3か月連続の減産で基調判断が下方修正された11月の鉱工業生産指数(IIP)をどう見るか?
本日、経済産業省から11月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。ヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産でした。9~10月統計に続いて、3か月連続の減産です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
11月の鉱工業生産0.1%低下 基調判断「弱含み」に下げ
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は95.2となり、前月から0.1%下がった。低下は3カ月連続。国内外での需要減少を受け、半導体製造装置やスマートフォン向けのディスプレー製造装置などが落ち込んだ。
生産の基調判断は「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」から「生産は弱含み」に引き下げた。下方修正は2カ月連続となる。
生産は全15業種のうち、8業種で低下した。半導体製造装置やフラットパネル・ディスプレー製造装置といった生産用機械工業は前月比5.7%のマイナスだった。国内外での半導体やスマホの需要減を映し出した。
汎用・業務用機械工業は7.9%減だった。コンベヤや運搬用クレーンで10月に大型案件があった反動減となった。合成ゴムやポリエチレンなどの無機・有機化学工業は3.9%のマイナスだった。
残る7業種は上昇した。無機・有機化学工業・医薬品を除いた化学工業は5.7%のプラスだった。新型コロナウイルスの感染拡大の谷間で外出する人が増え、乳液や化粧水類が増えた。プラスチック製品工業は2.5%、電気・情報通信機械工業は1.1%それぞれ上昇した。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は12月に前月比で2.8%の上昇を見込む。ただ、企業の予測値は上振れしやすく、例年の傾向をふまえた経産省の補正値は1.3%のマイナスとなった。23年1月の予測指数は0.6%の低下となっている。
経産省の担当者は今後の見通しについて「変異タイプのコロナ感染拡大や部材供給不足、物価上昇の影響を注視する必要がある」と説明した。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は▲0.3%の減産という予想でしたので、実績の▲0.1%減にはサプライズはありませんでした。ただし、引用した記事にもある通り、3か月連続の減産ですので、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断を「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」から「生産は弱含んでいる」と、明確に1ノッチ下方修正しています。2月連続の下方修正です。中国の上海における6月からのロックダウン解除をはじめとする海外要因から、7~9月期は季節調整済みの系列の前期比で見て+5.8%の増産でしたので、9~11月の減産は反動の面もあるともいえます。もっとも、欧米先進国ではインフレ対応のために急激な金融引締を進めており、海外景気は大きく減速していますので、これも含めて内外の需要要因の方が大きいと私は考えています。例えば、経済産業省の解説サイトでは「11月は、国内・海外需要の減少等を受けて、汎用・業務用機械工業や生産用機械工業などが低下したことから、3か月連続で低下」と減産の要因を解説しています。他方で、製造工業生産予測指数を見ると、足元の12月は+2.8%の増産、来年2023年1月は▲0.6%の減産と、それぞれ予想されています。もっとも、上方バイアスを除去すると、12月の予想は前月比▲1.3%減となります。
産業別に11月統計を少し詳しく見ると、減産寄与が大きいのは汎用・業務用機械工業の前月比▲7.9%減、寄与度▲0.68%、生産用機械工業の前月比▲5.7%減、寄与度▲0.56%、無機・有機化学工業の前月比▲3.9%減、寄与度▲0.17%、などとなっています。逆に、生産増の寄与がもっとも大きかった産業は化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)の前月比+5.7%増、寄与度+0.23%、プラスチック製品工業+2.5%増、寄与度+0.11%、電気・情報通信機械工業の前月比+1.1%増、寄与度+0.10%となります。
鉱工業生産の先行きに関しては、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、欧米先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、景気後退まで突き進む可能性が十分あると私は見ています。すなわち、外需の動向が懸念されます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大も冬を迎えて第8波に入ったとする向きもあり、生産の先行きは不透明といわざるを得ません。
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