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2022年10月31日 (月)

4か月ぶりに減産に転じた鉱工業生産指数(IIP)と小売業販売額の増加続く商業販売統計と低迷続く消費者態度指数をどう見るか?

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。いずれも9月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.6%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+4.5%増の12兆5910億円でした。季節調整済み指数では前月から+1.1%増を記録しています。まず、とても長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

7-9月鉱工業生産5.9%上昇、上海封鎖解除で 9月は低下
経済産業省が31日発表した7~9月期の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は98.6と、前期比5.9%上昇した。中国・上海市のロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されて、自動車などが伸びた。新型コロナウイルス禍前の2020年1~3月期(98.0)の水準上回った。米利上げによる外需の失速懸念などで先行きは不透明だ。
9月単月の指数は98.6で、前月から1.6%下がった。低下は4カ月ぶりだった。経産省は基調判断を「生産は緩やかな持ち直しの動き」のまま据え置いた。
9月は全15業種のうち11業種が低下した。自動車工業は12.4%のマイナスだった。6月以降、部品などの供給制約の緩和で回復基調が続いた反動が出た。無機・有機化学工業は6.3%、生産用機械工業は1.8%のマイナスだった。
上昇は4業種だった。最も伸びが大きかったのは無機・有機化学工業・医薬品を除いた化学工業で6.8%のプラスだった。行動制限の緩和で外出する人が増え、化粧品などが増えた。鉄鋼・非鉄金属工業は1.1%、電子部品・デバイス工業は0.4%伸びた。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は10月に0.4%の低下を見込む。生産用機械工業や化学工業などが落ち込む。11月の生産予測指数は全体で0.8%の上昇になる見通しだ。
経産省の担当者は今後の見通しについて「(中国での)ロックダウン解消に伴う部材の供給制約の緩和のプラス効果は続くものの、米国の金利上昇に伴う需要減少も予測される」と説明した。
小売販売額4.5%増 9月、7カ月連続プラス
経済産業省が31日発表した9月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比4.5%増の12兆5910億円だった。7カ月連続で前年同月を上回った。販売額の季節調整済み指数は前月比1.1%の上昇で、3カ月連続のプラス。経産省は基調判断を「緩やかに持ち直している」から「持ち直している」に引き上げた。
業態別でみると、家電大型専門店は前年同月比7.1%増の3801億円だった。増加は3カ月ぶり。ゲーム機の供給が安定してきたことに加え、スマートフォンの新製品も好調だった。パソコン本体の値上がりも影響したようだ。
コンビニエンスストアは 2.3%増の1兆206億円だった。レジャー需要が高まり、おにぎりやファーストフードがけん引した。百貨店は19.1%増の4217億円、スーパーは0.5%増の1兆2088億円、ホームセンターは3.1%減の2571億円だった。
業種別では自動車小売業が10.3%増と13カ月ぶりに上向いた。新型コロナウイルス禍による供給制約が解消されつつあるとみられる。

長くなりましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲1.0%の減産という予想でしたが、実績の▲1.6%減はやや下振れた印象ですが、予想レンジの範囲内という意味では「こんなもん」という受け止めが多いような気がします。ただし、引用した記事にもある通り、9月単月では減産ながら、7~9月期の四半期で見れば大幅な増産でした。もちろん、この増産の主因は中国の上海における6月からのロックダウン解除をはじめとする海外要因が大きいとされています。9月の減産はこの反動という面もあります。さらに、製造工業生産予測指数を見ると、足元の10月▲0.4%減、11月+0.8%増と、やや停滞気味の動きが予想されていて、7~9月の上海ロックダウン明けの反動が長引く予想となっています。経済産業省の解説サイトでは「これまでの上昇の反動」と明記しています。他方で、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。反動として特に大きな影響が9月統計に現れたのは自動車工業であり、前月比で▲12.4%の減産、寄与度も▲1.85%と大きくなっています。先行きについては、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、ウクライナ危機も相まって外需の動向が懸念されます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大も冬を迎えれば第8波を予想する向きもあり、生産の先行きは不透明といわざるを得ません。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。ということで、上海のロックダウン解除などを受けて7~9月期の生産が回復を示している一方で、小売販売額は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による行動制限のない状態が続いており、外出する機会にも恵まれて小売業販売額は堅調に推移しました。上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整していない原系列の前年同月比で見た増加率も、季節調整済み系列の前月比も、どちらも伸びを高めてきています。そして、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、9月までのトレンドで、この3か月後方移動平均の前月比が+1.1%増となり、基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」から半ノッチ引き上げて「持ち直している」と上方修正しています。産業別では、特に、自動車小売業が前年同月比で+10.3%増となっています。7~9月期に供給制約を脱して生産が回復したことが大きな要因であろうと私は受け止めています。ただし、他方で、燃料小売業も+7.1%増を記録していて、コチラは販売好調というよりは価格の上昇に、いくぶんなりとも、起因しているのではないか、と考えざるを得ません。ということで、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、燃料小売業の販売増に見られるように、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。第2に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。ですから、足元での物価上昇の影響、さらに、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。特に、前者のインフレの影響については、9月の消費者物価指数(CPI)のヘッドライン前年同月比上昇率は+3.0%に達しており、名目の小売業販売額の+4.5%増は物価上昇を上回っているとはいえ、単純にCPIでデフレートするのは適当ではありませんが、それでも、実質の小売業販売額はやや過大評価されている可能性は十分あると考えるべきです。

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最後に、本日、内閣府から10月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲0.9ポイント低下し29.9を記録しています。指数を構成する4指標すべてが低下を示しています。すなわち、「暮らし向き」が▲1.7ポイント低下し27.3、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下し34.3、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.7ポイント低下し22.5、「収入の増え方」が▲0.1ポイント低下し35.3となっています。最初の「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」については、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。ない、統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断を「弱含んでいる」から「弱い動きが見られる」と下方修正しています。私は、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と分析していたのですが、さすがに、この9~10月統計から消費者マインドは物価上昇と一定の連動性を高めつつある、と考え始めています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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