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2022年12月 6日 (火)

7-9月期GDP統計速報2次QE予想やいかに?

先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明後日の12月8日に7~9月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。1次QEでは予想に反して一時的なサービス輸入の増加から、4四半期ぶりのマイナス成長を記録しましたが、2次QEではマイナス成長という基調は変わりないものの、少し上方改定されるとの見方が多くなっている印象です。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。しかしながら、エコノミスト界の恒例で、2次QEは法人企業統計のオマケ的な扱いも少なくありません。正面切って取り上げているのは、みずほリサーチ&テクノロジーズと明治安田総研くらいなものであり、私の方でも意識的に長々と引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.3%
(▲1.2%)
n.a.
日本総研▲0.3%
(▲1.1%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が上方改定される見込み。その結果、成長率は前期比年率▲1.1%(前期比▲0.3%)と、1次QE(前期比年率▲1.2%、前期比▲0.3%)から小幅に上方改定される見込み。
大和総研▲0.3%
(▲1.1%)
2次速報では、一時的とみられるサービス輸入の大幅な増加がGDPを下押ししたものの、個人消費や設備投資、輸出は底堅く推移したことが改めて示されるだろう。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.3%
(▲1.2%)
10~12月期以降については、後述の物価高が財を中心に個人消費の下押し要因になる一方、感染第7波の収束に加えて政府による「全国旅行支援」が実施されることで対人サービスを中心に個人消費の増加が見込まれる。JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」で対人サービス消費(新系列基準、みずほリサーチ&テクノロジーズによる季節調整値)の推移をみると、10~11月前半平均の対人サービス消費は7~9月期対比+7.2%と大きく増加している(特に旅行は同+52.0%、宿泊は同+11.5%と大幅に増加している)。娯楽はコロナ禍前水準を大幅超過している一方で旅行や宿泊はまだ回復途上だが、水準は2020年のGoToキャンペーン実施時を上回る(10~11月前半平均の対人サービス消費全体でみて2019年平均対比▲5.8%と、コロナ前の水準近くまで回復してきている)。みずほリサーチ&テクノロジーズは、全国旅行支援について1~3月期までの延長を想定した上で、経済効果は波及効果を含めて約1.1兆円(2022年度GDPを+0.2%押し上げ)と試算している。
ニッセイ基礎研▲0.1%
(▲0.4%)
12/8公表予定の22年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.1%(前期比年率▲0.4%)となり、1次速報の前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)から上方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.2%
(▲0.8%)
2022年7-9月期実質GDP(2次速報)は前期比年率▲0.8%(前期比▲0.2%)と、1次速報の前期比年率▲1.2%(前期比▲0.3%)から小幅上方修正されると予想する。
伊藤忠総研▲0.4%
(▲1.7%)
7~9月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比▲0.4%(年率▲1.7%)と1次速報から下方修正される見通し。需要は拡大も供給面でマイナス成長という姿は変わらず。設備投資が下方修正、在庫投資と公共投資が上方修正される見込み。企業業績は製造業で改善、労働分配率は低下、賃上げ・雇用拡大余地は十分。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.3%
(▲1.2%)
2022年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.3%(前期比年率換算-1.2%)と1次速報値から修正はない見込みである。サービス輸入の大幅増加によって外需の前期比寄与度のマイナス幅が急拡大したため、1次速報値では4四半期ぶりのマイナス成長に陥ったが、一時的な要因によるものであり、景気の緩やかな回復基調は維持されている。
三菱総研▲0.3%
(▲1.3%)
2022年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.3%(年率▲1.3%)と、1次速報値(同▲0.3%(年率▲1.2%))からほぼ変更なしを予測する。
明治安田総研▲0.3%
(▲1.0%)
10-12月期に関しては、「全国旅行支援」をはじめとする政府の観光促進事業などを追い風に、個人消費が持ち直すとみる。また、底堅いデジタル・脱炭素関連投資需要などを下支えに設備投資も堅調な推移が見込まれ、実質GDP成長率はプラスに転じると予想する。
もっとも、来年前半は、物価高が個人消費の足枷になると見込まれる。エネルギーや穀物の先物価格は、一時に比べれば落ち着きを取り戻しているものの、原燃料コストの上昇が時間差を伴いながら各種小売価格に転嫁されることを考えれば、食品メーカーなどを中心にさらなる値上げが予想される。
海外経済の不透明感の高まりも日本の景気下振れリスクになる。FRB(米連邦準備制度理事会)による累積的な利上げの効果が波及することなどから、春先にも米国景気は後退局面入りする可能性が高い。中国では、1日当たりの新規感染者数が過去最多を更新しており、厳しい行動制限が経済の重石になっている。共同富裕の理念を掲げるなかで、不動産市況の早期回復も考えにくく、景気は停滞気味の推移が続くとみられ、日本の輸出は腰折れを余儀なくされる可能性が高い。設備投資も短期的には輸出に連動する性格が強いことから、減速が見込まれる。水際対策の緩和に伴うインバウンド需要の回復や、政府の経済対策は下支えになるものの、米中経済の低迷が続くなかでは、日本の景気が回復基調を続けるのは難しいと予想する。

見れば明らかな通り、7~9月期のGDP統計速報2次QEは、1次QEと大きな変更なく、マイナス成長を続けるものの、サービス輸入の一時的な増加という特殊要因によるものであり、日本経済が緩やかに回復しているという基調に変化はない、と考えられているようです。そして、足元の10~12月期は、おそらく、プラス成長に回帰するものと見込まれています。みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートではJCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」に言及されていますが、私の方でも東京財団政策研の12月2日付けの「GDPナウキャスティング」を確認すると、10~12月期の成長率は季節調整済み系列の前期比で0.24%、年率0.97%との結果が示されています。しかし、その先の来年以降ということになると、決して楽観はできないと私は受け止めています。おそらく、日本経済は欧米に比較してかなり出遅れていて、その分、キャッチアップの余地は残されている一方で、その欧米先進国はインフレ抑制のために強烈な金融引締を実施していて、特に、米国はこのまま景気後退に入る可能性が十分ある、と私は見ています。加えて、国内で反対デモまで起こしている中国のゼロコロナ政策の行方も不透明です。とすれば、内需だけで成長を牽引するにはまだ力不足、外需は7~9月期のような特殊要因なくても期待ができない、しかも、政府はそうたいして景気に寄与しない軍事費/防衛費の増加のために増税を実施して国民負担増を求める、ということになれば、先行き日本経済の見通しは決して明るくない、と考えざるを得ません。
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。

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