+4%近くに達した11月の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?
本日、総務省統計局から11月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+3.7%を記録しています。報道によれば、第2次石油危機の影響がまだ残っていた1981年12月の+4.0%以来、40年11か月ぶりの高い上昇率だそうです。ヘッドライン上昇率も+3.8%に達している一方で、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+2.8%にとどまっています。というか、エネルギーと生鮮食品を除いてもインフレ目標の+2%を超えて、+2.8%に達しています、というべきかもしれません。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。
日本の消費者物価、11月3.7%上昇 40年11カ月ぶり水準
総務省が23日発表した11月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が103.8となり、前年同月比で3.7%上昇した。第2次石油危機の影響で物価高が続いていた1981年12月の4.0%以来、40年11カ月ぶりの伸び率となった。円安や資源高の影響で、食料品やエネルギーといった生活に欠かせない品目が値上がりしている。
15カ月連続で上昇した。政府・日銀が定める2%の物価目標を上回る物価高が続く。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(3.7%)と同じだった。消費税の導入時や増税時も上回っている。
調査対象の522品目のうち、前年同月より上がったのは412、変化なしは42、下がったのは68だった。上昇した品目は10月の406から増加した。
生鮮食品を含む総合指数は3.8%上がった。91年1月(4.0%)以来、31年10カ月ぶりの上昇率だった。生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は2.8%上がり、消費増税の影響を除くと92年4月(2.8%)以来、30年7カ月ぶりの水準となった。
品目別に上昇率を見ると、生鮮を除く食料は6.8%、食料全体は6.9%だった。食品メーカーが相次ぎ値上げを表明した食用油は35.0%、牛乳は9.5%、弁当や冷凍品といった調理食品は6.8%伸びた。外食も5.3%と高い伸び率だった。
エネルギー関連は13.3%だった。10月の15.2%を下回ったものの、14カ月連続で2桁の伸びとなった。都市ガス代は28.9%、電気代は20.1%上がった。ガソリンは価格抑制の補助金効果もあって1.0%のマイナスと1年9カ月ぶりに下落した。
家庭用耐久財は10.7%上がった。原材料や輸送価格の高騰でルームエアコン(12.7%)などが値上がりしている。
日本経済研究センターが15日にまとめた民間エコノミスト36人の予測平均は、生鮮食品を除く消費者物価上昇率が2022年10~12月期に前年同期比で3.61%となっている。23年1~3月期は2.57%になり、1%台になるのは同7~9月期(1.63%)と予想する。
主要国の生鮮食品を含む総合指数は、11月の前年同月比の伸び率で日本より高い。米国は7.1%、ユーロ圏は10.1%、英国は10.7%となっている。
やたらと長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.7%の予想でしたので、ジャストミートしました。もちろん、物価上昇の大きな要因は、基本的に、ロシアによるウクライナ侵攻などによる資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきですが、もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀による緩和的な金融政策による需要面からのディマンドプルによる物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、11月統計におけるエネルギーの前年同月比上昇率は10月統計の+15.2%から少しだけ縮小して、それでも、2ケタの+13.3%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.06%あります。このエネルギーの寄与度+1.06%のうち、電気代が+0.72%と大半を占め、次いで、都市ガス代の+0.25%などとなっています。ただし、エネルギー価格の上昇率は3月には20.8%であったものが、ジワジワと上昇率が縮小し続けていて、10月統計では+15.2%、そして、直近で利用可能な11月統計では+13.3%と、高止まりしつつも、ビミョーに落ち着いてきているようにも見えます。他方で、生鮮食品を除く食料の上昇率は拡大を続けていて、4月統計+2.6%から一貫して上昇幅を拡大し、9月統計+4.6%、10月統計+5.9%に続いて、11月統計では+6.8%の上昇を示しており、+1.54%の寄与となっています。統計からしても、値上がりの主役はエネルギーから食料に移ったと考えるべきです。11月統計の生鮮食品を除く食料の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を細かく品目別に見ると、引用した記事にもある通り、食用油が+35.0%の上昇率で+0.05%の寄与度、牛乳が+9.5%の上昇率で+0.04%の寄与度、+11.6%の上昇を示したからあげをはじめとする調理食品が+6.8%で+0.24%の寄与度、+17.9%の上昇を示したハンバーガーをはじめとする外食が+5.3%の上昇率で+0.25%の寄与度、などとなっています。私も週に2~3回くらいは近くのスーパーで身近な商品の価格を見て回りますが、ある程度は生活実感にも合っているのではないかと思います。繰り返しになりますが、ヘッドライン上昇率とコアCPI上昇率は11月統計で、どちらも+3%台後半ですから、エネルギーの寄与度が+1.06%、生鮮食品を除く食料による寄与度が+1.54%となっています。
ただし、現在のインフレ目標+2%を超える物価上昇率は長続きしません。すなわち、おそらく、12月統計か、あるいは、来年2023年1月統計で+4%をつける可能性は十分あるとしても、その後、急速にインフレ率は縮小します。引用した記事にもある通り、日本経済研究センター(JCER)によるEPSフォーキャストでは来年2023年1~3月期は+2.57%になり、2023年7~9月期には+1.63%まで上昇幅を縮小させると予想されています。政府による物価高対策の影響が大きいといえます。例えば、ニッセイ基礎研究所のリポートによれば、「物価高対策に伴うエネルギー価格の抑制によるコアCPI上昇率の押し下げ効果は足もとの▲0.6%程度から、23年2月以降は▲1.5%程度まで拡大する」と指摘しています。私が見た限りでも、大和総研のリポートや第一生命経済研究所のリポートでも同じ論調です。従って、繰り返しになりますが、来年2023年4~6月期から7~7月期あたりには、インフレ目標の+2%を下回る可能性が十分にあると考えるべきです。政府が中央銀行の物価目標の達成を邪魔しているわけで、決して、経済政策のあるべき姿とは私には考えられませんが、国民の意見がそうなっているのかもしれません。
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