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2022年10月 3日 (月)

業況判断DIが3期連続で悪化した9月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲3ポイント悪化し+14となりました。悪化は2020年6月調査以来、実に7四半期ぶりです。また、本年度2022年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+0.8%の増加が見込まれています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、3期連続悪化 9月日銀短観
日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の6月調査から1ポイント悪化し、プラス8となった。資源高と円安を背景とした原材料コストの増加が景況感を下押しし、3四半期連続で悪化した。大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響が緩和したことから2四半期連続で改善し、プラス14となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。9月調査の回答期間は8月29日~9月30日。回答基準日の9月12日までに企業の7割台半ばが答えた。
大企業製造業の業況判断DIはプラス8と、QUICKが集計した市場予想の中央値(プラス11)を下回った。中国のロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されたことを受けて自動車産業を中心に景況感が改善した業種もみられたが、幅広い業種が原材料高の影響で悪化した。先行きは円安が業績の追い風になることなどから、プラス9と足元から小幅の改善を見込んでいる。
資源高と円安を背景とした原材料高が続くが、販売価格に価格転嫁する動きも進んでいる。大企業製造業の仕入れ価格判断DI(仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」の割合を引いた値)はプラス65と、6月調査と並んで1980年5月以来の高水準にある。販売価格判断DIも6月から2ポイント上昇してプラス36と、仕入れ価格判断DIと同じ約42年ぶりの高水準だ。
企業の消費者物価見通しも上昇しており、全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.6%上昇と、調査を始めた2014年以降で過去最高だ。3年後見通しは2.1%、5年後見通しは2.0%と、どれも2%台となっている。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス14と市場予想(プラス12)を上回った。7月から8月にかけて新型コロナの感染が拡大したが、厳しい行動制限措置がとられなかったことで改善の動きが続いた。宿泊・飲食サービスや不動産、通信などで改善がみられた。
企業の事業計画の前提となる22年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=125円71銭と、6月調査(118円96銭)から円安方向に修正された。ただ、足元の円相場は1ドル=144円台後半で推移しており、修正された想定レートよりも大幅な円安・ドル高水準にある。

とても長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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先週水曜日の9月28日に日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関してはほぼ横ばい圏内の動きであり、胆管のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが6月調査kラ▲1ポイント悪化、逆に、大企業非製造業は1ポイントの改善となりました。加えて、先行きの景況感も明確に改善する方向にあるとはいい難く、総じて停滞色が強い内容と私は受け止めています。製造業では半導体をはじめとする部品供給制約の緩和が、また、非製造業では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大の落ち着きが、それぞれ好材料となっている一方で、原材料価格や資源価格の高騰が重荷になっている印象です。もちろん、欧米先進国での中央銀行による利上げや金融引締めによる景気後退懸念は引き続き強まっていますし、中国のゼロコロナ政策に基づく上海などにおけるロックダウンの可能性も不透明感を増しています。これらの要因を総合的に勘案すると、先行きも明るいとはとても思えません。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも不足感が広がる傾向にあります。DIの水準として、設備については、明らかに、不足感が広がる段階には達したといえます。また、雇用人員については足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があると私は考えています。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。加えて、COVID-19の感染拡大の動向に起因する不透明感は設備と雇用についても同様です。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の3月時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。その意味で、本日公表の9月調査では2022年度の設備投資計画は+16.4%増と、6月調査から大きく上方修正されました。やや大きすぎるように私には見えるのですが、COVID-19パンデミック以降に大きく抑制されていた設備投資の反動増という面が強い、と私は考えています。ただ、最後の着地点がどうなるか、これまた、COVID-19とウクライナ危機の動向に照らして不透明です。

繰り返しになりますが、今回公表された9月調査の結果は、6月調査から大きな変化はなく、停滞色の強い内容と考えるべきです。ただし、設備投資だけはCOVID-19パンデミック以来、抑制を続けていた反動と人口減少に伴う人手不足から、かなり大きく増加する、という結果になっています。また、図表は引用しませんでしたが、仕入価格判断DIや販売価格判断DIは引き続き歴史的な高水準に達しています。採算の改善に向けて、販売価格の引上げ努力は今後とも続くものと考えるべきです。

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