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2022年12月 1日 (木)

法人企業統計に見る企業活動は活発ながら消費者態度指数に見る消費者マインドは低下を続ける

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は前年同期比+8.3%増の350兆3671億円、経常利益も+18.3%増の19兆8098億円、売上高・経常利益とも製造業では2ケタ増、非製造業でも+5%超の伸びとなっています。そして、設備投資は+9.8%増の12兆17億円を記録しています。季節調整済みの系列で見ても、売上高、経常利益、設備投資とも軒並み前期比プラスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる設備投資については前期比+8.0%増となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、経常益18.3%増 7-9月で過去最高
財務省が1日発表した7~9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比18.3%増の19兆8098億円だった。前年を7期連続で上回り、7~9月期としては利益額が過去最高を更新した。資源高などの影響が事業の重荷になっているが、部品など供給制約の緩和や新型コロナウイルス禍からの社会活動の回復が企業業績の改善を後押しした。
財務省は「緩やかに持ち直している景気の状況を反映した」と説明した。経常利益の金額はすべての四半期で過去15番目だった。
業種別の経常利益を見ると、製造業は35.4%増で全体の伸びをけん引した。中国・上海市の都市封鎖(ロックダウン)が6月に解除されたこともあって部品不足の状況が緩和され、自動車関連などで増産が進み、輸送用機械部門の経常利益は2.7倍になった。電気機械も73.4%増えた。円安で輸出関連の押し上げ効果もあった。
非製造業は前年同期比5.6%増だった。サービス業で59.8%増、運輸・郵便業では8.4倍に伸びた。コロナ禍からの社会活動の正常化で、前年に比べて人流が極端に増えたことが影響したもようだ。
設備投資は9.8%伸びた。企業は部品不足などで先送りにしていた投資を再開しており、2桁増に迫った。2018年4~6月期の12.8%以来、4年余りぶりの高い増加率だった。
製造業は8.2%増だった。情報通信機械が27.2%、化学が16.3%投資額を増やした。自動車関連などで半導体の需要が増え、半導体製造装置などへの投資額が増えた。非製造業は10.7%増。都市開発などにかかる設備投資をした不動産業で77.1%増加した。
売上高は8.3%増の350兆3671億円だった。業種別では製造業が12.1%増。石油・石炭は原油価格の高騰などで65.8%増えた。非製造業は6.7%増で、電気料金の高騰を背景に電気業の伸びが目立った。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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ということで、法人企業統計の結果について、今年2022年に入って1~3月期から物価上昇と円安が大きく進んだにもかかわらず、引用した記事にもあるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための行動制限がなく、半導体などの供給制約も緩和され、円安は製造業などにはむしろ追い風で影響したことなどから、企業業績が好調であることを示していると私は受け止めています。前年同期比で見る限り、売上高については2021年4~6月期から5期連続の増収であり、営業利益・経常利益とも2021年1~3月期から6期連続の増益となっています。ただし、季節調整済みの系列で見ると、やや企業活動の景色が違って見えます。すなわち、売上高は製造業が円安の影響もあって前期比+3.0%増の増収を記録したのに対して、非製造業では▲0.1%とわずかながら減収となりました。同様に、経常利益についても、製造業が前期比+6.9%と好調を維持しているのに対して、非製造業では▲13.3%と大きく落ち込みました。このあたりの産業別の跛行性については、おそらく、円安に起因すると私は考えていますが、キチンと把握しておく必要があります。同時に、上のグラフを見ても理解できるように、売上高はリーマン・ショック直前のサブプライム・バブル期のピークには達していませんが、経常利益はとっくに過去最高益を突破しています。企業サイドからすればカッコ付きで「体質強化」をいえるのかもしれませんが、従業員や消費者のサイドから考えれば、企業利益ばかりが溜め込まれるのがどこまで現在の日本経済に好ましいのかどうか、もちろん、日本経済がかつての高度成長期のように拡大基調であればまだしも、トリックルダウンはほぼほぼ完全に否定され、ほとんどGDPも成長せず賃金も上がらない中で、企業部門ばかりが利益を積み上げるのがいいのかどうか、疑問とする意見もありそうな気がします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金、最後の4枚目は件費と経常利益をそれぞれプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。人件費と経常利益も額そのものです。利益剰余金を除いて、原系列の統計と後方4四半期移動平均をともにプロットしています。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金は伸びを高めています。また、4枚めのパネルにあるように、人件費が長らく停滞する中で、経常利益は過去最高水準をすでに超えています。ですから、この利益剰余金にも本格的に課税する必要性が高まっていると考えるべきです。先月11月22日に「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」報告書が明らかにされています。軍事費=防衛費をGDP比2%まで引き上げるよう提言するとともに、その財源については「防衛力の抜本的強化のための財源は、今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである。」(p.18)としつつも、同時に、「成長と分配の好循環の実現に向け、多くの企業が国内投資や賃上げに取り組んでいるなか、こうした企業の努力に水を差すことのないよう、議論を深めていくべきである。」と、ここまで賃金上昇が見られない雇用者ではなく、大幅に利益を溜め込んでいる企業には防衛費負担を配慮するムチャな内容となっています。よくよく考えるべきポイントではないでしょうか?

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法人企業統計から目を転じると、本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲1.3ポイント低下し28.6を記録しています。指数を構成する4指標すべてが低下を示しています。すなわち、「雇用環境」が▲1.9ポイント低下し32.4、「収入の増え方」が▲1.1ポイント低下し34.2、「耐久消費財の買い時判断」も▲1.1ポイント低下し21.4、「暮らし向き」が▲0.8ポイント低下し26.5となっています。「暮らし向き」と「耐久消費財の買い時判断」については、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断について、先月10月統計で「弱含んでいる」から「弱い動きが見られる」と下方修正した後、今月11月統計でも「弱まっている」と連続で下方修正しています。従来、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と私は分析していたのですが、さすがに、この9~11月統計から消費者マインドは物価上昇と一定の連動性を高めつつある、と考え始めています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

なお、本日の法人企業統計を受けて、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に上方修正されるであろうと考えていますが、マイナス成長であることに変わりなく、大きな修正ではなかろうと予想しています。この2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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