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2022年10月26日 (水)

+2%台の上昇を続ける9月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.6%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、19カ月連続上昇 9月2.1%
日銀が26日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.3と前年同月比2.1%上昇した。上昇幅は6月(2.1%)以来の高水準で、19カ月連続でプラスだった。上昇が目立ったのは宿泊サービスで、感染症対策と経済活動の両立が進み、観光需要が底堅かった。
広告や情報通信なども押し上げ要因になった。広告は昨年の東京五輪の反動に伴う押し下げの影響がなくなった。インターネット広告への出稿需要が引き続き強かった。情報通信は人手不足を背景に人件費がゆるやかに上がっており、サービス価格に転嫁する傾向が続く。
調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは99品目、下落したのは17品目だった。

コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年3月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+0.7%の上昇となった後、2021年4月には+1.1%に上昇率が高まり、本日公表された今年2022年9月統計まで、19か月連続の前年同期比プラス、18か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、6月統計以降では4か月連続で+2%以上となっています。上昇率がグングン加速するというわけではありませんが、高止まりしている印象です。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因無無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく9月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.67%、石油価格の影響が強い外航貨物輸送や国際航空貨物輸送や内航貨物輸送などの運輸・郵便も+0.67%、インターネット広告やテレビ広告やその他の広告など景気に敏感な広告が+0.14%、リース・レンタルが+0.35%、損害保険や金融手数料などの金融・保険が+0.13%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+4.2%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+4.7%、広告の+2.0%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。

ただし、やや細かな点ですが、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率が6~9月の+2.0%から+2.1%で高止まりしているとはいえ、上昇率に加速が見られない一方で、石油価格の影響の強い国際運輸を除くコアSPPI上昇率は6月+1.3%、7月+1.4%、8月+1.5%から、直近で利用な最新統計である9月統計では+1.6%と、ジワジワと上昇ピッチが上がっています。単なる計測誤差である可能性が十分あるとは思いますが、インフレの主たる要因が、石油をはじめとする資源高から、それらの国内への波及によるホームメード・インフレに移ってきている可能性が無視できない、と私は考えています。もしもそうであるならば、エコノミストとしては、評価の難しいところかもしれません。

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