今年のベスト経済書のアンケートに回答する
ある経済週刊誌から寄せられていた今年のベスト経済書アンケートですが、結局、マリアナ・マッツカート『ミッション・エコノミー』(NewsPicksパブリッシング)をトップに上げて回答しておきました。政府が後景に退いて企業の自由な活動を前面に押し出すネオリベラルな資本主義ではなく、政府と企業がミッションを軸にコラボ=共同作業を行う経済の重要性を指摘している経済書です。ネオリベな資本主義に対するアンチテーゼとして推しておきました。もちろん、政府と企業とのコラボ=共同作業の有力な候補はSDGsの推進です。17のゴールすべてというわけにいかないとすれば、何といっても重視されるべきは人類の生存をかけた気候変動=地球温暖化の防止のために温室効果ガス排出削減、いっぱい言い換えがありますが、カーボンニュートラルだけ上げておきます。イノベーションの重視はもちろん必要なのですが、ネオリベな経済観に基づく「スタートアップ信仰」、すなわち、スタートアップがイノベーションを担うという考えは、ハッキリいって、もう過去のものであり、現在では打破されるべきと私は考えています。そして、SDGsのもうひとつとしてはジェンダー平等が経済学的に重要だと私は考えています。実証的に示すことは出来ませんし、定量的な把握は不可能ですが、女性管理職比率を無理やりでも30%に引き上げれば、我が国企業の生産性は大きく向上すると思います。
また、昨年のアンケートにこういう項目があったかどうか失念してしまったのですが、日本の進路に重要な指針を与える経済書・経営書というのがあり、大門実紀史『やさしく強い経済』(新日本出版社)を強く推しておきました。冷たい=格差拡大、弱い=成長できない、から、結局、岸田内閣が腰砕けになってしまった分配の重視、ないし、成長から分配への経済の流れを戻す試みがいくつか提案されています。賃上げと社会保障の充実による所得の底上げ、また、環境重視の気候変動抑止や、ジェンダー平等の達成による成長力の強化といった方向が明確に示されています。『ミッション・エコノミー』の繰り返しになりますが、気候変動=地球温暖化の防止を政府と企業とのコラボに基づき、特殊日本の財政状況だけかもしれませんが、財源がないなら国債を発行しまくってでも、カーボンニュートラルのための技術開発を進めることによりイノベーションが大いに促進されます。そして、民間企業に強力なインセンティブを与えてでも、あるいは法的に強制してでも、ジェンダー平等に基づいて女性管理職比率を飛躍的に引き上げることができれば、我が国企業の生産性は大きく向上します。生産性が向上すれば、雇用者の賃金引上げも進むことになります。現在の岸田内閣は、企業の内部留保に着目して、外生的に賃上げを促進しようとしており、それはそれで一案と私は考えていますが、もしも、ホントに賃上げが内閣の重要課題であるなら、企業の内部留保に課税すべきです。そうではなく、まあ、何と申しましょうかで、女性の管理職比率を障害者の雇用比率と同列に論じるのは適当ではないかもしれませんが、何らかの法制度により女性の管理職比率を引き上げる制度的な改革がなされることから始め、それによる生産性引上げを賃上げに結びつける、というのも十分に実現可能性があると思います。
経済書アンケートにかこつけて、私自身の経済観、政策観を展開していしまいましたが、現在のネオリベな経済政策を打破するために、引き続き、いろんな主張を繰り返したいと思います。
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コメント
確かに女性管理職の割合とか女性国会議員の割合を強制的に増やすというのは、意味があるかもしれません。逆差別ですが、男は、それもジジイの男はどうも胡散臭い。現代のレジームチェンジとは、年代ではなく性差かもしれませんね。
投稿: kincyan | 2022年11月20日 (日) 16時43分
>kincyanさん
>
>確かに女性管理職の割合とか女性国会議員の割合を強制的に増やすというのは、意味があるかもしれません。逆差別ですが、男は、それもジジイの男はどうも胡散臭い。現代のレジームチェンジとは、年代ではなく性差かもしれませんね。
まったくその通りです。
私は、無理矢理にでも、逆差別的にでも、女性の管理職を画期的に増やすという方法が、経済成長には大きなプラスだろうと考えています。もちろん、私の説が暴論に聞こえる人もいるのでしょうが、私はいつも逆に問い返しています。女性の能力を活用することが成長につながるというエビデンスはありませんが、まったく同じように、今のままの男性主体の企業運営で成長できるというエビデンスはもっとありません。今までの日本経済の実績がそう物語っています。
なお、まったくついでながら、この私のコメントが999コメント目に当たります。次のコメントが1,000コメントとなります。何ら、ご参考まで。
投稿: ポケモンおとうさん | 2022年11月20日 (日) 22時12分