20か月連続の上昇を続ける10月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.8%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.5%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、20カ月連続上昇 10月1.8%
日銀が25日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.4と、前年同月比1.8%上昇した。20カ月連続のプラスで、指数は2001年3月以来の高水準。上昇幅は前月から0.3ポイント縮小した。運輸・郵便で昨年の燃料費上昇の反動が出た。リース・レンタルや保険は上昇した。
宿泊サービスは10月に始まった政府の観光促進策「全国旅行支援」による割引がマイナスに効いた。出張などビジネス向けの宿泊も対象になったことが影響した。日銀は宿泊サービスの価格について「割引の影響を除けば、支援策を背景にした稼働率の高まりもあり堅調に推移していると考えられる」としている。
調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは93品目、下落したのは18品目だった。
コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年3月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+0.7%の上昇となった後、2021年4月には+1.1%に上昇率が高まり、本日公表された今年2022年9月統計まで、19か月連続の前年同期比プラス、18か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、6月統計以降では4か月連続で+2%以上となっています。上昇率がグングン加速するというわけではありませんが、高止まりしている印象です。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因も無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく10月統計のヘッドライン上昇率+1.8%への寄与度で見ると、土木建築サービスや宿泊サービスや機械修理などの諸サービスが+0.57%、石油価格の影響が強い外航貨物輸送や国際航空貨物輸送や内航貨物輸送などの運輸・郵便が+0.59%、リース・レンタルが+0.39%、テレビ広告やインターネット広告や新聞広告など景気に敏感な広告が+0.14%、損害保険や金融手数料などの金融・保険が+0.13%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+3.0%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。ただし、運輸・郵便の9月の上昇率は+4.2%でしたから、やや上昇率は縮小を示しています。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+5.2%、広告の+2.9%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。
最後に、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)東京都区部11月中旬速報値が公表されています。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率で見て、9月の+2.8%から、10月には+3.4%と+3%台に達した後、11月も+3.6%とさらにインフレが高進しています。ヘッドライン上昇率では+3.8%に達しています。+6.1%の上昇だった外食のヘッドライン上昇率への寄与度が+0.32%、上昇率+6.4%だった調理食品の寄与度も+0.22%など、電気代や都市ガス代などのエネルギーの上昇率+24.4%、寄与度+1.23%とともに、食料の価格上昇がじわじわと広がっている印象です。
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