国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」をどう読むか?
昨夜のエントリーからの再掲ですが、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economc Outlook が公表されています。上の画像はIMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economc Outlook Growth Projections を引用しています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。その書き出しの1センテンスだけ引用すると以下の通りです。
Inflation and Uncertainty
The world is in a volatile period: economic, geopolitical, and ecological changes all impact the global outlook. Inflation has soared to multidecade highs, prompting rapid monetary policy tightening and squeezing household budgets, just as COVID-19-pandemic-related fiscal support is waning.
IMF Blog のサイトから、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

まず、上のグラフはIMF Blog のサイトから Broad slowdown を引用しています。左のパネルを見れば理解できるように、2000-21年の平均成長率よりもおおむね今年2022年7月の「世界経済見通し改定」では成長率見通しが低くなっていて、この10月の「世界経済見通し」ではさらに下方改定されています。すなわち、世界経済は失速 slowdown しているわけです。ただ、我が日本だけは、一番最初に再掲した世界成長率見通しに総括表を見ても判るように、2020-21-22年の3年で成長率には大きな変化ありません。要するに、日本ではインフレが更新しておらず金融引締めでインフレを抑制する必要がない、という事実がインプリシットに示されています。ただ、右のパネルのファンチャートを見ても判るように、この見通しには大きな不確実性がある点には注意が必要です。
この世界経済の失速の大きな要因はインフレ抑制のための金融引締めです。そして、現在のインフレは今年2022年後半に+10%弱でピークとなり、2023年中には+4%近くまで抑制される、と見込まれています。ただし、ダウンサイドのリスクがいくつか上げられています。以下の通りです。
- The risk of monetary, fiscal, or financial policy miscalibration has risen sharply amid high uncertainty and growing fragilities.
- Global financial conditions could deteriorate, and the dollar strengthen further, should turmoil in financial markets erupt, pushing investors towards safe assets. This would add significantly to inflation pressures and financial fragilities in the rest of the world, especially emerging markets and developing economies.
- Inflation could, yet again, prove more persistent, especially if labor markets remain extremely tight.
- Finally, the war in Ukraine is still raging and further escalation can exacerbate the energy crisis.
最初の点は政策の誤謬の可能性です。不確実性が高いわけですので、政策が間違う可能性も充分あると考えられます。いわゆる景気のオーバーキルも含めて、ということなのですが、もちろん、逆サイドのリスクとして、政策が間違って、あるいは、不十分に終わってインフレが抑制されない、というリスクもあります。2番めから4番目はそういう方向です。すなわち、2番めはドル高の継続により途上国のインフレ圧力が高まる可能性を指摘しています。3番めは労働市場で人手不足が続いてインフレが低下しないリスクです。そして、最後の4番目はウクライナ危機が継続していることから、エネルギー価格がそれほど低下しないリスクです。そして、ここでは触れられていませんが、もちろん、小麦をはじめとして食料価格がそれほど低下しない可能性もあります。
IMF「世界経済見通し」の最後に、リポート p.9 の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections を引用すると上の通りです。テーブルの下の方で見にくいのですが、商品価格のうちの石油価格については、2021年に+65.9%の価格上昇があった後、今年2022年にも+41.4%値上がりするものの、来年2023年には▲12.9%低下する、と見込まれているようです。

最後の最後に、目を国内に転じると、本日、内閣府から8月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲5.8%減の9,098億円となっています。いつのもグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。
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