。輸入額が10兆5502億円と52.9%増えた。単月で10兆円を超えるのは初めてだ。原油と石炭、液化天然ガス(LNG)の値上がりが響いた。8月の原油の輸入価格は1バレルあたり112ドル41セントと前年同月比52.3%上がった。円建ては1キロリットルあたり9万5610円と87.5%の大幅な上昇だった。輸入物価の上昇に円安が拍車をかけている。
よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
現状判断DIは、ここ半年ほどを見れば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大にほぼ従う形で、やや荒っぽい動きを示しています。上のグラフの通りです。すなわち、3月21日でまん延防止等重点措置の行動制限が終了した後、4月50.4、5月54.0、6月52.9と50超の水準が続いたものの、COVID-19の感染拡大により7月は43.8へ大きく悪化した後、8月45.5、9月48.4と、緩やかに改善してきているものの、その前の水準には戻っていません。官庁である内閣府では、基調判断を6月の「緩やかに持ち直している」から、7~8月は「持ち直しに足踏みがみられる」と半ノッチ下方修正していました。しかし、9月もジワリと現状判断DIが改善したことから、「持ち直しの動きがみられる」に、またまた、細かく半ノッチ上方修正しています。ただし、先行き判断DIがやや低下したのは、引用した記事にもあるように、10月から食品を中心に値上げラッシュとなるためで、売上への影響は避けられない、という見方だろうと思います。現状判断DIに戻って、9月の統計を8月からの前月差で少し詳しく見ると、家計動向関連が+5.0ポイントの改善と、企業動向関連の▲2.0ポイントの悪化よりも大きく上昇しています。中でも、飲食関連が+19.6ポイントの上昇となっています。いかにも、COVID-19の感染拡大に対応した動きと私は考えています。何度か、このブログでも明らかにしているように、消費は所得とマインドの影響が大きく出ます。マインドは何といってもCOVID-19次第ということですから、エコノミストの手に負えません。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整をしていない原系列の統計で見て、8月統計ではかろうじて経常黒字を計上していますが、季節調整済みの系列では、先月7月統計に続いて7~8月と2か月連続で経常赤字を記録しています。季節調整済みの系列では、昨年2021年6月から本日公表された8月まで、15か月連続の貿易赤字を記録していますし、季節調整していない原系列の統計でも、昨年2021年7月から14か月連続の貿易赤字です。経常黒字の赤字化ないし黒字幅の縮小は、貿易収支の赤字が大きな要因です。しかし、広く報じられているのでついつい信じ込みやすくなるのですが、今年2022年2月末に始まったロシアのウクライナ侵攻による資源高、あるいはこれに対応した欧米での金融引締めに起因する円安が原因で貿易赤字になっているわけではない点は、この時系列的な流れからも理解しておくべきです。ただ、いつものことながら、国際商品市況で石油をはじめとする資源価格が値上がりしていますので、資源に乏しい日本では輸入額が増加するのは当然であり、消費や生産のために必要な輸入をためらう必要はまったくなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
最後に、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economc Outlook が公表されています。世界経済の成長率は、2022年の+3.2%から2023年は+2.7%に失速すると見込まれています。インフレ抑制のための金融引締めが経済失速の大きな要因と指摘されています。また、機会を見つつ日を改めて取り上げる予定です。上の画像はIMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economc Outlook Growth Projections を引用しています。
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