「OECD経済見通し」やいかに?
日本時間の昨日、経済協力開発機構(OECD)から「OECD経済見通し」OECD Economic Outlook, November 2022 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。副題は Confronting the Crisis とされてます。まあ、そうなんでしょう。
国際機関のリポートに着目するのは、この私のブログのひとつの特徴となっています。いくつか、プレスリリース資料から図表を引用しつつ、見通しを中心に簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフはプレスリリース資料から Global growth is projected to slow を引用しています。世界の経済成長見通しとその地域別寄与度です。見れば明らかな通り、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの後、2021年はリバウンドによる+6%近い高成長を記録し、2022年も+3.1%成長でしたが、来年2023年にはインフレ高進により成長率が+2.2%にさらに鈍化すると見込まれています。そして、さ来年2024年の成長率も+2.7%と小幅にしかリバウンドしないと予想されています。地域別寄与度については、2021年から2022年、さらに、2023年と、アジアの成長寄与度はそれほど変化していないのですが、特に、来年2023年には欧州や北米の世界経済の成長率への寄与がかなり小さくなると見込まれています。これは、高緯度地域における暖房需要も含めたエネルギー支出が大きいという要因に基づいています。
続いて、上のテーブル2枚はプレスリリース資料から G20とNon-G20のそれぞれの Real GDP growth projections と Inflation projections を結合して引用しています。成長率見通しの上方改定と下方改定は前回2022年6月の「経済見通し」からの乖離であり、±0.3%ポイントを超える修正がある国です。世界経済の成長率見通しは2022年の+3.1%から来年2023年には+2.2%に大きく減速すると見込んでいます。もちろん、インフレ抑制のための金融引締めによる成長失速です。ただ、日本では他の欧米先進国と比較してインフレの影響が小さくなっています。まあ、長年続いたデフレのひとつの効果なのかもしれません。期待インフレ率が極めて低い水準でアンカーされている、ということなのだろうと思います。加えて、欧州などと比べれば、それほどの高緯度に位置しているわけではなく、エネルギー支出がそれほどかさまない、という点も成長率がそれほど大きく鈍化しない要因のひとつと考えるべきです。
続いて、上のグラフはプレスリリース資料から The world is coping with a large energy price shock を引用しています。GDPのうちエネルギーの最終消費に費やされる比率を50年ほどのスパンでプロットしています。最近時点では、GDPのうちの18%ほどをエネルギー支出に充てなければならず、逆にいえば、エネルギーへの支出がかさんで、ほかに振り向ける支出が相対的に減少していることになります。特に、このエネルギー支出の増加は高緯度の欧州諸国で厳しい負担増となっています。
最後に、上の画像はプレスリリース資料から Summing up を引用しています。政策指針として、読めばその通りなのですが、(1) 金融政策は、インフレ抑制のために引き続き引締めを継続し、(2) 財政政策は、サステイナビリティに配慮して、優先順位を絞った支援を行い、さらに、(3) 安全保障に配慮したエネルギー政策、(4) 構造政策としては、①国際貿易の開放性の維持、②女性の労働参加の促進、③COVID-19パンデミックからの回復のためのスキルの再構築、などを重視しています。
繰り返しになりますが、期待インフレ率が極めて低い水準でアンカーされ、また、高緯度の欧州諸国と違ってエネルギー支出の増加が大きな負担にもならない、という要因から日本の成長率は、ほかの先進各国ほどは大きく下方修正されていません。しかし、日本の成長率は先進国の中ではまだまだ低くなっています。もう少し長い目で見て、この成長率をどのように引き上げるかが大きな政策目標となります。ヒントは、最後に引用した画像の貿易の開放性の維持、女性の労働参加の促進、雇用者のスキルの再構築、ということで、ほかの先進各国と大きくは違わない、と私は考えています。
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