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2022年12月14日 (水)

大企業製造業の業況判断DIが4四半期連続で悪化した12月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から▲1ポイント悪化し+7、逆に、大企業非製造業は+5ポイント下以前の19となりました。大企業製造業では4四半期連続の悪化です。また、本年度2022年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+15.1%の大幅な増加が見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、4期連続で悪化 12月日銀短観
日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の9月調査から1ポイント悪化し、プラス7となった。海外経済の減速と長引く物価高が景況感を下押しし、4四半期連続で悪化した。大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響緩和から3期連続で改善し、プラス19となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。12月調査の回答期間は11月10日~12月13日。回答基準日の11月28日までに企業の7割台半ばが答えた。
大企業製造業の業況判断DIはプラス7と、QUICKが集計した市場予想の中心値(プラス6)をやや上回った。サプライチェーン(供給網)の改善から自動車を中心に景況感が上向いた業種もみられたが、原材料コスト高などの要因から石油・石炭製品や紙・パルプでは景況感が悪化した。先行きは海外経済の減速懸念も強く、プラス6と足元から小幅の悪化を見込んでいる。
非製造業では新型コロナの感染抑制と経済活動の両立が進んだことで景況感の改善が続く。大企業非製造業の業況判断DIはプラス19と市場予想(プラス17)を上回った。政府の観光促進策「全国旅行支援」や新型コロナの水際対策の緩和も後押しになり、対個人サービスや宿泊・飲食サービスなどが改善した。

いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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昨日、日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関してはほぼ横ばい圏内の動きであり、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、大企業製造業が前回9月調査から▲2ポイント悪化の+8、非製造業は逆に+3ポイント改善の+17、となっています。実績としては、短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが9月調査から▲1ポイント悪化、逆に、大企業非製造業は+5ポイントの改善となりました。足元については小幅に上振れした印象なのですが、先行きの景況感については、製造業・非製造業ともに、また、大企業・中堅企業・中小企業のすべての規模で、悪化の方向が示唆されており、総じて停滞色が強い内容と私は受け止めています。まず、製造業では、欧米先進国での中央銀行による利上げや金融引締めによる景気後退懸念が引き続き強まっていて、同時に、中国のゼロコロナ政策の方向性も定まらず、輸出への影響が懸念されます。続いて、非製造業でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が第8波に入った可能性があり、足元では水際措置の緩和によってインバウンド消費の増加が見込まれていますが、内需の先行きが不透明である点は否定できません。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としては過剰感の払拭と不足感の拡大が見られます。特に、雇用人員については足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。すなわち、不足しているのは低賃金労働者であって、賃金や待遇のいい decent job においてはそれほど人手不足が広がっているわけではないのではないか、と私は想像しています。加えて、我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があります。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態として decent job も含めた意味で、どこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。加えて、海外需要の方向やCOVID-19の感染拡大の動向に起因する不透明感は設備と雇用についても同様です。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の3月時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。その意味で、以前の9月調査では2022年度の設備投資計画は+16.4%増と、6月調査から大きく上方修正されたのですが、本日公表の12月調査では+15.1%増と小幅に下方修正されています。ただこれは、COVID-19パンデミック以降に大きく抑制されていた設備投資の反動増という面が強い、と私は考えています。ただ、最後の着地点がどうなるか、これまた、先進国の景気動向とCOVID-19の感染拡大を考え合わせると不透明です。

最後に、図表は示しませんが、今回公表された12月調査の結果のうち、売上・収益計画について注目すると、売上は2022年度通期でも上期でも下期でもほぼほぼ増収が見込まれています。しかし、経常利益は2022年通期では増益計画となっている一方で、下期には減益ないし下方修正が幅広く見込まれています。特に製造業ではそうなっています。これが、先行きの業況判断に影響を及ぼしている可能性が強いと私は考えています。実際に経常利益が減益となった場合には、ひょっとして、設備投資計画にも悪影響が及ぶ可能性もあります。ヘッドラインの業況判断DIの動向とともに気がかりです。

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