「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の経済効果やいかに?
先週金曜日の10月28日に、政府は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を決定しています。広く報じられているところながら、おさらいとして、この政府の「総合経済対策」については、以下の4本が柱となっています。
- 物価高騰・賃上げへの取組 (財政支出12.2兆円)
- 円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化 (財政支出4.8兆円)
- 「新しい資本主義」の加速 (財政支出6.7兆円)
- 防災・減災、国土強靱化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全・安心の確保 (財政支出10.6兆円)
なお、財政支出は上の4本の柱とは別に5番目に「今後への備え」という項目に4.7兆円が積まれていて、それで合計39兆円と私が愛用する電卓ははじき出してくれましたが、メディアではこの「総合経済対策」を裏付ける補正予算は、直前担って4兆円が上積みされて総額29.1兆円と報じられています。もちろん、NHKのサイトのように39兆円と私の電卓と同じ結果を示すニュースもいくつかありましたが、「直前に上積みされて29兆円」というニュースが多かった印象を受けるのは私だけでしょうか。いずれにせよ、私にはこのカラクリはよく判りませんが、いわゆる「真水」部分はもっと少ないのかもしれません。そして、この「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策の効果」の政府による試算として、実質GDPの押上げ効果が+4.6%程度、消費者物価のヘッドライン上昇率を▲1.2%程度抑制、とはじき出しています。消費者物価上昇率の抑制は電気・ガス料金とガソリン・灯油を合わせた効果と見込んでいます。
なお、「経済対策」の大きな眼目は当然ながら第1の柱にあるわけでしょうが、ちなみに、第2の柱から、円安はメリット享受の方向で活用するとして、円安そのものは特に政策対応しない、という方針のようです。為替市場介入はあくまでスムージング・オペレーションという考えなのだと思います。また、第3の柱のタイトルを考慮すると、「新しい資本主義」はすでにかなりの程度に実現化されていて、この「総合経済対策」はそれを加速するだけ、という意味合いが込められていることと思いますが、「新しい資本主義」なんて、まったく始まってもいないと感じているのは、私だけなんでしょうか?
他方で、同じ10月28日に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「物価高対策が消費者物価に及ぼす影響」と題するリポートが明らかにされています。タイトル通りの内容で、政府の「総合経済対策」の効果のうち、消費者物価の引下げについて論じています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。そして、このリポートでは、電気代は約20%、都市ガス代は約15%押し下げられ、2023年1月の消費者物価指数(総合)は約▲1%ポイント(うち電気代による寄与▲0.8%ポイント、ガス代による寄与▲0.2%ポイント)下押しされるとの推計結果を示しています。政府の▲1.2%程度の抑制は電気・ガス料金だけでなく、ガソリン・灯油も含んだ効果ですので、このリポートの電気・ガス料金だけの▲1.0%と不整合はありません。
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